「うん?、剣の師弟だが

「うん?、剣の師弟だが・・・まあ、事の始まりから言えば、あれは何年前だったかなあ。・・・エレナ姫が12歳の時だから、今から6年前か。」
「・・・」

「・・・」
「どういうイキサツか分からないが、12歳の王女エレナ姫が突然剣を学びたいと言いだしてな。周りはあまり賛成しなかったらしいんだが、放っておいても独りで、試管嬰兒價錢り回して、自己流の修行をする始末だったらしい。それなら、ちゃんとした師に付けて学ばせた方がいいだろうと、当時、タゴロローム守備軍の大隊長をしていたバンケルクが剣の腕と人柄を買われて、剣の師の役目を仰せつかったわけだ。」「ふーん、剣の修行ねえ。王女は中々の腕前だとは察していたが。余程熱心に稽古したんだろうなあ。」「さあその事よ。蝶よ花よと育てられた姫様が、その12歳から14歳までの間は、それこそ気が狂ったように毎日毎日剣の修行三昧、寝る間も惜しんで剣の修行、来る日も来る日も剣、剣、剣、まるで雉子の鳴き声のように、剣術一筋の日々を送った・・・らしい。」「14歳まで?」「とうとう2年後にはバンケルクがもう教える事はないとエレナ姫に言ったそうだ。その後、バンケルクは大抜擢を受けてタゴロロームの司令官に任じられたという事だ。」 ハンベエは2年と聞いて若干劣等感のようなものを感じた。ハンベエが師のフデンから剣の教えを受けた期間は10歳から20歳までの10年間、勿論、最初から厳しい鍛練が施されたわけではなく、ままごと遊びのようなところから順々に厳しさを増して行って免許皆伝に至ったわけであり、教育方針も違ったわけではあるが。「2年かい、今感じている王女の腕前を考えると2年やそこらの修行で身につくものとも思えないが。」ハンベエは首を捻りながら言った。無論の事、立ち合えば王女エレナ等打ち負かす自信はあるのだが、ハンベエ、我知らず競争心が煽られているようだ。「さあ余程の天廩があったんじゃないかな?、それにバンケルクと離れた後も人知れず剣の修行を欠かしてないらしいからな。・・・それよりも、バンケルクの話だ。ハンベエの話もそうだが、こっちへ調査に来てから、奴のいい話を聞かない。バンケルクめ、売春宿の同業組合を組織して、利益を吸い上げてやがる。推定だが、金貨にして2万枚近くにのぼる金をどっかに貯め込んだ計算になるぜ。」「金貨2万枚・・・」「何を考えてそれほどの金を貯め込んでやがるのか。・・・6年前は清廉で誠実な人柄と見込まれたはずなのになあ・・・。」「その金はどこにあるんだ?」ハンベエは明らかに関心を持ったようだ。「そこまではまだ分かっていない。突き止めたいところだが、一度ゲッソリナに戻って調査の中間報告をしなければならない。ん?・・・ハンベエが金の話に興味を持つとは意外だな。「別に意外でもなんでもないさ。話したように、俺はコーデリアス閣下の遺言により第5連隊の指揮を引き受けた。連隊を再建するには、何よりまず金だ。」「まさか?」「そのまさかだよ。この際、そういう金なら、気の咎める事もないしな。」「ふーん、案外バンケルクも何かの軍資金のつもりかも知れないな。内乱を予想しているらしいからな。」「なるほど、奴には野心があるわけだ。」「そうかも知れん。ところで、コーデリアスの遺言状を預かっている側近はどうしたんだ。」「奴なら、2日前にゲッソリナに向かったよ。何故そんな事を聞く?」「いや、無事にゲッソリナに着くといいがな。「・・・。」ボーンの言葉にハンベエは急に黙り込み、腕を組んだ。「ボーン、ゲッソリナにはいつ発つんだ?」しばらくして、ハンベエがボーンに尋ねた。「明日にでも出発するつもりだが?」「ロキが同行しても問題ないだろう?」「・・・うーん・・・まあ、いいだろう。」ボーンの返事を聞くと、ハンベエはロキに向き直り、懐からコーデリアスのもう一通の遺言状を取り出して言った。「ロキ、頼みがある。これは、話に出て来たコーデリアス閣下のもう一通の遺言状だ。これを・・・」

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