入ってきた男は二人

入ってきた男は二人。血の匂いが、先に感じた一派の死を確信させた。ちぃっ起きてやがったか!忌ま忌ましげに舌打ちをしたのは土方だ。芹沢の部屋に入ってきたのは土方と沖田である。まるで待っていたかのような芹沢の態度に、子宮內膜異位症 經痛しだけ悲しそうな表情をしてみせた。「土方と…沖田か。場所を変えぬか?…お梅を巻き込む必要はなかろう」芹沢の言葉に、一瞬土方に緊張が走った。だが、それは本当に一瞬で、次には笑っていた。「露見(バレ)てんならこいつぁいらねぇな。芹沢、お前を殺しに来たぜ」
そう言って頭から顔隠しに使っていた頭巾を放り投げた。芹沢の後に続いて、隣の部屋に移動する二人。部屋に入るやいなや土方は先手必勝とばかりに刀を抜き、斬りかかる。芹沢は懐から鉄扇を出して受け止め、力の方向に受け流した。続いて沖田が襲い掛かる。得意の速さで右、正面、左、と素振りのように繰り出される刀。芹沢の手から鉄扇が叩き落とされた。「芹沢さんよぉ…大人しく死んでくれ」刀を突き付け、土方が言う。形ばかりの抵抗であった。元よりここで生き長らえるつめりなどないのだから。芹沢は笑って刃を受け入れようとした。………その時、ガキィィインッという音が部屋に響いた。音とともにうっすらと見えた光景に、土方だけでなく駆け付けた山南、原田も目を見開く。そこにいたのは今、今だけは絶対ここにいてはいない人物……………………近藤だった。その場にいる者、全員が驚愕した。
いるはずがない。いや、いてはいけないのだ。「な…何してやがる!あんたは来ちゃ駄目だって言ったじゃねぇか!!」刀を納めないまま、土方は近藤を怒鳴りつけた。近藤は「すまん…」と呟き、芹沢に向き直る。「芹沢さん…貴方は「何しに来たのだ、近藤!」近藤を遮り、芹沢は近藤を殴り飛ばす。その場にいた者全員が驚き、倒れ込む近藤を沖田が慌てて支えた。「お主が来ては意味がないではないか!そんな事もわからんのか!?」「芹沢さん…」「儂は死なねばならんのだ!土方!!早く斬れ!!ここで、お前たちが儂を殺すのだ!!」「芹沢…お前ぇ…」勇んでいた土方でさえ、芹沢の剣幕にたじろいだ。芹沢はわかった上で、迎え入れたのだ。自害するのではなく、斬られる為に生きて待っていたのだ。「土方。もっと先へ、もっと高見へこの組を連れていけ。近藤、その頭にいられるのはお前しかおらんのだ!!」近藤はぼろぼろと涙を流しながら芹沢の言葉を正座して聞いた。芹沢は満足げに笑う。「お主は変わらず泣き虫じゃの。…土方、山南、二人で支えてやれ」「………はい」「芹沢さん…俺ぁ…」芹沢の言葉に、土方が突き付けた刀が下りる。それを見て、芹沢は振り返り、沖田を見た。「沖田!」目が合えば、芹沢の意志が伝わってくる。沖田は一度強く目を閉じた後、ゆっくりと立ち上がった。スラリと刀を抜き、芹沢に向かって足を踏み出した。ザンッ一瞬の静寂の後、勢いよく飛び出した血を浴びる沖田。その目から涙が、血と共に頬を伝い、ポタリと畳にシミを作る。

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