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Avid MBOX Studio

通算14台目(自作は除く)のオーディオインターフェイスがやってきました。もうこんなにオーディオインターフェイスばかり買って何やってんでしょうね。それでもオーディオインターフェイスが好きなんです。

さてこちらはAvidから昨年末に発売されたオーディオインターフェイスです。特徴としてはデカい、Pro ToolsのStudio版のサブスク1年分がついてくる、です。

ちょっとしたノートPC+αくらいの設置面積が必要になって高さも結構あります。自分の机の上はそんなに置き場所に恵まれているわけではないのですがえいやっと買ってしまいました。というのもこの3週間くらいPro Toolsを試用してて、もうちょっと使わなきゃなっていうところで値段を見るとStudio版で4万円以上するっていうのを目にして、いやこれはって思っていたんですね。

で、何かお得な購入方法はないものかと思っていろいろ探していました。もう永続版ライセンスは売ってないし、やっぱりサブスク新規加入版なのかって思っていたところに目についたのがこのAvidから発売されているMBOX Studioだったんです。これ買うとPro Tools Studioのサブスク1年分がついてきます。本来であればこちらの機材も春先の値上げを受けて高くなっているはずがまだ在庫がダブついているのか旧来の価格で売っていたりします。

ということでおよそ40%くらいがサブスク金額なのだから実質無料では???って飛びついちゃいました。もちろんAvidはこないだ買収されたばかりでこの先どうなるか不安なところではありますけど。

で、この製品、よくできてます。差別化も十分なされているし。

機能的な特徴

ギタリスト向けの機能が満載です。

  • ギターチューナーついてる(トークバック用マイクでアコギもオッケー)

  • ギターのAmp Outついてる

  • FXのSend、Returnがついていてペダルエフェクタもすぐに使える

  • フットスイッチも2系統使える(EXPペダルの入力も可能)

  • インピーダンスを細かく切り替えられる(しかもペダル繋いでる時用と直結用で違ったりしてる!)

と、ギター弾く人にとっては嬉しい機能ばかり(もちろんベース弾く人も)
ちなみに設定可能なインピーダンスのリストはこちら。

まさかここまで細かく設定できるとは。

フィジカルな特徴

アナログ出力はメインのスピーカーともう一組のスピーカー用出力。あとヘッドホン出力が2系統の8chぶん。
それにFX Sendが2ch、ギターアンプの出力が1ch。
デジタルの入出力はADATとS/PDIF、それにBlueToothの入出力。

アナログ入力に関してはマイクプリが4ch。そのうち1chと2chはInst切り替え可能でギターやベースを接続できます。
ほかにLineの入力が2chぶんとFXのReturnが2chついています。

FXのSendとReturnはそれぞれLine Out、Line Inとして利用可能です。

リアンプの際、Amp Outからアンプに繋げてキャビにマイクを向けてって言うのがほんと苦もなくできてしまうのでよくリアンプする人にとってはかなり使い勝手の良いインターフェイスに仕上がっていると思います。

たくさん入出力があるなーと思っていてもすぐに埋まっちゃうのでよくできているなと感心しますね。多チャンネルオーディオインターフェイスを買っても何も差さないジャックがそのまま残っていたりしますからきっちり使い切れるのは嬉しいです。

操作系統としては入力と出力の切り替えおよび音量をつかさどるビッグノブが2つ。あと細々とした機能のアクセスに使えるボタン類と各チャンネルの音量を示すLEDメーター。そして機能をカスタマイズできるパッドが4つついています。

ミキサーの機能

ミキサーの設定はハードウェアの出力チャンネルごとに入力をどれくらい出力するかを設定していく方式で、ルーティングマトリクスよりも直感的(人によってはマトリクスの方が直感的かもですが)に設定できます。

Outputの色に呼応してノブの色が変わるという演出も

なおSoftware Inputチャンネル(コンピュータ側からすると入力チャンネル)のミキシング出力には対応していません。これができないと困るパターンがループバックですが、設定でステレオchを1つSoftware Inputに割り振ることができます。
ただループバックにしても今のPro Toolsって仮想インターフェイスを持ってるのでPro Tools側で全部ゴニョゴニョしてしまうのが良さそうではあります(なんですが仮想I/OはMacでしか使えないみたいでした)
個人的にはオーディオインターフェイスにループバックを載せるのは直感的じゃなくてあまり好きじゃないです。たとえばループバックに載せる音をフェードインやフェードアウトさせたくないですか?その際に物理フェーダーで操作したくなりませんか?となればアナログミキサーをつなげてしまったり、音楽やポン出しくらいならスマホなどを接続して操作する方が良いんじゃないかと思ったり。この辺は人それぞれですけれども。

で、ルーティングの自由度で言うとTotalMixに似てる感じ。画面も似てますね。
さすがにMOTUの上位機種みたいにUSBのIn/Outのルーティングまでもが自由自在とまではいきませんが、その辺は上にも書いてある通りコンピュータ内部でもなんとかなるのでいいかなと。

Macだとコンピュータ側の認識はこんな感じです。

入力側

出力側

出力はもうちょっとチャンネル数あっても良さそうな気もしますが・・・でも使いこなしているかと言われると微妙なところなので自分の環境だとこれで大丈夫です。ADAT出力用のパラをここで設定できるとAD/DAを繋げてその向こうでアナログサミングなんかが可能になったかもなーなんて思ったり、いやそこまでするなら上位機種使うかなと思ったり。

それと、メインのインターフェイスとして普通に(?)音楽聴いたりする場合はSoftware Inputのパンがきちんと振られているか確認しておきましょう。最初すごいモノラル感あるなってミキサー確認してみたら左右のチャンネルのパンがCenterのままでそれは確かにってなりました(トラック名のすぐ上にある「⚪︎」ボタンをクリックするとステレオトラックになります)

マイクプリ

マイクプリはゲインが60dBでスペック的には普通のタイプ。と思いきやゲインのレンジが60dBです。ゲイン目一杯あげても50dBなんだけど残りの10dBはどこに行ったの?ってなりますがこれは-10dBのPadを利用することで-10dBから50dBまで可変となり、それで60dBということらしいです。ぐぬぬ。
ダイナミックマイクをお使いの方、あるいは配信やミーティング用途で使う場合にはほかのマイクプリを利用するかデジタルゲインなりでゲインを積みましょう。とおもいきや、LINE5-8Chでは60dBまでゲインを上げられるのでダイナミックマイクにXLR->Phoneのケーブルで接続するのもありかも。こちらにはファンタム電源はついてないのでコンデンサーマイクを使う場合は1-4Chを利用します。

このマイクプリ、特徴的なのはマイクにもインピーダンスの設定があるんです。リボンマイク用に高めのインピーダンスを設定できちゃう!(50dBまでしかゲインないと結局辛いんですけど)
マイクの入力インピーダンス可変のオーディオインターフェイスって他にもあるんでしょうか。単体マイクプリだとFocusriteのISAシリーズやAudientのASPシリーズなんかについていたりしますが・・・。
オーディオインターフェイスについているマイクプリの入力インピーダンスってみごとに各社バラバラなんですよね。RMEだと5.4k、SSLだと1.2k、MOTUだと2.65kなどなど。MBOX Studioで設定可能なのは1k、5k、10kで、ギターの設定可能なインピーダンスに比べてちょっと少ないような気もします。

Production ExpertでCarbonを利用してインピーダンスを変えたテストを行なっているのを見つけました
https://www.production-expert.com/production-expert-1/pro-tools-carbon-impedance-settings-tested-with-ribbon-and-dynamic-microphones

ノイズ性能に関してはEINが-129dBと申し分なしです。ダイナミックマイク利用時のノイズフロアを低く抑えられます。
ということでファンタム電源のついたマイク入力は4chですが、上でも述べたようにゲインを上げられるLine In(ダイナミックマイクを繋げられる)が4chついているので実質8chプリアンプということに。SSLもそうなんですけど、ちょっと高めの価格帯になってくるとこういうトンチを効かせた機能が入ってくるのはなぜ・・・。しかも通常マイク用の入力よりもゲイン上げられるのホント謎なのですが、ダイナミックマイクなら電源入らない&ゲインが必要ということでこうなっているのでしょうか。
最大入力レベルは1〜4chまでが14dBu、ライン入力の5〜8chまでが8dBです。1〜4chまでのヘッドルームが高いですね。やっぱりこの辺も謎。

出力

最大出力はだいたい19dBuです。Re-Amp Outは0dBu。

DSP

DSPはEQ、Reverb、Delayの3機能を利用可能です。自分的にはコンプもあればというところ。EQはモニターもしくはCue Mixだけに使うか、掛けどりするのにそのままDAW入力するかなどを設定できます。ディレイとリバーブは録音の際にリバーブやディレイがないと感覚が掴みづらいという人も多いでしょうからこれも嬉しいですね。

ヘルプ画面のブロック図を見る限りディレイとリバーブをかけた信号をそのままコンピュータに取り込むにはどこかでループを作らなきゃダメかも。

セッティング

自分の環境下でのセッティングとしてはメインのマシンにUSB接続。メインのアウトはSSL SiXに接続してスピーカーはその先に繋がっています。なのでボリューム調整はMBOX Studioではあまり使わない感じ。一番アクセスのいいビッグノブを使わないのはちょっともったいないですね。
で、SE Microphoneのアクティブリボンマイク、VR2はマイク入力1に。このマイクはアクティブだからなのかインピーダンスは200オームと控えめになっています。この場合はマイクプリのインピーダンスってどれくらいが最適なんでしょうね。とりあえず10kΩくらいに設定してみてます。
ギターを使う際はもちろん正面のInput2を使います。ほか、ペダルエフェクタをFXのセンドとリターンに。
シンセのNovation PEAKをMIDI接続して、音声はline inに。
Amp outはペダル型アンプのStompmanに、その先にORANGEのちっちゃいキャブを繋げています。
Alternate speaker はSP-404MKIIに繋げて出力をline In(Mic 3/4)に戻す感じに。

というようにあっという間に入出力が埋まっていきました。

ADATは今後の課題です。自分の環境ではRMEのUCXIIがハブ機能を果たしているんですけど、ADATが1系統ですでにMOTUのUltraLiteにIn/Out接続しちゃってるんですよね。うーん。この辺はADAT以上、MADI/Dante/AVB未満のいいソリューションがあればいいのにって思ってます。

S/PDIFにはエフェクタ的なものを繋げてみたいですね。EventideのH9000とか(願望)別解としてClarity Mでもぶら下げておきたいのですがClarity MはまだApple Silicon対応終わってないので・・・。

Pro Toolsとの繋ぎこみに関しては特に変わったこともなく通常のオーディオインターフェイスとして繋げられます。もちろんLow Latency Modeを使って遅延の少ないモニタ環境を仕込むこともできます。

ちなみにMacを使っていてMBOX StudioをDiscordやOBS、Zoomなんかでも使いたいという場合でマイクのゲインが問題になる場合はPro ToolsのAudio BridgeとAUX I/O機能を使ってマイクのチャンネル→Pro Tools→チャンネルストリップなどでゲイン上げる→OutをAudio Bridge(仮想オーディオインターフェイス)→各種アプリケーションのマイク入力設定みたいな感じでゲイン足りない問題を回避できます。

ちょっと面倒ですけど低遅延なプラグインを使って一気に声を整えることができます。もしくはRogue AmoebaのAudio Hijack使っても同じことがもっとスマートにできます。
WindowsでもPro ToolsのAux I/Oが使えると良いのですが・・・
手順はこちらの動画に詳しいです

付属ソフトウェア

いわずもがなのPro Tools Studio1年分。それにSibelius Artistも1年分。このセットだけで金額の半分以上です。すごいですね。
あとは

  • Matt LangeのサンプルパックっぽいPro Tools SONICDROP

  • Auto Tune Unlimited3ヶ月分

  • Melodyne Essential

  • 各社いろいろプロモーションの詰め合わせであるPro Tools Inner Circle

となっています。Inner Circleはいろいろ入っているので各自参照してみてください。個人的にはNewFangledAudioのEQuivocateが入っているのが嬉しかったです。これ26バンドのグライコで、リファレンスからEQカーブ作って製作中のトラックに適用できたりするのが嬉しいやつです。

その他

付属するUSBケーブルはなんと紫。AVIDカラー。
笑っちゃうくらい大きなフェライトコアついてるんです。こんなケーブル見たことない。

あとBlueToothもついています。入力も出力もできるのが良くて、スマホから音楽を入力したりBlueToothヘッドホンでも気楽に使うことができます(BlueToothヘッドホン持ってないですけどね!)
今は何よりベッドに寝転がっている時にiPhoneでYouTube見てて、音だけモニタスピーカーから聴きたいなっていう時に大活躍です。AirPlayで出力をMacに向けると音のみならず映像もMacから出力しようとしてiPhoneからは見えなくなっちゃうので音だけ出せるようにしたいなってずっと思ってました(レシーバ買えばいいじゃんと言う感じではありましたが)

最後に

MBOX StudioはPro Tools使ってみたい、もしくはすでに使っている人、またはギタリストやベーシストにおすすめしたいオーディオインターフェイスです。ミキサーの扱いに慣れていないと難しいと思うので中級者以上向けでしょうか。箱から出してすぐに初心者が使うには難しいというだけで、使っていくうちに覚えてレベルアップしていきたいというのはもちろん素敵ですよ!
あとちょっとデカいですけど使いやすさとコンパクトさは相反するものなので使いやすさに振り切ったインターフェイスと思い込みましょう(8chプリアンプと思えばコンパクトな部類だと思います!)
ほか、ループバックがあるとはいえ音楽制作に振り切ってる感があるので、お気楽に生配信したいなどにはちょっと難しいかもしれません。
RMEほどではないにせよ、ソフトウェアのアップデートもないわけではないので安心して使っていけるオーディオインターフェイスかなーと。

かなり便利に使えてます

次のオーディオインターフェイスはデジタル入出力をまとめられるやつがいいなと思っていろいろ調べています。