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オーディオインターフェイスを新調しました

もはやオーディオインターフェイスは趣味です。

今までいろいろとオーディオインターフェイスを買ってみたものの、どうにもしっくりきませんでした。今使っているMOTU UltraLite AVBとArturiaのAudioFuse、いいんですけど、うーーーーんという感じなんです。
AudioFuseに関してはそもそも安定性があまり良くありません。急にオーディオがドロップしたり、左右の音量レベルが全然違うようになったり。Arturiaのフォーラム見ていると他にも同様の症状を持っている人がいるようでファームウェアやドライバをアップデートしないと治らなさそう。ただこちらはM1 Macにまだ正式対応していないので文句は言えません。なので現在は一番安定して動作するiPadと組み合わせて使っています。さすがフランスメーカーといった感じでボディの質感はかなり良く、あとDIMスイッチやMuteボタン、大きな音量ダイヤルがあるなどモニターコントローラとしての機能が豊富ということもあってUltraLiteのメイン出力をこのAudioFuseに入力してミキサー、モニターコントローラがわりに使っています。
一方、UltraLiteはM1 MacbookAirに繋げています。AudioFuseよりはるかにマシとは言え、まだ若干不安定かも。不思議なことにChromeでYouTubeのタブを開きまくるとマウスポインターがかくつくなど不安定になり、ややするとオーディオがプツんと切れたりします。これはMac側の問題かもしれませんね。

オーディオインターフェイスが不安定だと心も不安定になります。断線しかかってるヘッドホンを使っているような気持ち悪い感じ。100%のアップタイムで安定動作していて欲しい機材なんですよオーディオインターフェイスって。つまり、、、新調しなければいけません!!

オーディオインターフェイスに求めるもの

これまでも地雷をそれなりに踏んできたのでオーディオインターフェイスを見る目を養えてきたんじゃないかと思っています。

オーディオインターフェイスはご存知の通りオーディオ入出力するための機材。その入出力チャンネルの数、ルーティング、ミキシング、対応可能なビットレートやサンプリング周波数といった項目がコアとなる機能ですね。デジタル入出力しか持たないオーディオインターフェイスっておそらくこれだけじゃないでしょうか?それにADCやDAC、クロックといったものを追加することでアナログ界との出入り口を作ります。マイクプリの機能を載せて音量の低いアナログ信号を増幅して扱いやすいデジタル信号へ、そこへモニタースピーカーの音量調節やヘッドホンアンプなどをつけてアナログの使い心地を良いものに。このデジタルから一歩アナログに踏み出している部分が音質を決めているのでしょう。

こうして俯瞰してみるとすごく単純なように見えます。ですがより利便性を追い求めていろいろな機能を持たせた結果、オーディオインターフェイスを利用するために複雑なソフトウェアが必要になってしまいました。

自分がオーディオインターフェイスに求めているのは一番に安定性です。Macを使っているとその辺がなかなか難しいんです。年に一度はあるMacOSのアップデート。ですがそれに追従してソフトウェアをアップデートしていくのは並大抵の努力では難しいのか、なかには周回遅れになっているものもあります。
「MacOSのアップデートはリリースから1年以上経ってから」というのがMacでDTMをやっていく上でのベストプラクティスになっています。悩ましいのはソフトウェアが最新のMacOSに対応したというアナウンスがあってもそれを100%信じきることができないところです。その最新版のソフトウェアにもバグはつきものなわけです。

オーディオインターフェイスのソフトウェアは安定して音楽を楽しんでいく上で一番大切な部分。ここにバグがあるとホント辛いんですよ。ということで自分の推しはドライバソフトウェアなしで動作するオーディオインターフェイス。いわゆるUSBクラスコンプライアントのモデルです。仕事で必要になってもう最新OSのベータ版入れちゃってるし。

検討

ということでドライバいらないものを!USBクラスコンプライアントのものなら最新のOSでもドライバの対応を待つ必要もないですから。今回のBig Sur & Apple Silicon祭りでいろいろと疲れました・・・。基本的な機能がしっかりしたオーディオインターフェイスであればそれでいい!ということでいくつかピックアップしてみました。

1. RME FireFace UCX II
2. Sound Devices MixPre 10II
3. Cranborne Audio 500R8

RMEのはもちろんドライバあるんですけどUSBクラスコンプライアントモードにもスイッチで切り替えられます。便利。TotalMixという専用ソフトウェアもイカしてます。iPadからも使えちゃう。
次にSound Devicesはなんと32bit float対応でゲインの調整なんて今や過去みたいな新時代感がたっぷりです。Steinbergのオーディオインターフェイスで32bit int対応のものがありますが、さらにその上を行きます。32bit floatのダイナミックレンジ1,500dBって凄まじすぎる。
そしてCranborne Audioの500R8。API500シャーシにオーディオインターフェイス機能とサミングミキサーを付けましたっていう機種です。もちろんシャーシなので素の状態だとマイクプリすらついていませんけれど、もうロマンのカタマリ。

選定

ほんとはRMEのがよかったんですけどねー。クラスコンプライアントモードのがいいと言いつつもここのドライバだけは信じてます。オーディオインターフェイス界で一番ソフトウェアを書くのに長けている会社というイメージです。このUCX IIはDCカップリング対応でモジュラーシンセとCVのやりとりもできてしまう夢のインターフェイス。送れるCVのレンジも結構広かったはず。クロックもめっちゃいいし!ただこちら、来年まで入荷ないみたいです。ということで残念ながら見送り。
Sound Devicesも現物がありません。あと国内で買うとアメリカと比べて二倍以上の値付けになっちゃうんですよ……。普通に飛行機でポートランドなんかに行って買って帰ってきてもまだお釣りがきそう。
ということで白羽の矢が立ったのはCranborne Audioの500R8。API500シャーシ!自分の好きなマイクプリやコンプ、EQなんかを入れられるって良くないですか?マイクプリが好きじゃないならそのモジュールだけ買い替えればいいし、逆にお気に入りのマイクプリはAPI500モジュールとしてずっと使い続けることもできます。DSPエフェクトは使わず、モジュールで勝負!

Cranborne Audio 500R8

ということで宮地楽器さんからゲットしましたよ!

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Cranborne Audioの歴史はそれほど古いものではありません。ミキサーメーカーとして有名なUKのサウンドクラフトで働いていたスタッフたちが立ち上げたメーカーで、今はこのAPI 500シャーシを筆頭にプリアンプなどを作っています。この500R8やADAT拡張シャーシの500ADATのAD変換部分には旭化成のADCが使われていて、前に宮崎県の工場が火事になった時にモロにあおりを受けてデリバリーが遅れていました。で、昨今の半導体不足でまたラインは止まり・・・となんとも不運な感じでしたが最近またラインが動き出したようです。やったね。ちなみにDACにはCirrus Logicの新しめのチップが奢られています。これらADCとDACのチップについてはAntelopeのマスタリング用コンバーターであるAMÁRIで使われている組み合わせと一緒みたいで高品質なようです。

Cranborne Audio 500R8は先ほども述べたようにAPI 500シャーシにオーディオインターフェイスとサミングミキサーを付けた代物です。API 500とはアウトボードをコンパクトに収納できる規格のことで、Doepferによるユーロラックシンセの規格のようなものです。見た目はハードディスクなんかを詰め込むRAIDケースみたいな感じ。マイクプリやコンプ、EQなどといったモジュールをガチャンとはめ込んで使うようになっています。
API 500の規格ではスロットあたりの大きさ、端子のアサインや最大消費電力、モジュールの奥行きなどが決められています。ちなみに最大消費電力は16Vが130mA、48Vが5mAとなっています。なかにはこれより多く消費するモジュールもあるみたいですけれど……。で、500R8には8スロットぶんのモジュールを搭載させることができます。

オーディオインターフェイス部分は入力は26chで出力が28chとなっており、そのうち各16chぶんはADAT拡張向けのチャンネルとなっています。ビットデプスは24bitのみ。サンプリング周波数は192kHzまで対応です。ジッターは0.5ps以下と単体クロックジェネレータよりも良かったりする数値なんですけどどうなんでしょう。

サミングミキサーとは要するにアナログ回路を通して戻すだけのものです。なかにはパンもなければ音量調整せず、チャンネルごとにアナログ回路を通して戻すだけのものもあったりします。こうなると微妙なアナログサチュレーターにしか思えませんが、いろいろと手を尽くした音源に施す最後の一手みたいなものなのでしょう。自分がその域に達するのに何年かかるのか。500R8には各チャンネルごとにパンや音量調整のノブが付いていて普通のミキシングがこれで行えます。
DAWから各チャンネルの出力をこの500R8のスロットに割り振っていって、パンやゲインを調整してミキシングを行い、結果の2MIXを再びDAWで受け取る、みたいな感じです。もちろんチャンネルごとの出力も受け取ることができます。
ちなみにデジタルからアナログに変換してから卓やサミングミキサーでミックスする方法をOTBというみたいです。

各スロットの前面にはUSBとアナログ、Cranborne独自規格端子の入力切り替えスイッチ、モジュールの出力を配線することなしにチェインできるスイッチ、それにボリュームノブとパンノブがついています。あとスロットの奥底にモジュールをバイパスするためのスイッチとステレオリンクのためのスイッチがついています。

背面には入出力の端子がたくさん並んでおり、各チャンネルにはインサート端子が設けられています。エフェクトバスみたいのあると良かったかもですが前面のスペースは限られているのでしょうがないのかな。

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ほかに珍しい点としてDAW2入力というものがあります。これは演奏者用に別ミックスを送るためのもので、例えばメトロノームのティックを入れたりしてアーティストがそのティック音をモニターしながら録音できるようになっています。アナログで入力もできるし、オーディオインターフェイスのOUT側27chと28chもDAW2へ出力される仕様です。
自分の場合はiPadに繋いでるオーディオインターフェイスの出力をDAW2に入力しています。別にまだたくさんチャンネル空いているのでそっちに差してもいいですね。

今回はキャンペーンということで購入時にCamden 500というマイクプリが一つ付いてきました。トランスレスのクリーン系なんですが、MOJOというつまみでサチュレーションを加えることもできます。ゲインは68.5dBあるのでダイナミックマイクくらいまでなら大丈夫。ラインやギターも入れることができるのでかなり便利に使えてます。

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さて、このCamden 500でスロットが一つ埋まってしまうのであと7スロット空いています。この空きスロットにどのモジュールを入れようか考えている時間が幸せ。いろんなマイクプリを入れるのもいいですし、コンプとEQを組み合わせてチャンネルストリップを構成するのもいいですね。個性のあるモジュールがたくさんあるので迷っちゃいます。

ちなみに入出力はMaxで+24dBu(マスタースピーカーへの出力は+26dBu)の業務用仕様となっていてクソデカ入出力を扱えます。モニタースピーカーのセッティング法がマニュアルに書かれてて、そんなんいらんじゃんと思ったらこのデカい出力をいなすためのものでした。
なのでモジュラーシンセへの入出力も自由に行えそうです。まさに業務用ミキサーっぽい。

ぼくが今使っているモニタースピーカーはYAMAHAのHS5です。なのでそこまで期待していなかったんですが、今回500R8と組み合わせて鳴らしてみると低域のモヤモヤがなくなり質感がはっきりと感じられるようになりました。モニターはちょっと前まで買い替えなきゃダメなのかなっておもっていましたが大丈夫そう。左右の分離もかなり良くミックスがやりやすい印象を受けました。クロック性能が良いからなのかな?それともクソデカ出力のおかげ?

あと、当然ですがめっちゃめちゃ安定しています。もともと狙っていた点ですが実はこれが何よりも嬉しいです。

使いこなしに気をつける点

ほぼ何も言うことはないのですが、チャンネルの割り当てが特殊なのでそこに気をつける必要があります。
USBから送られる信号のうちCh1とCh2はそのままSlot1、Slot2への割り当てになります。確かにやりたいことはわかるんです。Slot1を使いたい場合はCh1に送ってCh1で戻すということを想定しているのでしょう。

ただ、MacだとこのCh1とCh2はかなり特殊かつ貴重かつ重要なチャンネルで、USBクラスコンプライントのオーディオインターフェイスを利用する際にこの1chと2chをデフォルトの入出力としてみなすんです。

ところが500R8のメイン出力は9chと10chです。なのでAudio MIDI設定でスピーカー設定を呼び出し、そこで9chと10chを指定して利用します。DAWのモニター出力もこうした作業が必要になります。

と、ここまでは良いです。困るのは中途半端にオーディオの入出力デバイスを設定できるソフトウェアで利用する場合。
例えばZoomは出力デバイスの設定ができるんですが、そこで500R8を選択するとCh1とCh2に相手側音声を送っちゃいます。つまり500R8のSlot1とSlot2に送っちゃうんですよ・・・・。キコエナイキコエナイ。
ということでSlot1の入力をアナログ入力、つまり背面からのマイク入力をオーディオインターフェイスのCh1に出力し、Slot2の入力はUSBから送られてくるCh2を利用するようにしてそれをミックスバスに送り、それをモニターするようにしています。右チャンネルから生成したモノラル信号をモニターするわけですね。こんなややこしいことをしなくても普通にLoopback(Mac用のオーディオルーティングソフトウェア)使ってZoomの出力を500R8のメイン出力にルーティングしてあげれば済む話ではありますけれど、ここがちょっと使いづらいかも。

あと、いわゆるループバック機能は普通にケーブル結線で実現できそう。

改善してほしい点

改善して欲しいのは先程のチャンネルアサインを含めた以下。
まずスロットの奥底についているバイパススイッチをもっとアクセシブルな位置へ変更して欲しいです。モジュールを埋めてしまうとこのスイッチに手が届かなくなるんですよ。バイパスしてアナログサミングでミックスのみっていうのもやりたいんですが……。
それとヘッドホン用のボリュームノブが欲しいです。スピーカー出力とヘッドホン出力のボリュームが連動する仕様です。今はAUXバスをヘッドホン用に割り切って使っているのでAUXのボリュームノブで調整しているので大丈夫ではあります。プロ仕様の機材ってこんな動きするんでしょうか。
質感の部分についてはノブをもうちょっと高級感あるものだと嬉しいです。現行のはちょっとプラスチック感が……これは自分でノブを買って変更すると良いのでしょうけれども。
あとS/PDIFがまだ有効じゃないみたいなので早く…早くファームウェアを……。

まとめ

ちょろっと気になる点はありましたが、めっちゃお気に入りの一台になりました。長く使っていけそうだなーって思ってます!!!あとモジュラーシンセにADAT対応モジュールを載せて500R8と接続してCVをやりとりできるように拡張していく予定ですっていうかExpert SleepersのES-3というADAT信号をアナログ信号に変換してくれるモジュールを一緒に買っていたりするので、もろもろ入出力周りはカバーできそうです。ケーブル足りないのでケーブル買わなきゃ!