世界一独裁化が進む国、ポーランド🇵🇱
世界で最も独裁化が進んでいる国と聞いてどこを思い浮かべますか?
憲法改正を目指して右傾化していると言われる日本、トランプ政権下のアメリカ、麻薬犯罪者を超法規的措置で射殺しているフィリピン...
などが思い浮かぶかもしれません。
しかし、意外なことに、数字で見てみると世界で最も独裁化が進んでいるのはそれらの国ではないのです。
スウェーデンのヨーテボリ大学政治学部に本部を置く「Varieties of Democracy」(以下、V-Dem研究所とする)の最新の発表によると、2010年から2020年にかけて最も独裁化が進んだ国トップ10は、
1位:ポーランド
2位:ハンガリー
3位:トルコ
4位:ブラジル
5位:セルビア
6位:ベナン
7位:インド
8位:モーリシャス
9位:ボリビア
10位:タイ
だったのです。
ポーランド、ハンガリーというEU加盟国によって上位2カ国が占められていることに驚かれる方も多いと思います。
では、ポーランド、ハンガリーは実際どのくらい独裁化が進行しているのか。今回はポーランドに焦点を当てて見ていこうと思います。
ポーランドってどんな国?
国旗:上 国章:下
[正式名称]ポーランド共和国
[公用語]ポーランド語
[国歌]ドンブロフスキのマズルカ
[首都]ワルシャワ
[大統領]アンジェイ・ドゥダ
[首相]マテウシュ・モラヴィエツキ
独裁化するポーランド
え!あれだけたくさんの悲劇を経験したポーランドが独裁化しているの?!と思われる方も多いかもしれません。
実は、様々な学会や専門家が集めたデータによって、ポーランドは過去10年(2010年〜2020年)の間に、世界で最も独裁化している国だということが判明したのです。
民主主義指数
【V-Dem研究所の調査】
V-Dem研究所が2020年に発表した「自由民主主義指数」ランキングで、ポーランドは世界63位でした。これは、エクアドル、ソロモン諸島、ボツワナのすぐ上、ブルガリア、レソト、モンゴルのすぐ下に位置する順位(日本は30位)なのです。
また、V-Dem研究所が発表した別のデータでも、ポーランドは過去10年間で「自由民主主義」のスコアが34%も低下しており、同研究所は、これらの低下の原因は、2015年に、国民保守主義を掲げる政党「法と正義」(PiS)が政権を獲得したことだと指摘。そして、ポーランドをランキング最高位の「自由民主主義」(Liberal Democracy)から、一つ下の「選挙民主主義」(Electoral Democracy)に格下げし、政府による「司法に対する継続的な攻撃」と「市民社会・メディアへの制限」が続いている、としました。
【フリーダムハウスの調査】
2020年、アメリカ・ワシントンD.C.に本部をおく国際非政府組織「フリーダムハウス」は、ポーランドはもはや完全な民主主義ではないと指摘し、特に「司法の枠組みと独立」の分野で大きな低下が見られるとしています。
汚職指数
ドイツ・ベルリンに本部を置き、主に各国政府の汚職について調査を行う非政府組織「トランスペアレンシーインターナショナル」が今年初めに発表した「汚職指数」(Corruption Index)ランキングで、ポーランドは過去最低の順位に低下。同組織は、与党の法の支配に対する侵食や、市民に対する監視が汚職を生みやすい環境を作り上げている、と指摘しました。
報道自由度
フランス・パリに本部を置く国境なき記者団が毎年発表している「世界報道自由度ランキング」(World Press Freedom Index)でも、ポーランドは大きな低下を示しました。法と正義(PiS)が政権を獲得した直後の2015年には世界18位だった順位が、6年連続で低下し続け、2021年には、なんと世界64位となったのです。
経済自由度指数と人間自由度指数
アメリカの保守系シンクタンクである「ヘリテージ財団」が発表している「経済自由度指数」(Index of Economic Freedom)では、2016年の39位から2019年には46位に低下。
また、リバタリアン系シンクタンク「ケイトー研究所」の「人間自由度指数」(Human Freedom Index)でも、2011年の21位から2020年には40位に低下しました。
LGBTフリーゾーン
ポーランドでは現在、「この街にLGBTはいません」ということを意味する「LGBTフリーゾーン」を掲げる自治体が国土の3分の2を占めています。これらの地域では、LGBTへの理解を促進する行為や、平等を推進するNGOへの資金援助を禁止しています。
アンジェイ・セバスティアン・ドゥダ大統領
大統領のアンジェイ・ドゥダ氏は「LGBTは輸入されたイデオロギー」であり、「共産主義よりも破壊的」だとして、同性愛者の養子縁組を禁止しました。
また、2019年に行われた世論調査では、ポーランド国民の66%(2017年から2%アップ)が同性婚に反対し、84%が同性カップルの養子縁組に反対するなど、依然としてLGBT当事者にとっては生きづらい状況が続いています。
イスタンブール条約からの脱退
2020年7月、ポーランド政府は、女性に対する暴力を防止する「イスタンブール条約」から脱退すると発表しました。
ズビグニエフ・ジョブロ法相
ズビグニエフ・ジョブロ法相は「条約は、学校がイデオロギー的な方法でジェンダーについて子供たちに教え、生物学的な性別を強調しないように義務付けるので、有害である」と述べ、イスタンブール条約を批判しています。
ポーランド政府の見解
これだけ独裁的な政策を実行していれば、当然他のEU諸国からの圧力や批判が殺到します。
しかし、ポーランド政府は「これらの司法やメディアに対する政策は共産党時代の残党を一掃するために必要だ」と主張します。
ヤロスワフ・カチンスキ党首
また、法と正義(PiS)の党首、ヤロスワフ・カチンスキ氏も「1989年以降のポーランドは真の独立を果たせていません。代わりに、共産主義者のエリートや一部の野党の間で、ポスト共産主義者が政治・司法・経済・メディアなどの分野で影響を持ち続ける、という取り決めがなされました」と述べています。
最後に
今回もお読みいただきありがとうございました。
ポーランドの現状について、少しでも理解を深めていただけたなら幸いです。
主に英語の記事を読んでまとめているので、日本語がおかしくなっている箇所がいくつかあると思いますがお許しください。
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