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イマ・イマーシブ制作雑記

はじめに

こんにちは、citrus×clover undergroundのおいろま◇◆です!
普段は個人サークルのAirycraft◇で細々と同人音楽を作っています。
今回のM3-2024春にて、いろんな思いがあって画集+プレスCDの個人的大作をリリースすることができました。
その記念にとこの度noteに各曲の雑記を残しておこうと思います。聴いて下さった皆さんの「もっと世界観を知りたい!」にもお答えできる内容になるといいな。


作品について

https://ima-immersive.netlify.app/

https://youtu.be/ZcfUhFWmM98

『イマ・イマーシブ』は言葉のままの「現在」への「没入」というワードに世界への”忌々し”さをミーニングした、ちょびっと暗い作品です。
以前ASMRコアと称した効果音いっぱいの楽曲を作ったことがあるのですが、もっと空間表現を追求してみたいと思いいわゆるリミナルスペースをテーマに制作しました。

CDというメディアがほぼすっかりレガシーになっている現状、どのような形でリリースすれば皆様へしっかりお届けできるのかなぁとかなり考えました。個人的にイラストを見るのが好き+同人【誌】も作ってみたいと長く考えていたことが組み合わさり、結果、10年ほど前に地元のイベントに出展するために組んだことのあるイラストレーターのI/Oさんに改めてお声がけすることを考えました。
実はcitrus×clover undergroundというサークル名もその当時のままのサークル名なんです。せっかくなのでと頼み込みまして、10周年記念企画としてその名前の期間限定リバイバルでのリリースをさせて頂くことができました。本当に感謝です。

ここから各楽曲についていろいろ語りますっ。

メリーバッドプロローグ
-Merry Bad Prologue-

ジャンルは[PIANO NOCLIP]。
NOCLIPって何ですかという話ですが、今回ジャンル名に組み込んだ単語としては唯一音楽と全然関係ない単語です。
リミナルスペース人気から派生したBackroomsという海外のホラー作品群があり、NOCLIPは現実から抜け落ちてそのホラー世界に落ちてしまう瞬間を指す言葉として使われています。

お世話になった(?)Backroomsの日本語解説動画はコチラに…

Backroomsはあくまでも本作における裏テーマなのですが、NOCLIPという単語を知っていればこの時点でそういう世界観なのねと掴んでいただける狙いでありました。ネタバラシではなくうっすらエッセンス程度でね。

この楽曲もともとはいわゆる音ゲーARTCOREで行こうと思っていましたが、本CD全体の構成として一番表現したい部分が極めて緩徐的な2曲目にありましたのであまりにも動→静の落差がありすぎると要素がガチャるなあと実は制作最終盤まで悩みに悩みました。
結果として2曲目の導入になるだけの非常にシンプルなピアノ前奏曲になりましたが、この曲のおかげでCD全体の物語性が強調されたかなと思います。あまりに短いため試聴動画には含めることが出来ませんでしたが作って良かったよ…!!(試聴動画のオープニングは実は次曲の冒頭フレーズなのです)

ウォールフラワーインビトロ
-Wallflower(in vitro)-

プールにて。ジャンルは[CHILLSTEP]。
このジャンルの楽曲をイヤホンで流しながら現実の本屋を探索するのが本当に最高なんですよ、もっと作り手が増えてほしいな~とかねてから思っている癒し系の1ジャンルです。

1曲目でNOCLIPしてしまった主人公が落ちてしまった先は、リミナルスペースの代表格の一つである白いプールです。いきなり水に落ちる音が激しくてビックリしちゃった方にはゴメンね。主人公は広大かつ空虚な建造物を認め、やがて探索を始めます。CD全曲中でも特に明確な場面転換を有するフレーズになっています。

水の細かなバシャバシャ音のタイミング表現のために今回はDSP Motionというソフトを導入しました。VSTではなく効果音作成特化の独立したソフトで映像制作によく使用されるそうですよ。

このソフト、グリグリいじってるだけでも本当に楽しくて!今後もまたASMR的な音を意識した楽曲を作るならばいっぱい使い倒してみたいですねー。
その他のFoley音はLoopcloud.comの素材がほとんどです。サブスク音素材といえばやっぱりSpliceが業界トップだよねと感じているので今回逆張り的にSplice以外のライブラリを頼ってみた形だったりします。

グリーフインジアティック
-Grief In The Attic-

電車にて。ジャンルは[JUKE/FOOTWORK]。
画集を開いて頂いた方は「屋根裏なの?舞台裏なの?電車なの?」と戸惑うかもですが、思考の錯綜感を出してみたくこの場面においては敢えて設定をゴチャらせてみました。悪い考えがグルグルグルグル…だんだん混乱してくる感じをジューク・フットワークのひたすら繰り返すリズムとドライな展開感にあてています。

本楽曲でわかりやすくグラニュラー感いっぱいのPadは大体Pigmentsというシンセ一本に頑張ってもらっています。SILOも試してみたんですが習得段階でなかなかしっくり掴めなくって…。

その他のリードやビルドアップの要素は大体Vitalで作っています。ドラムの性格が帯域はより豊富になっているものの808に近いシンプルなものだったので、シンセもそんなにブリブリと変調を作り込む必要はないのかなー?という感じで。全体の音像は結構サクッと仕上がりました!Jフュージョン的なリードくんに個人的なノスタルジー感を託していたりしますがこういうのはみんなお好きかなあ?

コラプト
-Corrupt-

大聖堂にて。ジャンルは[CLASSICAL SCHRANZ]。
本アルバム中一番制作時間のかかった楽曲。本作全体での立ち位置としても【転】にあたる楽曲です。
シュランツらしきジャンルは10年以上前にも挑戦したことがあり、それを現在のスキルでもう一度やったらどんなサウンドができるだろう!と確かめたく作り始めた楽曲ですが、少なくとも過去の経験があった分「全く形にならないよ~!」という事態にはならない自信だけはギリギリありましたっ…。

今回はそこにバロック音楽のエッセンスをプラスしてストリングスが戦うメロディアス楽曲に。アレンジ楽曲というわけではないですが、J.S.バッハのインベンション2番ハ短調が制作中常に念頭にありほんのちょっとだけ音型を引用していたりします。
間奏の三拍子フレーズはもともと倍音を抜いたフルートのような音色のパイプオルガンイメージでしたが、8bit音にしたことであくまでもエレクトロ楽曲であるという存在感を保てた気がします。突然の8bit音でもしっかり包みこんで馴染ませてくれるRaum(リバーブ)の性能がありがたすぎた!

後半の一部分ロウスタイル化はクラブユース的にどうしてもぶっこみたかった!という部分でありますが、このフレーズの存在で要素が増えたぶん一言での評価を下しにくい楽曲になっているかもしれませんね。曲名通りの「崩壊」感が出ていれば嬉しいです。
(あと、音ゲーマー的にはconflictの完成度って半端なかったんだなと思い知ったところもありました。こういう楽曲を作る際の比較対象として絶対に逃れられない大存在サマだね…)

パープルドリームイマーシブ
-Purple Dream Immersive-

水路にて。ジャンルは[IDM](Intelligent Dance Music)。
実はオウテカとか好きなんです。うまく言語化出来ないジャンルでありますが、「良い…」がひたすら続く感覚。
全ての音を計算づくしでやれる彼らは間違いなく第一線の超人なわけですが、それっぽさ重視で(?)それらしい雰囲気をなぞる如くグリッチでランダムな世界観を編み上げていくのは作っていてかなーり楽しかったです。憧れはパワー。
結構長尺のグリッチサンプルを使用しているのでそれを邪魔しないような歯切れの良いキックスネア作りが肝要でした。逆に言うとそれ以外はもう自由だー!という感じでグリッチを気ままに塗りたくっています。帯域かぶりとダッキングは意識しつつね!

楽曲の立ち位置としては【転】のあとの【結】に向けたインターミッションのため2分でバサッと切り上げさせていただきました。ラストのすべてが不規則になるフレーズは個人的脳汁ポイント。ぜひぜひ聴いてね!

トロイメライガーディアン
-Träumerei Guardian-

過去にて。ジャンルは['00s TRANCE]。
自分自身の過去を救うための大切な1曲。
というのもこの曲のメインフレーズ実は私が中学生時代に作り、けど楽曲としての完成まではさせていなかったものなんです。それが約20年経ったいま、当時憧れていた色んな音色を纏って完結したよ!という…作者一人だけがエモいんじゃないか的な楽曲がこれというわけなのですね。
本CD全体の構成としても一応【結】にあたる楽曲ではあります。

サウンド面は先述の、当時(もちろん今も)大好きなフィルター開閉するスパソと303系アシッド絡みのビルド。ここにホワイトノイズで空気感を増し増してむせるようなトランス感を作りました。
ブレイクで登場するフレーズの音色はシンプルな波形を汚し、古びた機械(メロディ信号機とか)が奏でるような音をイメージしています。これが作者のノスタルジー観です!

ノスタルジー言いつつも一番参考になった楽曲はNhatoさんのBeyond The Sevenでした。土台はトランスながら新しいジャンルの音を加えるバランス、美しいメロディ、構成、mix…全てにおいてエレクトロの姿の1つの理想形ですよ…。

主人公の行方は誰も知らない。
“ジュエル”に護られ、導かれるままリミナルの空間を何百年も走り続けているのです。

以上!

お読みいただきありがとうございました。
次回作からは個人サークルに立ち戻りまして、Airycraft◇からのリリースとなります。またいろんな世界観をお届け出来るようにがんばります!
感想とかご質問とかありましたら何でも下さ~い!

したらばね!


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