21210509_時計屋さん

時計が壊れてしまった。最近は埋め込み式デバイスが流行っているせいで、腕時計というものをめっきり見なくなった。たしかに便利なのだが、一昔前にコンタクトレンズを眼に入れるのが怖かったように、埋め込み式を嫌っている人も多い。かく言う自分もその一人だ。

腕時計は重いし蒸れるから嫌いだ。なんで拘束具をつけたまま暮らさなきゃいけないのだ、とも思うがなんだか左腕に重りがないと落ち着かないのもまた性なのである。でもその時計が動かなくなってしまった。なんだか愛犬が死んだ時のように悲しくなった。

修理をお願いしに、アンティークショップに行った。店員の人工妖精は手際良く腕時計を分解し、あっという間に動くように直してくれた。妖精様様だ。かつての専門職でさえも、最近は妖精に頼ることの方が多い気がする。近未来な世界になったものだなぁと実感する。

腕時計を直してくれた妖精と少し話をすると、彼は動かない時計を動かすのが趣味らしい。曰く、「23時58分20秒で止まり続けている時計があるそうなんです。それを明日修理しに行くんです。」とのことだ。人間はこんなに自堕落になってしまったというのに、仕事熱心なことだ。

帰り道に散歩していると珍しく腕時計をしている人を見かけた。しかも3人も。明日は地球が滅びるかもしれないな。

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