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料理と「無力感」

昨年=2018年の2月頃「この人に習いたい」と感じた先生と出会ったことをきっかけに、ヴィーガン料理レッスンに毎月通ったり、単発のレッスンを各所で受けてみたりして、今年も2月から新たにパーソナルシェフ養成講座に通い始めたりしている。

やればやるほど、過去私自身が育った環境のことや、そこで私が料理というものに対してどんなことを感じてきたか、そして私が持ち合わせる五感の特性についてを再確認していく作業であるのを感じている。

#食のある居場所 を作っていこうと決心を固めているにもかかわらず、料理に対する苦手感が拭えない。それを拭うためには、自分で理由に気付いて変えていくしかない。そんなことを思いながら過ごしてきた。

料理が得意な母と姉のもと、姉より5歳半年下の私は、主に「あぶない」という理由で、料理をあまりさせられずに過ごし、無意識の中で「やってはいけない」ような感覚を持ってきた。やったとしても、母や姉のようにはできない、と諦めていた。

姉は高校生になると体調が悪く作れない母の代わりに小学生の私にお弁当を作ってくれたりもして、私は料理は任せきりで10代を過ごしてしまう。中学校もお弁当を持っていく学校だったけれども、やはり母は作れないため、お向かいにあったコンビニで買う日々。高校でもコンビニか学食かで、自分で作ることはなかった。

でも、料理自体や、美味しいお食事を提供するお店への憧れをずっと持ち続けていたのは、親が記念日的な日には「いいお店」に連れて行ってくれていたからだと思う。

そしてその後、私が大学生から20代前半の頃、母が体調を崩しほぼ寝たきりのような状態だったため、家で私が食事を作ることが多くなった時期があった。

でも、母は私が作った食事をあまり食べたがらなかった。食べる体力がなかったこともあるけれども、口に合わなかったのだと思う。私がいくら「身体にいいものを」と思っても、母はそれを求めていなかったのかもしれない。

そして、母が転地療養で自宅に居なかった時期、父が痛風気味になり、私は健康管理レシピの載った料理本を買って痛風に悪影響のない献立で作ってみていたものの、父の足が痛風で腫れ上がるようなことがあった。

更には30代前半、ちょうど東日本大震災の直後、コンビニやスーパーから食べ物が消えた頃。当時結婚していた相手に作ったお弁当を「荷物が重いから持っていきたくない」と拒否されたことがきっかけで、その後の離婚につながっていったりもした。もちろんそれまでの様々な伏線があってのことだけれど。

相手のことを想って一生懸命考えて作っても、相手は元気になっていかない。

そんな経験を重ねたことから、私は料理を作る時に常ににネガティブな「無力感」を感じることになったのではないかと、今日また自分がなぜ料理が苦手だと感じているかについて考えながら気付いた。

作ったものを食べてもらえなかった時の光景を思い出すと、涙が出る。これまではそこまで身体が反応することはなかったけれども、あの時自分が結構しんどかったんだというのを、20年程経って表に出せるようになった、ということで。

そしてその後、30代後半、グリーフとグリーフサポートに出逢ってから、(一社)リヴオンさんの年越いのちの村をはじめ、私が関わらせてもらったボランティア活動などで、食事をともにすることがどれだけ大きな「生きる力」を与えるのかを目の当たりにして、過去の自分が感じていた「無力感」と真逆の体験をすることになる。

その相反する感覚が、私の中で無意識のうちの戸惑いを生んでいたのかもしれない。

しかし無力感といえば、社会的養護もそうだけれども、心理カウンセラーとしての学びや実践で大切にしている一つが「無力感」である、というのもあって。

「答えはその人自身が持っている」、つまり、その人が持つ課題に対してその人自身に解決する力があるといかに信じ切れるか。それはつまり、目の前にいる人の人生についていかに自分が無力であるかを自覚すること。それが根底にないと、フラットなヨコの位置で支えることはできない。

だから、ポジティブな無力感は必要で、私が経験から知っている無力感は転換してそれに活かされるべきである。

今学んでいるパーソナルシェフのコンセプトは、食べる人の命を支えること。その人のことを想って、その人が笑顔で幸せを感じられるような食事を作ること

それを叶えるためには、私がこれまで自分に植え付けてきた感覚を認めた上で、覆していかなければならない。

五感に関しても、ADHD的な注意散漫なところをカバーする工夫や、子どもの頃から弱かった嗅覚を研ぎ澄ます訓練をしていかないと、料理にとっては致命的となってしまうため、より一層の努力が必要である。

自分を信じる、そして、あきらめない。その決心を、今しようと思う。

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