四月大歌舞伎 実盛物語

体調不良で初日の通しを無駄にしてしまった。鶴亀の亀を踊る猿之助さんも大怪我以来本公演では初めての『黒塚』どちらも観られなかった自分が情けない。そんな思いでチケット松竹を見てたら一列目11番、『黒塚』岩手を観るのに絶好の席が戻ってた。思わず入手。8日の『黒塚』だけを見物しようかとも思ったが、少し早めの新幹線に変更して仁左衛門さんの『実盛物語』に遅ればせながら滑り込んだ。「源平布引滝~義賢最期~実盛物語」の実盛物語だけを上演することが多い。人気の狂言なのだろう。
ここ数年片岡愛之助さん、愛ちゃんで何度か観てる実盛、南座閉場で先斗町歌舞練場顔見世、翌年歌舞伎座12月。歌舞練場の瀬尾は亀鶴さん。歌舞伎座の瀬尾は亀蔵さん、今月は歌六さん。
仇役ではあるが実はいい人と言う役どころ。
瀬尾の見せ場は孫に討たれて兵馬返りで首(人形)がコロリと転がり出るところた。
亀鶴さんの兵馬返りを初めて観たときの驚愕。まるでマジックを観てる様な見事な兵馬返り。蹲踞の姿勢でトンボを切ると言えばわかるだろうか?一瞬の事でえっ、どうなったの?と思う兵馬返り。孫に討たれるまでは憎々しい仇役で通し討たれる時に実は愛しい孫に手柄を立てさせる為に自らの命を差し出すのだ。亀蔵さんの瀬尾は半兵馬返り?だったがやはり憎々しい仇役を演じる事で孫の手柄にするために自身を討たせる祖父の愛が引き立つ。歌六さんは兵馬返りはしない。仁左衛門さんの演出なのだろうか。前二人の瀬尾よりも数分早く孫への慈愛の表情を見せる。ストーリーを知らない人はハテナ、知ってる人もなんでこんなに早く?と思うのでは無いかと感じてしまった。所謂ネタばらしが少し早い。これが良いと涙されるお客さんもいるのは確か。
赤っ面の白いブツブツの髪で憎たらしい様相の瀬尾。歌六さんは憎々しさが少ない。ニンが違うのだろうか。様々なお役を見事にこなされてるのに瀬尾に関して私の腑には落ちてこない。千穐楽に要チェックだ。歌六さんの変化も観たい。仁左衛門さんは今更実盛をされたのだろうか?先月の盛綱とよく似たお衣装でお主を助ける為に画策する話なのも似ている。仁左衛門さんには軽い役に見えて仕方が無い。可能なら上方の物か世話物をかけて欲しい願う。六月は封印切、少し楽しみ。まほろちゃんが先月、今月とご機嫌で舞台を勤めてる。母か祖母の気分で観てしまう。日々成長するまほろちゃんについ目を細めてしまう。歌舞伎独特の楽しみ方だね。
上方の至宝仁左衛門さんが実盛をさせるなら兵馬返り出来る若い瀬尾を選んで欲しかったと思う。仁左衛門さんが実盛をするのは久しぶりだ。そういう時には話題性のある組合せがお客様を呼ぶのではないだろうか?
今月の歌舞伎座は御園座ほどでは無いがかなりガラガラ。三等席も空いてると言う。仁左衛門さんが2カ月続けて出演されても演目かキャスティングの妙が無いとちょっと飽きる。如実にそれが現れる。歌舞伎の切符は高い。そこで客席をうめるのは至難の技だ。

愛ちゃんと亀鶴さんの実盛物語の方が面白かったと思う私は天邪鬼かも知れない。大御所が演じるには軽い狂言に思えてならない。

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