新版オグリ 千穐楽を終えて
スーパー歌舞伎セカンドの千穐楽はいつも楽しい。何度もカーテンコールがあり最後のカーテンコールは出演者一人一人が挨拶をする。アクションチーム、劇団チーム、名題下、子役さん、外部からいつものお仲間、今回から新しく入られたお仲間。脚本家、演出家も呼び出されてご挨拶。
四代目猿之助が仲間をとても大切にしている心温まるこの演出が大好き。本来ならここで終わるのだが今回は違った。2階席1列目センターと言う『オグリ』を観るには最高の席でラストカーテンコールの俳優みんなのお手振りを観てると小栗六郎を演じた玉太郎君がこっそり下手に消えた。
え~っ、なんで、なんで!って思っていると「ハピバスデートゥユー」の音楽が流れ玉太郎君がワゴンでケーキを運んできた。司会は浅野忠之さん。
「少し早いですが30日は隼人さん、明日は猿之助さんのお誕生日です」と切り出して「予算の都合でケーキは一つ、花束も一つ」と笑いも入れて和やかに二人のオグリのお誕生日祝いを舞台でしてくれた。隼人君は「30日なので歌舞伎公演がなくいつもお誕生日祝いをして貰えないからとても嬉しい」と素直に感謝の気持ちを述べる。浅野さんに促された猿之助さんは「2年前はこんなロングラン公演が出来るとは夢にも思わなかった。これも皆さんのおかげ…」そして博多座南座のオグリについて熱く語ったが、実は普段こういうサプライズを仕掛ける側だ。人を喜ばせるサプライズは大好きだが仕掛けられるとは思っていなかった様だ。ご自分がしかけられると少しあたふたしてしまう。
演舞場でスーパー歌舞伎セカンド、ロングラン公演、2年前と同じ事が出来た喜びや感謝は述べるが素直にありがとうとは言わない。天邪鬼的な照れ屋さんが可愛い所。猿之助ファンとしては11月25日に一日早く猿之助さんのお誕生日をみんなで祝うと言う夢のひとときを過ごせるなんて盆と正月がいっぺんに来たような歓喜の時間。26日の今もその楽しい余韻に浸っている。
上の写真はスーパーリストバンド最後の場面で舞台と客席が一体となって歓喜の舞を踊る為の必須アイテム。4本つないで首にかけてみた(笑)千穐楽はオグリと同じ5本をつないでネックレス状態で楽しんだ。リストバンドなのでもちろん腕もつけた。
2階1列目センターで観たのは千穐楽が初めて。今まで観たことのないか光景が広がっていた。梅原猛さんの台本を縮める所から始めて1991年に三代目猿之助さん(現猿翁さん)が初演した作品。TVモニターを舞台に置き舞台セットを映像で全て処理したかったそうだ。当時は億のお金がかかると言うことで断念した曰く付きの演出を四代目が完成させた。目の前に広がる、LEDのクリアな映像で白い波、薔薇、1列目の特権?スーパー歌舞伎セカンドの文字、壁に広がるマッピング、激情全てがキラキラの舞台。初演の鏡を使う演出はそのまま生かしてくれたお陰で花道も全部みえる。千穐楽にこのうえない絶景を目に焼き付けられた事は多幸感に包まれ、まさに歓喜。
しかし、私はオグリの内容は咀嚼しきれていない。5回観たが猿之助さんが宗教を歌舞伎にすると言った意味合いは判るし表現したい事も理解出来てるはず、多分。博多座南座と進化を続ける「新版オグリ」自分自身の答えは南座まで持ち越そう。
オグリが含む内容は濃く深い。現代が持つ病巣をいくつもいくつも見せられる。ざらっとした悲しみがぬぐいきれない。私自身が自分の弱さと素直に向き合えないからだろうか?
これは来年まで宿題として持ち越しだな。今はスーパーな千穐楽の余韻に浸ろう。
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