見出し画像

note版オンライン絵画講座 ① 基礎の基礎

アトリエ絵と手代表 樋口研司です。note版オンライン講座と称して講師として思ってるあれやこれやを書き綴っていこうと思います。

第1回目はいきなり真面目な話ですが、基礎の話です。これから絵を始める方に読んでもらえたら幸いです。

趣味で絵を描くことに基礎が必要か

趣味で絵を描くって、実は本当になんでもいいのでは?と思っています。

上手かろうが下手かろうが、何を描いたってあくまでも趣味ですから。
本当になんでも良いし、どんなものでも良いと思います。

でも私の講座の入会希望者は「上手になりたい」と言い

その中のほぼ全員が言うのは、「基礎からしっかりやりたい」です。
趣味で描くにあたっての基礎とは?それって必要?

いつもそこで一瞬考えてしまいます。

はじめる前の最初の話

とりあえず一般的な一つのパターンを書いてみます。

絵を始める動機はさまざまあると思います。

ただ漠然と絵が描きたいと思った、とか、学校で得意だった、とか、
美大に行きたかったけど事情で行けなかった。
はたまた、図画工作が苦手だったからあえて克服したい、など。
そういった場合、最近では情報はいろいろなところに転がっていますので、
まずは独学でチャレンジしてみると思います。

しかし一定の段階に到達すると、それ以降、どうして良いかがわからなくなります。
そして、行き詰まりを感じた人のほとんどは、自分には基礎がないから書けないのだ、思うようになるようなのです。大学や専門学校に行くわけでもないのに、です。
そして、しばらく右往左往し、最終的にいろんな絵画教室を探し、とりあえず現状を打破する為に入会します。

もちろん本を買ったり、Youtube見て真似たりするかもしれませんけど。今回はその話はあえてしません。別の話にします。

講座に入会すると、何はともあれ基礎だからとデッサンやクロッキーから教わります。
専門家が言うのであれば、と思ってあまりよく考えもせず習うのだろうと思います。

ほとんどの講師は手始めにまずデッサンから、とかクロッキーを課題として上げてくるのだと思います。それはなぜかと言えば、基礎だからではなく楽だからなのですが、なかなかそう言う内情を生徒に説明する講師はいないものです。

そういった自己管理に忠実な講師から「絵ってそういうものですから」などと言われたりしながら。
「これは基礎ですから」と半ば強制的に習うことも多いでしょう。
「上手になりたいなら押さえておきましょう」なんて言われることもあるかもしれません。

でも私個人の見解では「やりたいこと」=「絵を描くこと」という方が
はじめにすることはデッサンやクロッキーではないと考えます。

希望や欲求はどんな指導にも勝る

絵を描こうと思った人は、まず第1に自分が何を描きたいかをおぼろげでも構わないので思い描いて欲しい、と強く言い放ちたいと思います。
それは『上手になりたい』という気持ちではなく、
『何が描きたいか?』を考えることが重要です。

私が講師をして20年余りで見えてきた事実に基づく考え方でもあります。

いろいろな生徒のパターンを見てきましたが、やはり、希望や欲求がないと技術や感覚が身に付きにくいのです。
それは本人もさることながら、講師の課題として顕著に現れます。

描く側に希望、欲求のない制作は、何よりも注意点を探し難い。
それは本人の意識の中でもそうですし、教室においては講師の教えていくポイントにも影響を与えてしまいます。
結果的に、描く本人が問題点を理解しづらく、改善しにくくなっていきます。
講師はその注意点の指摘やその後の展望すら曖昧に成らざるを得なくなります。

逆に、描きたいものがあった場合の習得していく速度や密度は何倍も違う可能性があると思います。

上手になりたいからと、とりあえず始めた方は相当頑張っても「1教えて1わかるかどうか」くらいのものでしょうが、希望や欲求ありきで始めた方の場合、頑張れば「1教えて10わかる」可能性があると、考えています。
これは大きな違いです。上達のスピード感もそうですが密度や深度が違ってきます。

もう一つのよく見かける話

よくある話を書いておきます。
『人に見てもらいたい』『評価されたい』『バズりたい』のような欲求や希望を持って始める方もいます。こういう方は、そもそも目的が違いますので、まずそこをちゃんと考えてからにしましょう。『目立つために絵を描きたい』、もしくは、『絵を描いて目立ちたい』というのはあくまでマーケティング的なテクニックの話です。

ですが、テクニックというのはそれが描画テクニックにしても、マーケティングテクニックにしてもある程度、描ける、できるようになって初めて効いてくるものかと思います。何も知らない初心者の状態で掲げる理想としては、少し無理がありますので、その辺り、まずはよくお考えになることをお勧めします。
何度も書きますが、『何が描きたいのか』ということです。

希望や欲求を持った上での基礎とは

目的、欲求、希望など、ある程度の方向性が決まれば、次には晴れてデッサンやクロッキー、スケッチなど簡易的な描画法を試していくよう、お勧めします。

デッサンなら度合い(大まか〜細かなと言うような度合い)、クロッキー、スケッチなら回数を重ねていけばそれなりに描けるようになっていくでしょう。
無意識的に必要なことを見定め、描こうとするからです。

例え上手く描けなくても、何度も挑戦していけば描ける、と考えます。
もし上達を感じられない場合は理想が高すぎるのでは?と思いますし、そんな方にはあまり高い理想を掲げないよう説得したいところです。

理想と希望というのは似て非なるもの

理想が到達点とするなら、希望は指標だと考えます。
理想へ近づくための純粋な欲求は、ガソリンになるかもしれませんが、ガソリンを入れたところでエンジンの質が上がらなければ遠くまで到達できないものなのだと思います。

エンジンの質は技術習得や繰り返し鍛錬する事などを含めたものです。
エンジンは希望(指標)があれば鍛えていくことができるものと思います。
ですから、まずは希望や目的を定めて鍛錬していくことが必要と感じます。
もちろんそれには理想や欲求も必要です。
どちらか一つではうまく回らないと考えています。

講座に通うつもりもなく独学でやってみたいという方は、とにかく目的意識を持って挑戦して欲しいものです。
『上手くなりたい』という気持ちから始めないよう気をつけてください。

『上手になりたい』では、まず続かない

『上手に』はちゃんと目的や希望があれば意味を持つ『気持ち』です。
モチベーションにもつながるかもしれません。

しかし、漠然と『上手に絵を描けるようになりたい』という気持ちだけで始めてほしくないと、正直思っています。

何よりも主語が抜けていますので、本人が露頭に迷う可能性があります。
これもよくあることですが、『何を描いて良いのかわからない問題』は、かなり根が深く、絵画講師では解決できないかもしれない悩ましい疑問です。
昭和生まれの私としては、『それぐらい自分で考えろ』と言いたくなるような問題ですね。

さらに、『上手に』を目標にすると苦痛を伴い成果を得難くなっていってしまいます。
『上手に描ける』は完全にピラミッド型です。スキルを上げるしか方法はなく、独自の感覚や表現方法などは一切入る余地がないくらいにシビアな道だと考えます。

まともな感覚の人では当然、絵を続けにくくなるでしょうし、最悪、嫌悪感を感じる可能性も出てきます。
ほとんどの方々は「そういうのではない、自分の中で上手く描ければいい」とおっしゃるのですが、それこそが完全ピラミッド型なのです。階段を一つ一つ上り、壁を越え、また次の壁を越えていく、そういった作業です。
達成感は得られるかもしれませんが、限りなく自己満足に近い状態がしばらく(20年以上)続くだろうと思います。ですが、もしも20年以上続けられたら、それなりのものになっていくことでしょう。

絵画を教えている身分としては、そうはなってもらいたくないなぁ、というのが正直なところです。あまりにも厳しいので。
ですが、それがいいという方は、ぜひ最低でも20年間挑戦してみましょう。

長くなってしまったので1回目はこれくらいにしておきたいと思います。
ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?