短歌集 どんなときも。収録作品

遺言で「僕は死にましゅ」とか言って、武田鉄矢は死ぬのだろうか。

原作と違った終わり方をしたアニメが、ファンに叩かれている。

チェンソーを使い、厚切りジェイソンをジェイソンが厚切りにしている。

文化人気取りの人が、それっぽいコメントをしているワイドショー

嫌いではないが、勝俣州和のファンは果たしているのだろうか。

布団から足を出したら寒いのに、足を入れたら暑く感じる。

葬式に数珠を忘れてきてしまい、ポン・デ・リングを代わりに着ける。

留置場内で、槇原敬之が『どんなときも。』を小声で歌う。

新人がメモを見ながら、スタッフの扉をロック解除している。

「おしるこ」で辞書を引いても出ないのは、「しるこ」で載っているからだった。

木の葉型チョコが袋に詰められた菓子を、無難な土産に選ぶ。

親がよくつくってくれた玉ねぎのスープをつくり、涙を流す。

数ヶ月ぶりに会う人「痩せました?」
数年ぶりの人「太ったね」

仲良くはない知り合いと道ばたでばったり会って、会話に困る。

候補者が選挙間近に顔を出し、ごたくばかりを並べて話す。

インボイス制度について、知っているフリをしている人だとバレる。

牛乳を廃棄している人たちが、持続可能な未来を願う。

ピノキオの鼻をハサミでちょん切って、本に挟んで押し鼻にする。

ディズニーの経営陣が、夢のない言い争いをして揉めている。

「お荷物」と言われた人が、お荷物の棚に寝そべり、名古屋まで行く。

フレミングポーズを生んだ『ガリレオ』は、リフレミングの天才だった。

「グリーン車なら、寝ころんでオッケーなぐらいのVIP対応にしろ!」

右腕にト音記号の刺青を入れたホストに、指名が来ない。

コテコテの関西棋士が、後手後手に回る勝負を強いられている。

車いす用のボタンを押したって、エレベーターは急いで来ない。

優先座席に居座るヤンキーが席を譲れば、英雄になる。

ヤンキーを雇い、デートの終盤に脇役として登場させる。

痛いとは分かっていても、たんこぶを触ってもらう快感がある。

ピノキオの顔を型取りすることでつくられている、天狗のお面

売れっ子のスタイリストをカットしている美容師に、カットされたい。

ヒロインのスリーサイズを、公式が勝手に暴露しているアニメ

アニメ絵を起用していたポスターが炎上を受け、取り外される。

板チョコを女子と二つに分けている小学生の公園デート

イートインブースで休む老人が、ボタン電池をテーブルに置く。

ジムなのに、中ではソフトクリームが食べ放題の快活クラブ

坂道にあるドーナツの穴たちが、桜の色に変化している。

矢印の下は「下がる」のはずなのに、上が「まっすぐ行く」の案内

園外で作業している男性に、園児が叫ぶ。「頭ハゲてる!」

「駅を出て西に進む」と書かれても、西がどちらにあるか知らない。

ロウソクの代わりに付けた風船が、ケーキを少し宙に浮かせる。

「脳内でコサックダンスしている」と、喜んでいる仏文教授

公衆のトイレでエッチする人は、トイレの臭ささえ気にしない。

通路側なのに机が出してあるから、手洗いに行けないでいる。

メガネ屋の店員になり、コンタクトレンズをはめて接客したい。

アイドルのペッパーミルが、男性にひわいな意味で解釈される。

アパレルの店員さんが、ブランドの服を社割で買わされている。

本当は教えたくないけど、大切な人には教えたくなるお店

犯人が犯人とバレそうな時、証拠の有無をキレながら聞く。

「冒頭の二分三十九秒を、YouTubeにて公開します!」

半額のシールを貼りに来る人がいつ来るのかを、近くで見張る。

「この街の玄関」というタワマンが、オートロックで入れてくれない。

左手に持ったミモザを撮るために、アゴを二重にしている女性

(あの人にチラシ配りをしよう)って、チラシ配りのこころが見える。

足跡を自分のものと気づかずに、追いかけているくまのプーさん

戦争をしている国に、「必勝」と書いたしゃもじをプレゼントする。

満員の電車でひとり、イヤホンの中で楽しむ『マツケンサンバ』

リクナビをリストラされて、リクナビでしごと探しを開始する人

「乳首まで見える巨乳の写真」って言われ、力士の写真をもらう。

見逃しをするバッターも、女子アナの目を見逃しは絶対しない。

赤ちゃんは十月十日で出てからも、二度目の十月十日を過ごす。

直撃後、「ファールボールに注意してください」と聞き、あの世へと飛ぶ。

マウンドで守備のタイムを取るときに、外野手たちは輪に入らない。

担任の教師と同じ名の人が、盗撮ペンをレビューしている。

ピノキオに嘘をつかせて、鉄格子越しに置かれた鍵束を取る。

家庭的だと示すため、タップルで子どもとうつる写真の男

裏面に透けてうつったタピオカを、乳首代わりにしているマンガ

本当は一万人目ではないが、美系家族が選ばれている。

モニターを眺め、ワインを飲んでいる富豪が主催するデスゲーム

空いている個室に入ることもなく、立ち小便を待つ男たち

炎上でYouTuberが引退し、VTuberに生まれ変わった。

ドネーション制度は、いくら支払えば良いのか分からないから困る。

二年ほどテレビを離れ、ほとぼりが冷めるのを待つ小物俳優

三分に一本売れるはずだったビールに、誰も見向きをしない。

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