短歌集『友だちはもう死んでいるのに』収録作品

 
進化するべきだったのか、ピカチュウの頃の写真をライチュウが見る。
 
タクシーの後部座席に付いている画面に映る藤原竜也
 
血圧を測るときだけ、血圧が上がってしまうような気がする。
 
食べる人「東京ばな奈見ぃつけたっ！」
東京ばな奈「見つかっちゃったっ……！」

殺したい人がいるから、密室にするトリックを考えておく。
 
水槽で泳ぐｂｅｆｏｒｅを眺めつつ、提供されたａｆｔｅｒを食う。
 
(船越が崖に呼んだということは、犯人だって思われている……？)
 
最初から方向性が違っても、交わる点が一度生まれる。
 
十五分しかない休み時間でも、ドッジボールをしに外へ出る。
 
バレー部が、ドッジボールをレシーブで一度浮かせてキャッチしている。
 
断捨離のエキスパートが、不祥事でテレビ界から断捨離される。
 
Ｃメロが分からないのにカラオケで入れてしまって、途中で消した。
 
裁判を盛り上げるため、ＤＪが傍聴席で手拍子をする。
 
反省をしない被告にムカついた裁判長が、木槌で殴る。
 
靴下が裏返しだということに、お店で靴を脱いで気づいた。
 
中指にギプスをはめた友だちが、ファックサインで写真に映る。
 
バッティングセンターに行き、十打席全て三振記録をつくる。
 
「仏滅に婚姻届出してみた！」再生数が１２の動画
 
大縄の練習をするため、壁に縄を結んでひとりで回す。
 
ユニクロの次に向かったＧＵで、(こっちの方がいいじゃん……)となる。
 
幽霊が出る家にいた友だちに、「お憑かれさま」と言ってねぎらう。

ババ抜きの最後の方で、ジョーカーが二枚入っていたのに気づく。
 
よい子とのルール
しんごうむしをするときは、さゆうをみてからわたる。
 
見るからにＩＴ系じゃない人が、映画『ＩＴ』のポスターにいる。
 
犯人を書き終えたので、エンディングノートをできるところまで書く。
 
友だちの実家にあかりがついている。友だちはもう死んでいるのに。
 
(数学をもっと勉強しておけば……)
２ｎ＋１回思う。
 
カフェインの翼をさずけられたあと、カフェイン切れでイカロスになる。
 
会釈して無視されたから、音楽のリズムに乗っているフリをする。
 
「カステラを棺にして」と遺言を残した人が、峠を越した。
 
病院の枠にはまった病人が、枠にはまった死に方をする。
 
消灯のあともテレビが点いている、クルーズ船のキッズスペース
 
「好きな店でした」と、店が閉店を告知してから久々に行く。
 
「二十秒以内に食べてください」と、京都の団子屋に急かされる。
 
「みんなには内緒だよ」ってＤＭが晒されている小物タレント
 
ワイプ用驚き顔を見せている小島瑠璃子のようなあざとさ
 
いつからか「水素水」って単語さえ言わなくなった藤原紀香
 
老人に優先席を譲ろうとしたら、断る老人だった。
 
「生理前、女性は恋に落ちやすい」
婚活中の人に言われる。
 
「人脈が広がりました！」
セミナーで名刺交換ばかりする人
 
「カービィとワドルディって、仲が良い営業をしているだけだよね」

八ツ橋のキーホルダーが付いている、女子高生の通学カバン
 
「死にたい」のツイートをエゴサーチして、優しいフリで寄り添ってくる。
 
「イタリアの熟女のような香り」って褒め方をする仏文教授
 
方舟に誰が乗るかを、取組で決めようとしている力士たち
 
「ちゃん」付きのあだ名を持っている人のことを、「〇〇ちゃんさん」と呼ぶ。
 
バター派とマーガリン派がケンカしているのを、小倉派が止めに行く。
 
「第１子誕生！」という、第２子を前提とした東スポの記事
 
吉野家の店員をしていた人が、吉野家の外へと出ていった。
 
クレジットカードの暗証番号を見ないアピールするレジ係
 
生物の教師が、「叶姉妹って三人いたんですよ」と話す。
 
終電を逃したあとも、ひとりだけベンチに座る三ツ矢サイダー
 
無事故・Ｆ・不二雄が５年頑張って、やっと手にしたゴールド免許
 
久々に観ようと思い開けたのに、ＤＶＤが入っていない。
 
『はじめてのチュウ』を熱唱する友は、はじめのチュウをしたことがない。
 
『全自動タマゴ割機』を買ってきた波平に、そんたくするマスオ
 
コンタクトレンズをはめた状態でメガネ屋に行き、試着していく。
 
ＵＦＯに吸い上げられている時は、どんな気分になるのだろうか。
 
Ｙシャツを着ると乳首が透けるから、バンドエイドで突起を殺す。
 
鼻毛処理したら、笑顔ではみ出していないかどうかチェックしておく。
 
休憩で入ったはずのホテルから、休憩せずに出てきた二人
 
プリクラの落書きをする女子たちを、外でただただ見る男子たち
 
カニ鍋の前菜として、カニカマのサラダが先に提供される。
 
ギロチンで身長を計測したら、同じ高さが二人生まれる。
 
正社員として入ったはずなのに、過ちばかり犯してしまう。
 
チカンよけとして、「瀬戸内寂聴」にエアドロップの名前を変える。
 
タメ口で話していいか聞くときに、「いいですか？」って敬語を使う。
 
マネキンに目隠しをさせ、下着しか着せてやらないウンナナクール
 
夕飯を何にしようか、試験中考えている試験監督
 
「助けて」がずっと言えないカンゾーに気づいたときは、手遅れだった。
 
カラオケの音漏れがするスナックの向かいに、墓地が広がっている。
 
冷やされてチョコが固まり、四枚もくっついているコーンフレーク
 
寝室にティッシュを置いているマスオさんに、ＰＴＡがうるさい。
 
前住んでいたマンションのベランダに、知らないシャツが干されてあった。
 
しんちゃんの火遊びによる爆発で、野原家が跡形もなくなる。
 
数センチだけ、トイレットペーパーを野原ひろしに与える息子
 
学生がのれんの前で、入るのか入らないのか楽しんでいる。
 
いつもいたビッグイシューのおじさんを、いつもの場所で見かけなくなる。
 
ガチャガチャの故障でガチャガチャできなくて、お店の人に手渡しされる。
 
避難用ボートで避難する人が笑みを浮かべる雑誌広告
 
「十点も差がついている、八回のソロホームランぐらいしょぼいね」
 
赤ちゃんを笑わせるためカズダンスしているママを、遠巻きに見る。
 
「おのこしはゆるしまへんで！」
こめかみに白いテープを貼ったおばちゃん
 
日頃から一人称を俺にして、オレオレ詐欺の練習をする。
 
原液でカルピスを飲む人だって、自宅にお邪魔してから気づく。
 
「ノーパン」と見間違うよう、「ノーバン」と表記している東スポの記事
 
あったかい缶コーヒーを手で振ると、持てないぐらいあつあつになる。
 
声優の人がセックスする時は、声をつくっているのだろうか。
 
すぐ終わる出来事なのに、タクシーが用意している「支払」表示