短歌集『おてがみ』収録作品

音楽は死ぬと聴けなくなるけれど、生まれた音は死んでも残る。

誕生日ソングを歌う人たちの時間が、「ディア」で一瞬止まる。

パンクしたロードバイクを漕いでいて、いろんな人に抜かされている。

「あいつマジ、脳みそ一個しかないわ」隣の席のガールズトーク

メガネ屋の店員さんは、休憩でメガネを取っているのだろうか。

下着屋の店員さんは、勤務時に下着姿でいるわけじゃない。

Googleの機能「消しゴムマジック」の宣伝をするフワちゃんを消す。

一月の中旬頃に、門松を片付けている人を見かけた。

寄付をしたことを宣伝してほしい気持ちで、寄付をすることにする。

QRコード決済する時に、目立とうとして輝くスマホ

立ち位置で、黄色い線の内側は、黄色い線の外側になる。

初耳の「ティール組織」を知っているふりをするため、うなずいておく。

「あと一歩先へ進もう!」男子用トイレの紙が励ましてくる。

「見といてね、腕一本で自動車を止めるよ」と言い、タクシーを呼ぶ。

オンライン座禅を受講して、電子機器にまみれた日々を忘れる。

「交番はどこですか」とは、交番のおまわりさんに質問しない。

合計が、「話し方+聞き方」で18割になっている本

努力した結果受け取る賞状が、「以下同文」で片づけられる。

宣伝で「人には人の」とは言うが、同じ薬を飲まされている。

朝九時に工事現場のハンマーが、部屋のB'zに裏打ちでノる。

「嫌われる人に必ず嫌われる」 みんな誰かのパクチーだった。

故障したロボット《レディー・ガガガガ》が、「ボボン・ディスディス・ウェウェイ」と歌う。

「またいつか話しましょう」と言う人と、いつかがやって来たことがない。

これまでに買ったビニール傘の数なんて、覚えているわけがない。

目が合って1秒経たず、(こいつには用がないな)と逸らされている。

人件費削減のため、イクラちゃんボイスは過去のものでまかなう。

エンディング曲の最後に、サザエさんたちのケンカで揺れている家

インディアンポーカーをして盛り上がるキン肉マンのおでこが♥

閉業の10分前に、スーパーで「火垂るの墓」が流れてしまう。

クロネコの車でサンタクロースが、深夜0時に荷物を運ぶ。

12月26日、メルカリでジュエリーを売るサンタが増える。

婚約時、アツアツだった関係が、4℃まで冷めてしまった。

「腹痛に、まさつゆまる」と聞こえたが、おそらく正露丸だと思う。

コメントを動画に残すとき、人は真顔で「草」とタイプしている。

「アクション!」と、アニメの映画監督も言いたいときがあるのだろうか。

接触がなくても、こけたフリをするアルゼンチンのサッカー選手

「ロリコンとヤりてぇ!」という落書きを書いたお前がたぶんロリコン

「詠まぬなら詠むまで待とう家康」と、考えていたのがホトトギス

若かりし頃のバルタン星人は、美容師になる夢を見ていた。

インテリア家具メーカーの工場で、鹿の頭が切り落とされる。

顔ハメのパネルに付いていた顔が、どこに行ったか気になっている。

完璧なベッドメイクがされているせいで、シーツが取り外せない。

10センチ上の世界か20階下の世界か、どちらで死ぬか。

録画した生放送を観る時に、LIVE表示が消えてくれない。

「4名でテーブル席をご希望の、ゴチソウさま」と、店員が呼ぶ。

10才のキド少年が進化して、55歳のオーキド博士

バーチャルの世界に生きるアバターに、ガチャで当たったGUCCIを着せる。

今日死ぬとしたら、何人葬式に来てくれるのか気になっている。

「その時が来たらまかせてください」と、葬儀会社の人に言われる。

ヨギボーの店員さんが、ヨギボーにもたれかかってあくびしている。

「ユダヤ人心理学者が衝撃の告白!」という動画広告

「20歳以上で舌が白い人、必見!」という動画広告

砂浜で朝青龍がダッシュして笑う動画を見せられている。

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