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「映える時代」に「映えない写真」を

世はまさにSNS時代。
美しい景色や映える写真が簡単にネット上で閲覧でき、拡散され、いつしかそのスポットは大衆の知るところとなり、大勢の観光客がその場所へと押し寄せる。
そして皆一様に、第一人者のコピーのような、無個性に没した写真を撮影・収集しては自己満足するのである。

没個性的な写真を撮って何が楽しいのか?
天邪鬼な私はいつもそう考える。
人と同じでは、気が済まないのだ。
もちろん、他者と時間を共有するような場合は、そういう写真を撮ることもある。
しかしながら、自分自身の作品として撮影するときは、そうも言っていられない。
自分だけの視点を見つけて撮るべきなのだ。

このようなネットを中心とした日本特有の没個性的な大衆現象に対し、私は勝手に「映える時代」と名付けた。

そんな映える時代に抗って、映えない写真を撮っているのが、私である。笑

そして、皆さんにも映えない写真を知っていただき、撮っていただきたいと思っている。
そのために、このnoteを執筆している。

※映えない写真という言葉は、没個性的な映える写真の対義語として個性的かつ独自性のあるものを指して用いていますのであしからず。

素晴らしい撮影ができたと胸を張って言える時は、大抵の場合、人が撮らないような場所で、自分だけの視点を見つけ、美しい写真が撮れた時だ。そのような写真は、SNS映えは決してしないが、美しく、個性的な写真だと思っている。
私は専ら風景を撮っているので、風景撮影で私が心掛けていることを説明しながら、映えない写真とは何かを例示していきたい。


脱映え写真のファーストステップ
撮影スポットで、自分だけの視点で撮る

映える写真から脱却するためには、観光地や撮影スポットであったとしても自分の視点で撮影することを心がけることが第一段階となるだろう。
それは、例えば、構図を工夫するであるとか、撮影の手法を工夫するであるとか、である。
まずは私が撮影した映える写真から紹介していこうと思う。

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撮影スポットとして有名な、永代橋からの屋形船の光跡と高層ビル群を撮影した写真だ。お気に入りではあるが、みんなここで撮っているので考え所だ。
私の工夫は、モノクロフィルムで長秒露光という手法を使ったものであるということだが、個性的であるかと問われればいまひとつ。
撮影した結果が他者と類似するもので有れば、それは個性的とは言えない。

そんなことを考え始めてからというもの、観光地や撮影スポットで私が撮影する時は、特殊な天候にある場合が殆どだ。

特に好きな天候は霧だ。
霧が与えてくれる視界不良が、普段なら写ってしまうものを掻き消してくれる。そうした天候は、その時ならではの一期一会な写真を撮影させてくれる。

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この写真はもう何度も出してきたので食傷気味かとも思うが、お気に入りの写真だ。
撮影スポットではあるが、天候とシャッターチャンスを味方につけたいい写真だと思っている。スポットでの撮影だとしても、こんな写真なら許容している。

特殊な手法に関して言及するならば、私は長秒露光をよく行う。海や湖で行う長秒露光がもたらす結果は、とても面白いものだし、他者はあまり追随してこないというのも理由の一つだ。

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映え写真からの脱却
自分だけの撮影スポットを見つけ、個性ある写真を撮る

皆さんにはこれを実践していただきたいと思っている。
かつての私は、インスタで見かけた美しい土地を訪問して写真を撮るだけのどこにでも存在している風景マンだった。
今は胸を張って違うと言えるだろう。
私は、モノクロの風景を撮影する風景マンとなり、各地を旅しては、新しい撮影場所を見つけ続けている。
近場でも同じだ。都内ではストリートスナップを撮影することが多いが、常に新しい場所に行き、新しい発見やスポットを得て、マップにマークする作業を行なっている。
もはや国内は行ったことのない場所の方が少なくなってきたくらいだ。

総括すると、常に自分の視点で、この場所で撮りたいという判断をすることや、何度も同じ場所を訪れて、同じ場所であったとしても、新しい発見をし続けるというのが肝要だ。
最近は長野の訪問が多かったが、ガスることが多く、その場限りの撮影を数多くこなせたというのが大きな理由だ。
実際の作例をいくつか紹介する。

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霧が与える幻想的な風景、限定される視界。こういったものは本当に特別だと思うし、モノクロでは様になる。
どう考えても映えない。だが、これがいい。美しい写真だと自分自身が思えるものだ。だからこれでいい。

これらの写真は全て撮影スポットではなく、偶々通りかかった際にこの場所は良い、そう感じて撮影している。撮影時には自分のそうした気持ちを大事にして撮影して欲しい。

是非皆さんも、自分だけの視点で以って、写真を撮影してください。きっと、これまでと異なる世界が見えるはずです。映えない写真の世界へ、ようこそ。


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