過去を想い、現在を見つめる

先日、第44回船橋市写真展に応募した写真集”Hokkaido”で北井一夫賞をいただきました。
写真集の後書きとして記載した「過去を想い、現在を見つめる」の内容を一部修正、加筆し、私の写真観をここに残します。


窓から遥か下を覗き込んで望む景色が大海原から海岸線へと変わり、雪景色の中に整然とした黒く細長いラインが認められ、自動車が走っていることがわかるまで地上に近づくと、帰ってきたことを実感する。

北海道外に縁もゆかりもない私にとって、僅かな期間の帰省と撮影が、東京に住み始めてからのこの5年間の生きる目的になっていると言っても過言ではないだろう。

雪原で、凍結した湖の上で、強風が吹き荒ぶ海岸で、雪に吸われ無音に思える暗闇の中で星を見上げ、不意に隠れた月の薄らとした光があたりを優しく照らすときも、厚い雲が街の灯りを乱反射し、あたり一面がオレンジ色に照らされる夜も、相変わらず、飽きもせず、自分が見つめた北海道の風景を撮影し続けている。

家庭の事情もあり、社会に出るまでは自身の生活圏内から殆ど出ることのなかった私は、新しい風景を求めた。旅をすることが私にとっては重要で、見たことのない景色に感動し、それを記録することが写真を始めた理由だったように思う。

北海道を探索し、日本各地を巡り、自然風景、街と人、美しいと思える様々な光景を写真として集めた。

新しい風景は未だに求め続けているが、歳を重ねて振り返る過去が多くなるにつれ、記憶に紐づく懐かしいと思える光景を求めて撮影することが多くなったように思う。

自己と結びつけた風景写真を提示することはある種困難に思えるが、過去と現在を紐づけ、撮影の動機を語ることは可能のように思える。
その必要性や提示方法は今後の課題であるものの、一先ず動機を踏まえた撮影に取り組んでみるつもりだ。

飽きることなく自分が見つめた光景を撮影し、自分自身と向き合い続けていきたい。


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