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academyまでの180日間 day14 中編

着陸した飛行機から降りたのが4時、新潟駅行きバスの発車は5分後である。猛ダッシュで向かうも、目的地までのトータルの所要時間を急いで脳内計算すると、これじゃあ間に合いそうにない。バス停の手前に並んだタクシーの運転手に至急医学町ビルまで行くにはと尋ねると「バスよりこっちの方が断然早い」と言うので、すぐさま乗り込みGO。

オペレーターに住所を伝え、ナビをいれてもらうシステム。おっちゃん、医学町ビルまでなかなかのスピードでぶっ飛ばしてくれた。ほんとにありがとう。厚くお礼し、タクシーを降りた。

到着したビルには人の姿がたくさんあった。そして窓越しに恭平さんが見えた。どきどきの階段をのぼる。わ、すぐそばにいらっしゃる……!すでに整理券配布が始まっており、恭平さんお手製の最後尾札をかかげて並ぶ。恭平さんから直接券を受けとる。目の前にいるよ、すごい……。スタッフさんから「トーク開始10分前に再集合」との指示。あわてて来たので呼吸を整えながら、部屋を歩き回って絵と人を眺める。

恭平さんの絵は空間をほんとにやさしくあたたかくする。眼がきれいな猫の絵。遠くからでも惹き付けられる雪。海面の光がきらめく海。アングルで魅力が増してるゲンくんの絵。くすんだ青色がきれいな抽象画。わたしは、持っては帰れないけれど、所有欲はあんまりわかない。この世に存在してるだけで幸せになる絵たちだ。

お客さんはおしゃれな人が多かった。喋らなくとも、穏やかでやさしい人が多いのがわかった。とはいいつつ、喋ってみたいなぁと思いながらうろうろきょろきょろしていたら、すごいべっぴんさんな女の子が話しかけてくれた。それがC.Aちゃんだった。彼女が話しかけてくれて本当に本当によかった。わたしの人生最高の素晴らしい1日は、C.Aちゃんとの出会いから始まったのだ。

トークの準備のためお客さんはいったん建物の外にはけた。そこで出会ったのは、親子で来ていた新潟出身のお母さんと娘さん。娘さんの方が双極性障害を持っていると聞いて、鬱と躁の話を色々と聞かせてもらったり、わたしの鬱の時の過ごし方なんかを話したりした。恭平さんともお話しして「~してみたら?」とアドバイスをもらったと言っていた。
トークのとき、お二人がゆったりとした席に腰かけて恭平さんのトークを聴いているのを見て、「ああ、恭平さんが新潟に来てよかった」と思った。きっと新潟だけじゃなく、全国で恭平さんに実際に会ってお喋りするのを待ち望んでいる人がいるんだろうな。今回の企画の方にも感謝せねば。

わたしは恭平さんの目の前から3列目辺りの小さな椅子に腰かけた。でも思ったよりも恭平さんに近くて緊張したので、左にあった小さな空間に椅子を移してそこにすわった。となりには日に焼けた男の人が優雅な椅子にリラックスして座っていた。その人はヨシさん。ヨシさんとも喋った喋った。わたしの恭平さん愛の語りを、仏のようなやさしい表情でうんうんと聴いてくれてとてもやさしかった。そしてヨシさんのお友だちのアキさん(恭平さんの大ファン)は、まあほんとに一気に距離縮まるとかでもなく「あ、わたしのママだ」と直感した。しかもママ呼びしてもいやがるどころかぎゅうぎゅうにハグしてくれて、「今日泊まるところはママのとこだー!」となった。でも距離が遠くて行けなかったんだよね。でもママと恭平さんとスリーショットが撮れたのでわたしはもう大満足。ママも念願かなって「三月の水」が聴けて大満足。恭平さんにも「ママとパパができました」と報告したよ。
帰ってきてからもラインしてる。次の新潟旅はママの家にホームステイしたいななんて勝手に思ってる。

スリランカの話、お母さんについての話、歌を作るときの頭の中のイメージのことなんかを喋りながら合間に歌を歌う恭平さんからは、終始なつかしい匂いがした。ずっとそれがなんの匂いなのか思い出そうとしていたのだけど、結局出てこなかった。ギャラリーの部屋の雰囲気とも相まって、なんだか小学校の図工室に戻ったような気分だった。ふと、小学生のときからすでにわたしは恭平さんと出会っていたんじゃないかという気がした。
恭平さんは恭平さんじゃないのかも知れない。なんていうか……素直な人すぎて、人間、というよりもはや感覚や概念、匂いみたいな見えないものに感じるときがある。幼き日のわたしの素直な感覚の匂いが、いまここでも香っている。そんな気持ちになった。

トーク準備の前、少しだけ恭平さんと二人でお喋りした。勇気を出して話しかけにいくと、「会ったことある?」と聞かれてびっくりした。「会ったことはないですけど……」
academyにいきたくて、もう準備してて、本出したくて、このタイトル使っていいですか……。あんまり目を見れなかったけど、言いたいことは言えた。恭平さんは「好きなようにやりなさい」と言ってくれ、握手を求めると応じてくれた。最後に「頑張ろう!」と鼓舞してくれた。喋れた……!
そう、お喋りはこれにて終わりだと思っていたのだけど、トークイベントの後、なんとなんと一緒に打ち上げに行くことに。後編につづきます。

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