academyまでの180日間 day21
6時半の起床とともに夜行バスが大阪に到着。「いってきます」してきた人たちだらけの電車に揺られ、わたしは「ただいま」の家をめざす。
帰りの電車のなかでこんなことがあった。
横長のシート席、ひとりのおじさんが目の前の空いてる席に座らず、選ぶようにしてわたしのとなりに腰かけた。反対側をちらと見ると、ひとつ空いて背の高い、大きい女の人が座っていた。女の人は険しい目でおじさんを見てからわたしを見て、誰も座らなかった席を見つめながら長い背をぐうっと曲げるようにして深く座り直し、目をつぶった。
わたしはすぐにその空席に移りたいと思った。でもそこには仕切りがあってお尻をずらすだけでは行けなかったし、女の人が険しく見えたのはわたしの勝手な想像かもしれない。でもいち早くこの席をなにかで埋めなくてはと焦り、迷いに迷って自分のリュックを置いた。ちょうどポッケに小さなテディベアをさしてあって、その子がとなりに座ってる、という風に女の人がとらえますようにと願った。
女の人は次の駅に着くと、誰よりも速くホームに降りていった。わたしはどうするべきだったのかわからない。どうもしない方がよかったのか?なにも考えなくてよかったのかな。
喋ったこともない人のことなのに、いちいち気にかかってしまう。感じてしまう。そんな自分が誰よりも差別的でやさしくない人間だという気がしてしまうのだ。
おんなじ電車に揺られて、今からはバイト。家に帰って両親に一通り旅のことを喋り、お風呂に入って2時間ほど睡眠。バイト先にお土産を買ってくるのをすっかり忘れてしまって残念。でも久しぶりのバイトはうれしい。わたしの発注した本、売れてるかしら。……わたしの留守中に一冊売れていて嬉しかった!
今日はこんなこともあった。
退勤後、消費期限の迫った焼き菓子をいただいた。わたしは腹ぺこだったので早速駅のホームで食べようと思い、パッケージ部分だけ先に外してゴミ箱に入れ、「おつかれさまです」と出ようとした。するとそれを見たスタッフさんたちが「信じられない」「面白い」と言って笑った。そのパッケージ部分がそのお菓子の一番注目すべきかわいい部分で、作り手のことを思えば大事に扱うべき部分だったらしい。「早く食べたかったので」と素直に伝えると、その食いしん坊ぶりについても笑われた。今後のわたしのためを思って何かアドバイスもしてくれていたのだけど、その間も「早くホームでこれを食べて帰りたいのになあ」と思っていた。やっとホームで一人になると、あっという間に全部食べきった。焼きたてのようなやわらかさとしっとりさ。二人が息を合わせるかのようにわたし一人を笑っていたこと。すこし心がもやもやした。なんだろうね。
駅についてから現academy生の人に連絡を取った。涼しかったので、外にいたまま電話した。3コールほどですぐに出てくれ、緊張で胸がばくばくしたけど、穏やかな声が返ってきたのでこちらも落ち着いて話し始めることができた。電話口で聴く現地の話、なんだか楽しさがじんわりと広がっているようで、不安もあるけれど「早く行きたいな」と思った。住まいや環境について聞きたいことはほとんど聞けたので、次はやっぱり現地に行って自分の体で感じたり確かめたりしたい。8月目指して、貯金計画をたてなくちゃ。
まず目先の予定は、絵の依頼仕事だ。
明日からまたリズムある生活と、絵の練習を再開しよう。
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