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夜は眠れず散歩道 2O24.O6.O8 essay

最近はからだの痒みで夜中起こされることが多い。薬をぬっても効かず、保冷剤で冷やしても効かないときはほんとに参る。
ちくちくと見えない誰かに体をつつかれてるみたいで腹が立ってくる。怒っても疲れるので、痒いときは「かゆい!かゆくてつらい!」と口にしながらかく。あんまり爪を立てないようにして、かく。

昨日は10時に寝て、1時半に痒みで目が覚めた。そこからはまったく眠れず、部屋に光が差し込んでくるまで起きていた。
3時くらいになるともう窓の外では鳥がさえずっていて、4時半ごろに家の犬たちが起きはじめる。
2頭のうち年上のまるちゃんが「わっ。わっ。」とほえはじめる。扉の開く音。母のベッドにもぐりこんだのか、静かになる。

もう眠れそうにもなく、痒みもずいぶんおさまって頭もしゃきっとしていたので犬の散歩に行くことにした。年下の方のてんくんはいつも通りお留守番。朝は家でゆっくりしていたいらしい。てんくんはすがすがしいくらい気持ちに素直に生きてる犬。おしっこも好きなところでするし、食べたいものしか食べないのだ。

まるをつれて、近所の散歩コース。朝日はまぶしいけど道はかげっていて、そこを歩くと涼しい風が吹いて気持ちよかった。
まるはずんずん歩く。どんどんスピードをあげてみじかい脚で前へ進む。そのそばをゴキブリがちゅるりんと走る。もうそんな季節。干からびたみみず、小さいゲジゲジ、あ、まだがんばって動いてるみみずもいる。あたり一面はでっかいブロッコリーが立ち並んでるみたい。緑がもりもりと生い茂ってる。

散歩コースをはずれてばあちゃんちに寄る。思いつき。クルマ通りがおおくて事故のよくある横断歩道も、朝はすかすかですっきり。てってってっと渡り、まっすぐ進む。まるはばあちゃんの家を覚えてる。玄関で大きな声でばあちゃんを呼ぶ。
「はーーいーー」特に驚きもせず、という調子でふつうの返事が返ってくる。
「いま朝ごはん食べててん。あんたえらい早起きやなあ」
「そやろ、はよおきてん」
ほんとは寝れずに朝を迎えただけだけど、ここにきたらそんなことは別にどっちでもよくなった。

ばあちゃんはおもしろい。ばあちゃんは人の話を聞いてるんだか聞いてないんだかさっぱりわからない。うちにまるが来たときから、「なんて名前?」ときくばあちゃんに「まるやで」と答えてきたのに、一年後くらいに家によく来るのら猫に"まる"という名前をつけて可愛がりはじめたのだ。
「あんたんちの犬、なんてゆうん?」「まるやで」「おばちゃんちの猫もまるちゃんやで」「一緒やな」「すごいな」
ずっと最初っからまるって言ってたのに、不思議すぎる。まだ認知症のきざしはない。頭から抜け落ちるのはまる(犬)のことだけらしい。

ちょうど朝ごはんをもらいに来てたまる(猫)とふれあって、ばいばいした。3種類くらいブレンドしたエサをもらっていた。これを1日3回あげるらしい。ばあちゃん自身も痩せの大食いである。

うちに帰って、もう一度布団に入った。今度はゆっくり眠れた。起きて母の部屋へ行くと、てんくんはまだすやすやと寝ていた。
わたしはてんくんになりたいと、時々強く思う。

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