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たけとと奈良旅 2O24.O6.12 essay

3日前に奈良へ行った。坂口恭平"日々展"での出来事が自分の中で大きすぎて、その日は奈良観光の感想まで書く余裕がなかったけど、今日はもう幾分落ち着いたのでゆっくり書きたい。

たけとと奈良に行くのは今回が初めて。一週間前に電話した時わたしが「坂口恭平さんが奈良に来るらしくて……」とこぼしたら二つ返事で「行く?」と言ってくれて、たけとの運転で連れ行ってくれることになったのだ。"日々展"以外には特に目的を決めておらず、行きの車の中で「せっかくだし奈良公園にもいこう」と決まった。

ガソリンスタンドに寄ってから高速に乗る。一つ目のガソリンスタンドは閉鎖してるのに気づかず鉄のポールの間をくぐり抜けて侵入。タッチパネルは触れても真っ暗なままで、ていうかそもそもスタッフすらいない。営業してないことを知り、そそくさと退場。次のところで入れて、高速に乗った。わたしたちの車旅はいつも山あり谷ありだ。

奈良までは思ったよりも早く着いた。一般の料金所、やさしいおっちゃんから「お気をつけて」の言葉をもらって高速を降りる。ここは天理。奈良は田んぼが多い。田んぼ景色を横目に北に進むと、急に鮮やかな緑が増える。奈良公園だ。鹿だ!ふたりで興奮するも束の間、今度は駐車場探しに難儀する。観光客も予想以上に多く、しばらく探したのちに春日大社のところに止めることができた。

車の中で少し休憩しようと思ってシートベルトを外していたら、駐車場の誘導案内の人と目が合う。たけとは「あの人、今なら他の車も来てへんし早く車から降りていいよって言ってくれてるからとりあえず早く降りよう」と急ぐ。
(誘導係って車から降りるタイミングまで誘導するっけ……?)と不思議に思ったけど、たけとがあんまり真面目な顔でそういうので、もしかしたらそうなのかもしれないと思って車を降りる。時々不思議なことを言うたけと。

外は雨。マイナスイオンが気持ちよく、半袖だとやや肌寒いくらいだった。深いみどり、黄色味が強いみどり、うすいきみどり。天高く伸びた樹木や、うねうねとした縄のような樹木。蔦がからまっていたり苔が生えていたり小さな芽たちがぶわっと顔を出していたりしている。それら全部が雨にぬれ、しっとりとした空気がしずかに包んでいる。

少し歩いたところに、お粥屋さんを見つけた。甘味とお茶もあるようなので、入ってみることに。ちょうど空いたばかりの席に座り、たけとはよもぎ団子とお茶、わたしは柿のもなかと抹茶。途中、隣の中国人のおばちゃんと目があって、そらせずにずっと見つめ返していたら後でたけとに「見すぎ」と注意された。おばちゃんの目は、なんだか慈悲に満ちているようだったので、つい。たけとのよもぎ団子はちょうど三つあって、千と千尋のカシラみたいだった。もなかはとても美味しかったので、一箱家族のお土産にも買った。

お茶の後は雨が少しおさまっていて、下の方へ歩いてみることにした。少し行くと鹿も人もたくさんいる広場に出た。せんべいを買ってふたりで分けていると服の後ろをぐいと引っ張られ、振り向くと鹿鹿鹿鹿。「待て」を聞くはずがない鹿の口に、おろおろと後退りしながらせんべいを差し出す。鹿たちは頭を上下に揺らしながら真顔でじりじりと近づいてくるので、カオナシみたいだ。

鹿のふんを踏まないように気をつけたり、うっかり踏んでしまったりしながら東大寺南大門まで歩いた。金剛力士像はずっしりとした迫力を放ちながらも、軽やかにそこに立っているようにも見えた。中には入らず、左の方に広がる丘を散歩した。すんごいかわいい小鹿がいてメロメロになった。近づいてせんべいをあげてみたけど食べなかった。仕草のひとつひとつがすんごいかわいかった。

来た道を駐車場まで引き返していると、道すがら、これまた引き込まれる佇まいのキッシュのお店を見つけた。昼食が甘味だけだったので、中に入って食べることに。中はさらに魅力的な空間だった。紅茶とキッシュをそれぞれ頼んで、お座敷に上がる。
たけとは熱い紅茶を、スプーンですくって飲んでいる。ブラウンシュガーの角砂糖を「これ何?」という。「砂糖やで」と答えても手をつけずにじっと見つめている。「紅茶に入れたら?」と聞くと「いや、見てるだけでいい」という謎の返事。ときどきシュールで理解不能なたけと。

わたしが食べたキッシュ、蟹と春野菜が入っていて、上品な味わいでとても美味しかった。

キッシュを味わっていたら最大のお目当ての"日々展"に間に合わなかった。でもギャラリーの店主さんと楽しいお喋りができて、ふたりともご機嫌で店を出た。帰りは少し渋滞。
奈良旅、あんまりきちっとしたプランは立ててなかったけど、すごく充実して楽しい1日だった。奈良、いいな。京都ともまた違う風景、雰囲気だった。次は和歌山に行こうと計画していて、それもとても楽しみ。









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