最悪な偉人の遺言

先日、Twitterに以下のようにつぶやいてみたところややウケしました。

上記の偉人ファンの方はごめんなさい(特に芥川龍之介ファンの方には本当に申し訳ない)。単純に「いいこと言ってる~!」という遺言を探すより「こいつ最悪~~~!!!」と思う遺言を探す方が面白かったんです…。

さて、この記事では上記ツイートで触れた3人について軽く(ふざけながら)ご紹介します。ファンの方から余計に怒られそうですが、歴史や偉人に興味を持つきっかけになっていただければ幸いです。

では早速いきましょう。

「最強の奴が俺の国、継いじゃいなよ」

1位のアレキサンダー大王564万平方km…面積だとデカすぎてなんのこっちゃ分かりませんね、だいたい日本15個分です。距離で言うと東西合わせて4500kmの土地を支配した、戦争しまくり勝ちまくりのマケドニア王でした。

この人マ~~~ジで強かったんですけど、遠征中にハチに刺されて高熱を出し死亡する…という全然ドラマチックじゃない亡くなり方をするんですね(死因には諸説あって疫病説や毒殺説などもあります)。

問題はその遺言、「最強の奴が俺の国、継いじゃいなよ」(正しくは「最強の者が我が国を継承せよ」)、です。

意訳ではジャニーさん風に言ってしまいましたが、たぶん頭がバトル漫画脳だったんだと思います。ドラゴンボール読んでたのかもしれません。

この遺言の結果、ディアドコイ(後継者)戦争が勃発。「マケドニア王に、俺はなる!」と、目の色をバキバキに変えた部下たちが領土全体を巻き込んだ大戦争を40年続けるんですね。40年あったら住宅ローン払い終わりますよ。古代の話なので、生まれる前から死ぬまでずーっと戦争だったって人もたくさんいたんじゃないでしょうか。死後(物理的に)世界に与えた影響力のヤバさから堂々の第一位となりました。

漫画『ONE PIECE』のゴールド・ロジャー然り、凄まじい大人物の遺言で世界が大荒れになる展開はドラマチックですが一般庶民はむちゃくちゃ迷惑なのでフィクションの世界だけにして欲しいところです。

「遺言なんて遺すヤツは生前に言いたいことも言わなかったフェイク野郎」

2位のカール・マルクスは超有名な『資本論』っていう「資本主義マジ格差社会!資本家はワック野郎!社会主義こそドープだ!革命だ!」という資本主義ディスりまくり本を書いて社会主義・共産主義を説いたおじいちゃんです。

”マルクス主義”という言葉が生まれるほどの20世紀世界に多大な影響を与えた思想家のひとりですが、『資本論』も発表当時は全っ然売れず、生涯ずーっと貧乏でした。なのにWikipediaの概要の2行目に「家政婦を雇い家政婦を孕ますほどの経済力はあった」と記されているというファニーなおじいちゃんです。経済力の指標そこ?

さて、彼の遺言は「遺言なんて遺すヤツは生前に言いたいことも言わなかったフェイク野郎」(正しくは「遺言などというものは、言いたいことを言わずに生きた愚か者の言うことだ」)でした。

マルクスおじいちゃんは言いたいことを言いすぎてケンカしまくり放浪ラップバトル状態の人生を送ったので説得力がありますが、これが最期の言葉として伝えられていることも含めて”クール”と言っていいかも知れません。親友の奥さんの訃報の手紙に対して「ところで金貸してくんね?」と返信してしまう辺りも”ガチモン”感が察せられます。

マルクスの人生はWikipediaだけ読んでもむちゃくちゃ破天荒で面白いので、お時間ある方はぜひご一読を。

「俺はなんとなく不安だから自殺すっけど、俺の子供も死にたくなったら死ね(超意訳)

上記ふたりがワンツーフィニッシュを決めたのですが、別の意味で「最悪だな…」と思った遺言が芥川龍之介の遺書「俺はなんとなく不安だから自殺すっけど、俺の子供も死にたくなったら死ね(超意訳)です。ですが、これはさすがに超意訳が過ぎたのでちょっとだけ詳しく解説します。

まず、私が超意訳した言葉は、ひとつの遺書ではありません。

前半の「俺はなんとなく不安だから自殺すっけど」は、正しくは「(自殺の動機を他人はあれこれ推察するだろうけど)少くとも僕の場合は唯ぼんやりした不安である」です。これは親友に宛てた最期の手紙によるもの。

後半の「俺の子供も死にたくなったら死ね」は、正しくは「若(も)しこの人生の戦ひに破れし時には汝等の父の如く自殺せよ」。こちらは家族に宛てられた遺書によるものです。

実は芥川龍之介のこれらの遺書というのは青空文庫で全部読むことができます。言葉遣いが古くて読みにくいかも知れませんが、もしご興味ありましたらご一読ください。この記事が昔の人のカッコつけた言い訳ランキングだったらブッちぎりでこれが1位です。

さて、芥川の遺言としてあまりにも有名なのは「唯ぼんやりした不安」の方ですが、個人的には「これ、表に出ると思って絶対カッコつけて書いてんじゃん」と感じます。より生々しい原因を書いているのは、実は家族に遺した遺書のほうです。

正確な文章は上記リンクを参照していただくとして、超意訳して縮めて説明すると「僕は人生の総括として自殺するけど、その中の大事件は29歳のときのダブル不倫です。そのことに対する良心の呵責はゼロなんだけど、手を出した相手が自己中のやべー奴だったんで生きるのがキツくなっちゃったことは後悔してる」こ…こいつ…!

後半では「養父母に対してワガママも言わず孝行息子のフリしてたのも後悔してる。それは僕にはどうしようもなかったんだけどさ」という理由も語られますが、こちらの方は一顧だにする余地があります。

自分の子供に宛てた「死にたくなったら死ね」の部分はもう少し詳しくいまっぽく訳すと「人生は戦いだから敗けたら父みたいに自殺しろ、でも父みたいに周りを不幸にすんなよ」です。こいつマジなんなんすか?
文末に「笑」とか付いてませんかこれ?

私が子供だったら「マジ最悪~~~…」と思ったという意味で、ランク外ですが殿堂入りという訳のわからないポジションの遺言です。

調べていたら『よみものどっとこむ』というサイトのより詳細な考察記事を見付けたので、さらに知りたい!という方はぜひどうぞ。

以上、必要以上にくだけた説明になってしまいましたが、個人的”最悪な偉人の遺言”ランキングでした(ファンの皆さまは重ねてすみません!)。

歴史上の偉人は”偉大な人”なだけあって、有名どころはみんなキャラが立っててむちゃくちゃ面白いです。いまだとYou Tubeなどの動画サイトで、偉人についてひとりひとり楽しく解説しているジャンルがありますので、「興味はあるけど本やweb記事に当たるのが面倒」という方への取っ掛かりとして強くオススメです。

みなさんからの”最悪な偉人の遺言”のリークもお待ちしております。それではまた。


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