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ウマ娘キャラクター解説1:ゴールドシップ

1.はじめに

こんばんは。ウマ娘のアプリがとうとう実装され、ハマるファンもふえているみたいですね。

さて、そのウマ娘を現役の厩務員がプレイしたと話題になり、一時Twitterのトレンドが”ゴルシ”になりました。

この今浪厩務員とは、かつて”ゴルシ”ことゴールドシップ号のを手掛けたことで有名な人。それでゴルシがトレンド入りした訳ですが、「ゴルシとは何者ぞ?」とTwitterユーザーの中には困惑する人も続出しました。

なので今回は、私が記憶するゴルシの魅力について語りたいと思います。

2.デビュー前~初重賞制覇

ゴルシことゴールドシップは、2009年3月6日に北海道日高の出口牧場で誕生しました。

誕生時には、大柄で子供もそれを引き継ぎ大型馬が多かった母馬のことを考慮し、小柄な牡馬のステイゴールドという馬を宛がったのですが、意図に反しまた大柄な仔馬が生まれました。それがゴールドシップです。

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競馬の世界では仔馬は1歳のときに母馬と離れて競走馬としての馬生を始めるのが一般的です。しかしデビューへ向けて調整中に東日本大震災が発生したため、ゴールドシップも福島や北海道、石川などえを転々とし、ようやく須貝尚介厩舎でのデビューが決まります。(ちなみに須貝調教師は、JRA競馬学校の第1期生で、先日引退した蛯名正義騎手の2つ先輩にあたります)

デビュー戦は‘11年7月9日の函館競馬場の新馬戦。ここをなんといきなりコースレコードで勝利。私がゴールドシップを知ったのは、このときです。

続くオープンレースのコスモス賞を勝利、初の重賞挑戦となった札幌2歳ステークスでは後に重賞2勝、GⅠマイルチャンピオンシップ3着となるグランデッツアに続く2着、次のラジオNIKKEI賞でも良血馬アダムスピークの2着など勝ち切れないレースが続きました。

転機となったのは5戦目の共同通信杯。ここで騎手を内田博幸に替えたのですが、彼は今まで10番手以下の後方から直線での追い込みに賭ける戦法を改め、4・3番手追走から残り100Mで逃げ切りを図るディープブリランテを抜いて優勝するという、教科書のような勝ち方を披露したのです。

ただ須貝師や今浪厩務員によると、この共同通信杯の頃から調教後に調教助手を振り落としたり、厩務員の前で暴れるようになったらしく、後の伝説はここから始まるようになります。

重賞制覇により賞金を加算したゴールドシップは、トライアルを挟まず3歳馬のクラシック競走の第1関門・皐月賞に駒を進めることになります。

3.皐月賞・日本ダービー

‘12年の皐月賞は混戦模様でした。1番人気は札幌2歳ステークスでゴールドシップを破ったグランデッツア、

2番人気は父が三冠馬のディープインパクト・母はドイツオークス3着という良血馬できさらぎ賞と若葉ステークスを快勝して臨むワールドエース。

3番人気が共同通信杯でゴールドシップに敗れその後前哨戦のスプリングステークスで2着に善戦したディープブリランテ。

ゴールドシップは上位3頭に次ぐ4番人気で、ゴールドシップまでが単勝10倍を切りました。

レースではゼウスとメイショウカドマツが競り合ってハイペースで飛ばし、3番手以下を大きく離して進みます。3番手にやや掛かりながらディープブリランテが追走。人気馬たちは後方に待機し、グランデッツアは後ろから3番目、ワールドエースは後ろから2番目につけます。一方ゴールドシップはというと…

なんと最後方。皐月賞が行われる中山競馬場は直線の距離が他の競馬場より短く、追い込み馬には不利とされているんです。

3コーナーで徐々にポジションを押し上げるも、先頭との差はかなりあり、この時点で「ああ、よくて5着だな…」と思いました。

ところが4コーナーに入ったとき目を疑いました。なぜなら後方にいたはずのゴールドシップが、直線ではいつの間にか前から3番手につけていたからです

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画像をご覧になれば分かりますが、このときの中山競馬場は開催が進むにつれ馬が密集する内側が荒れ、他の馬たちは荒れた内よりもまだ芝生がキレイに残っている外を求めて大きく膨らんだのです。

しかしゴールドシップの内田博幸騎手は、他馬と同じ外を選択しては先頭に届かない、一か八か荒れた内側と荒れていない外側のちょうど境目のギリギリのラインにゴールドシップを導いたのです。

他馬が大外を回ってロスした分、うまくコーナーワークを使ってゴールドシップは先頭をうかがえるポジションにつけられたのです。

今まで好位にいたディープブリランテが必死にしがみつこうとし、大外からようやくワールドエースとグランデッツアが追い込んできますが万事休す。ゴールドシップは2着ワールドエースに2馬身半をつけ快勝したのでした。

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そしてゴールドシップは全ホースマンの夢舞台と言って過言ではない日本ダービーに出場することになります。

ところがファンは、皐月賞で追い込んで2着を確保したワールドエースの末脚が、広くて長い東京競馬場のコースに合うと考えこれを1番人気に支持します。そしてゴールドシップは2番人気に。

これを見て私は嫌な気がしました。なぜなら、過去の日本ダービーで0.4秒差以上をつけられた2着以下の馬が1番人気、1着馬が2番人気になったケースではどちらも着外になるデータがある(例・‘07年ヴィクトリーとフサイチホウオー)のを知ったからです。

ダービーではワールドエースが後方11番手、ゴールドシップは13番手でレースを進めます。鞍上の頭には、府中の長く広い直線ならこの馬の末脚を活かし勝てると踏んだのかもしれませんが…

しかしながらダービーには”ダービーポジション”というものがあり、ダービーでは10番手以内に付けていないと優勝は難しいと考えられていました。

いかんせんこのときは皐月賞のときより前が止まらない馬場でした。また位置取りも後ろすぎました。結局、好位3番手からスルスル抜け出したディープブリランテがそのままゴールイン。ダービー馬の称号を手にしました。

2着に7番手から差してきたフェノーメノ、3着も2番手から粘ったトーセンホマレボシで決着し、一方ワールドエースが4着、ゴールドシップは首差の5着に終わりました。

今思えば人気に逆らって走るこの馬のイメージがついたのは、このときかもしれません。

その後夏場を休養に当て、9月23日の神戸新聞杯で復帰し、ここを1番人気にこたえ優勝します。

4.菊花賞・有馬記念

菊花賞は例年とは異なった様相を呈していました。

日本ダービー優勝馬のディープブリランテは夏にイギリス遠征を敢行するも、帰国後屈腱炎になり回避したのをはじめ、2着フェノーメノは距離を嫌って秋の天皇賞を目指すことが発表され、3着トーセンホマレボシ4着ワールドエースも故障により回避となり、ダービー上位馬の中で菊花賞を目指すのがゴールドシップのみといいう状況になったのです。

ファンは菊花賞で実績最上位のゴールドシップを1番人気に推します。1.4倍という高い支持率でしたが、後方から直線一気という脚質ゆえ、内心ダービーみたいに着外になるのでは…と思っていました。

レースではスタートこそ決めたものの、指定席?のポジションへ下げていきます。どこまで下げるんだ…8番手くらいか…?いやもうちょい後ろか?カメラが全体を映したとき愕然としました。

いやなんでよりによって最後方なの!?いやこれから徐々に位置を挙げていくのか…。と思いきや、1周目の直線でも17番手、1~2コーナーを曲がり向正面に入っても変わらず後方のまま。このまま直線勝負に賭けるのか、届くのか…?

半信半疑になりかけていたとき、また目を疑う光景を目撃しました。

京都競馬場では3コーナーの手前が緩い上り坂になっており、3コーナーから4コーナーにかけてが下り坂となり、そこでスピードアップしてその勢いで直線勝負になるのが通常です。

ところがゴールドシップはなんとその上り坂で一気に仕掛け先頭に纏わりつき、直線では2番手の位置につけたのです。

普通の馬なら息が上がってしまう戦法です。しかし過去にこれをやり遂げた馬がいます。

その馬の名はミスターシービー。史上3頭目の三冠馬にしてGⅠ4勝のスーパーホースです。

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この馬のすごいのは、19年ぶりの三冠がかかったレースでこんな無茶な行為をして、しかもあっさり優勝してしまうところでしょう。あまりにもインパクトあるレースだったのでCMにもなったのですが。そのCMが公開されたのは‘12年。そう、ゴールドシップが出走した年です。

https://youtu.be/k_X_izuxF0g

本当にCM通りのレースをしてしまうとは…。この奇策に敵う馬はおらず、2着のスカイディグニティに1馬身半をつけ見事皐月賞と菊花賞の2冠に輝くことになりました。

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その後ゴールドシップは年末の古馬(4歳以上のお馬さん)GⅠである有馬記念に出走することになります。前年の三冠馬・オルフェーヴルと同年の三冠牝馬にしてジャパンカップを3歳牝馬で唯一制覇したジェンティルドンナは出走を回避したものの、ここに出走した競走馬をまとめると、

香港のGⅠレース・クイーンエリザベスCなど重賞5勝を挙げ、ゴールドシップと同じく後方からの追い込みを得意とするルーラーシップ

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2年前のダービー馬で古馬GⅠで3着3度の実績があるエイシンフラッシュ

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また同年春の天皇賞の優勝馬・ビートブラックや前年の宝塚記念馬・アーネストリーなど骨っぽいメンバーが揃いました。しかしゴールドシップは、その力量とパフォーマンスが認められ1番人気に支持されます。

しかし落とし穴はスタートから始まっていました。ルーラーシップがスタートと同時に跳ね上がり、10馬身余りも遅れてのスタート。ゴールドシップもそれにつられるかのようにルーラーシップに次ぐ最後方部へ。個人的にはこの後ゴールドシップが出遅れたりするようになったのはこのルーラーシップをマネするようになったからじゃ…と思ってますが。

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さてレースはアーネストリーとビートブラックの両GⅠ馬が引っ張る展開。ルーラーシップはなんとかスタンド前までに体勢を立て直し、向正面では13番手まで押し上げる一方ゴールドシップはというと…

結局ルーラーシップにもいつの間にか抜かれ、指定席の最後方へ。向正面でも仕掛ける気配がなく小回りの中山コースで大丈夫かと思ったら…

3コーナーで捲り開始。しかし相手は歴戦の古馬たち。そうすんなりと決まるはずもなく、4コーナーを曲がって依然後方の10番手。中山の直線は短いぞ…と思いつつ、あと300M…200Mとゴールが近づいてくる

ここで大外からすごい末脚で追い込んでくる葦毛が一頭。ゴールドシップだ!これは3着はあるかも!

あと50M…なんだこの脚は!あんなにロングスパートして、まだこんなスピードが残っていたのか!3番手…2番手…一気に先頭だ!!

そしてゴールドシップは内から伸びたオーシャンブルーに1馬身半をつけ、1990年のオグリキャップ以来22年ぶりとなる葦毛の有馬記念優勝を成し遂げたのである。

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余談だが、あれだけ出遅れたルーラーシップもちゃっかり3着に来ている。この馬ももう少し真面目に走っていたらGⅠをあと何勝かできたかもしれないです。

次から古馬になったゴールドシップの戦いが始まるのですが、4000字を超えたので一旦ここまでにします。続きは明日以降上げたいと思います。

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