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映画「ミッドナイト・ランナー」を鑑賞したうえで抱くドラマへの期待感など

そもそもオリジナル版は「不純な動機で夜の街に繰り出したところたまたま事件に遭遇し、意図せず真夜中の街をあちらこちらと駆けずり回り犯罪を食い止めようとする」正義感溢れるがどこか頼りない若者ふたりの、偶然によって引き起こされる一夜を映したクライムストーリー。警察大学への入学シーンにはじまり、何もかも正反対のふたりがひょんなことから親しくなっていくなれそめから事件の顛末までを語るには少々スピード勝負なところが否めないけれども、二時間弱で描くにはまあちょうど良いプロットではある。

対して、今回日本でリメイクされることになったのは、ワンクールの連続ドラマ枠。恐らく基本的には一話ないし二話完結型、毎回ゲストがあって、何らかの事件があって、それをふたりが試行錯誤・切磋琢磨しながら解決していくという展開になると思う、というか、そういう展開になるとしか考えられない。
オリジナル版では、内容そのまま、その夜のできごとをピックアップした「ミッドナイト・ランナー」(=真夜中の走者)、まさしくその通りすぎて深々と首肯せざるを得ない納得のタイトルがつけられているが、いくつも事件が起こる(であろう)ドラマのタイトルにも「ミッドナイト・ランナー」が残されている。これは、ふたりが事件にかかわり、独自に捜査していく過程で、〝本人たちの意図の是非問わず、真夜中の街を走り回る羽目になる〟というのがドラマ各話での約束事になることを恐らく示唆している。
ドラマ各話での約束事というのは、たとえば「水戸黄門」で言えばお銀の入浴シーンみたいなものだし、「金田一少年の事件簿」で言えば「じっちゃんの名にかけて」の名ゼリフ、「木更津キャッツアイ」におけるオジーの登場シーンなどである。

〝若いイケメンが純粋な正義感によって猪突猛進に悪に立ち向かうドラマ〟はこの世にゴマンと存在するが、この〝真夜中の街を走り回る羽目になる〟という風変わりな共通項、つまりドラマの前述の約束事が組み込まれることによって、単なる〝若いイケメンが純粋な正義感で(以下略)〟に留まらないドラマの面白さが出てくる。厚み、深みが加わるというか、言われなければわからないようなさりげなさでありながら、作品にちゃんとした味が生まれる。これは、最終話に向けてラスボスへの伏線にも繋がるし回収を施しやすいので、各話完結でありつつクライマックスに向けた全体の期待度はもちろん高まっていく。

さて、オリジナル版を観て私が感じたのは、このプロットの面白さは決して〝若いイケメンが(以下略)〟という部分にあるのではなく、正直はじめてタイトルを聞いたときにはつい鼻で笑ってしまった「未満警察」というタイトル前半部分に由来する、ということだ。
というのも、そのことに改めて気づいたのは映画の中盤あたりのこと。追いかけていたはずの犯人たちに逆に追い詰められてしまったふたりが、「お前ら何者だ?」と尋ねられるシーン。このセリフ、エンターテイメントという文化がこの世に誕生して何十年、何百年と使い古されてきたセリフではあるが、彼らがいわゆる「未満警察」という立場にあることで、あまりにありきたりで古典的だったこのセリフがかなり重要な意味を担ってくる。
ふたりは被害者の知り合いではない、もちろんまだ警察官でもない。尋ねられた時の彼らはまさしく何者でもなく、どうとも答えることができずに口をつぐんでしまう。

このくだりが、あとの展開で非常に効いてくる。恐らくドラマでは第二話にこのエピソードが盛り込まれてくるそうなので、この回でこそぜひ使ってほしいと思う。なぜならこのセリフこそ、〝学生以上、警官未満〟の「未満警察」である彼らにとって、この先事件の解決に向けて奔走していくための〝火種〟となるからだ。持ち合わせた正義感だけでなくここで生まれる〝火種〟によって、彼らは静かなる闘志を燃やしはじめる。
そういうわけで、第一話はドラマ世界への導入という役割のみで、彼らが「未満警察」に目覚めるきっかけはまだ描かれないであってほしいとささやかに願っている。あまりドラマに関してあれやこれや意見したことがないので強くは言えないけれど、第二話における物語の重要性を強く感じている。

そう考えると、オリジナル版に登場する事件自体は何のひねりもなければどんでん返しもない、教科書通りの展開が容易に読めるものだったので正直辟易したものの、こうして少し視点を変えたところに隠されている重要なポイントにハッとさせられたので、「単に〝若いイケメン(以下略)〟だけでなくリメイクしたくなる魅力がたくさんあるな、そんな作品のリメイクを平野くんと健人くんで見られるのは最高だな」という感想に到達した。

こうしていったん作品の魅力をこの目に認めてしまえば、主人公のあらゆるシーンにおける些細な一挙手一投足に平野くんを重ね、ついわくわくしてしまう。単純バカ。憎めないバカ。とにかく愛しい。肉につられて入学を棒に振りかけるし、重要な任務に際していても深夜のカップラーメンにはとことん弱い。でもいざとなった時には目の色を変え、敵をバッタバッタとなぎ倒していく様は少年漫画のヒーローさながらだし、想像しただけで家じゅうゴロゴロ転がって悶えても足りないくらいにキュンキュンが止まらない。
ずっと少女漫画のヒーローを演じ続けてきた彼だけれど、個人的には「ああ、やっとついに…」と感慨深い心持ちでいっぱいである。少女たちのヒーローが実はヘタレであれドSであれ、彼が演じるうえで〝少女も惚れるかっこよさ〟は確かに全く反論の余地がないほど完璧な合致ではあるが、どこかしこりのような違和感が少なからず私のなかに残っていたので、こうして気概溢れるクライムアクションに今の年齢を生かした役で挑戦できるということは、いちファンとしてとてつもない欣快の至りなのである。

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