Your eyes are like oceans, it reflects your beautiful soul.

 水星记が聞こえた瞬間にもうダメだ、と思って涙が止まらなくなってしまったのですこしリッキーのことを書くことにしました。

 リッキーの瞳は海に似ている、とよく感じる。彼のうつくしくて柔らかい、優しい心が反射してひかっている。

 彼のことをすきな人は皆、彼が口数こそ多くはないけれど周りの人々を愛し、優しい言葉を使い、穏やかで理性的なかわいらしい人だと知っているはずだ。わたしはかわいい、という言葉がすき。愛す可き、と書いて可愛い。彼は愛されるべき、素晴らしいものをいくつも持って光っている人だから。

 一体、あの会社で彼を『サポートする』立場にある人間の中で、彼や、章昊老师やマシューのような外国籍のアイドルの気持ちを、その立場から理解出来るのだろう。生まれ育った時自分を囲んだ言葉とは違う言葉を学ぶということを、その言葉で生活するということを、その歯痒さを、遣瀬なさを。
 一体何人が、単語帳に慣れない文字で幾つもの言葉を書き込んだことがあるのだろう。ノートを何冊もダメにして、もう思い付かないような例文を作って、辞書で言葉の意味を引いては口の中で繰り返して。隣に立つネイティブの友人の言葉が微妙に理解出来なくて曖昧に笑うしか出来ないこと。学んだばかりの単語を使ってみたらそれ違うよ、と笑われてしまったこと。言いたいことが上手く伝わらなくて口を開くのが少し怖くて、けれど勇気を出して言葉を発して、笑顔になってもらえた時の喜び。ピッタリな表現が見つからずに微妙になってしまった空気を何年も何年も覚えている気持ち。母国語なら、こんなことにはならないのにと悔しく思う気持ち。それを分かっている人がどれほど彼の、彼らの側にいるのだろう。

 昨日からずっとずっと悔しくて、泣いてはダメだと思っていたのだけれども、やっぱりリッキーが水星记を歌った瞬間にその虚勢はもう全部無駄になってしまった。

 わたしは、あの子が頼る相手であるはずの大人が、生まれ育った街から遠く離れた場所で一所懸命に頑張るあの子の頼りにならなくてはいけない人たちが、あれほどまでに彼を軽視していることが悔しくて悔しくて堪らない。けれどリッキーは優しい、いつも通りの笑顔だったことも、きっと色々なことを我慢しながらもわたしたちはそれを知ることが出来ないことも、この先暖簾を叩くようにしながら彼を守ってくれと声を上げるしか出来ないことも、全部が悔しい。そうしていつか彼の手の傷が増えた時に責める相手は自分しかいない。届けられなかった自分が悪いのだと思うしかない。

 わたしたちの知らないところで幸せになってくれるのならば良いのだ。詳細は知ることが出来なくても構わないから、彼が幸福で、楽しい思いをしているのならばそれをわたしが知る必要はない。勝手に幸せに生きていけばいい。けれどわたしたちの知らないところで彼が傷ついて、苦しい思いをしている時に、それをあの花びらのようにやわらかで繊細な心をした子どもは、砂粒を飲み込むみたいにグッと力を入れて我慢しようとするんじゃないか、と思うと怖くて怖くて堪らない。

 わたしが彼に近づきたいとかそういう話ではないのだ。本来わたしたちがファンが、彼を、アイドルというわたしたちが愛する対象を信頼して任せることが出来るのが事務所であるべきなのに、その事務所側が彼に不条理を味合わせるのなら、わたしたちは一体誰を信じて、一体誰が明日も隣でリッキーの幸福を保証してくれるのだと、世界中から彼に向けられるうつくしい感情がそれそのままに彼の幸せに繋がるのだと、そう思えばいいのだろう?

 リッキーはよく笑う子だ。心からしあわせ、というように口を綺麗なハート型にして笑い時もあれば、恥ずかしそうに拳で口元を抑える時も、顔を背けて吹き出している時も、ただ両目をきらきら光らせて、唇だけをやわらかく穏やかな微笑みの形にしている時もある。それが、無理に造られるものであってはいけないのだ、決して。わたしにはわたしの大切な子が、そんな傷つけられ方をすることを、国籍を理由に苦しい思いをして、うつくしかった世界の善意を疑わなければいけなくなるようになることを絶対に許せない。

 わたしは『故郷』の歌の懐かしさを知っている。慣れた言葉を唇に乗せる時の、あの不思議でなみだが出そうな遠い憧憬の痛みをよく知っている。だから水星记も特别的人も歌われた瞬間にボロボロ泣いた。

还要多远才能进入你的心 还要多久才能和你接近
(あとどれくらいの距離であなたの心に入れるんだろう、あとどれくらいの時間であなたに近づけるんだろう)
咫尺远近却无法靠近的那个人 要怎么探寻 要多么幸运 才敢让你发觉你并不孤寂 
(距離は近いのに近づけないあの人 どうやって追い求めればいいんだろう どれだけ幸運なら、あなたにあなたは孤独じゃないと気づかせることが出来るんだろう)
当我还可以再跟你飞行 环游是无趣 至少可以 陪着你
(またあなたと飛べるのなら、周回はつまらないけれど、すくなくともあなたの側にいられるね)

 リッキー、あなたの目には海が宿っているね。海の側のうつくしい街で生まれたあなた。右手に上海タワーを、左手に外滩の景色を控えて、金色の光に包まれた夜の街を歩けば潮の香りのするあの街に生まれたあなた。雨が降ると土の香りたつ緑の多いあの場所で、あなたはよく笑う子どもだったのだと、妹を引っ張ってお気に入りのアニメを一緒に見たり、お母さんに髪を整えてもらってけれどそれが恥ずかしかったり、そんな子どもだったのだと聞きます。

 ソウルの街は寒くはないですか?上海やロスよりもずっと厳しい冬がもうすぐ来ますね、あなたが寂しくないように、この世界が優しいあなたに対してもっと優しくあるようにと毎日そればかり願っています。

 どうか孤独にならないで。わたしはあなたをあいしてくれるメンバー達を信じている。あなたは強いけれどその強さに甘えたくはないのです。あなたはただ、あなたにとって大切なことを貫けば良い。笑顔で、甘くて美味しいものをたくさん食べて、うつくしい歌を歌って、あなたのなりたいあなたになって。
 沈泉锐平安喜乐。

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