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ハリボズと一緒に知る中国語の『方言』の話

ZB1中国語界隈(中国語界隈?)として非常によくいただく質問があります。それは
『リッキーとハオちゃんの中国語はどんなイメージですか』
というものです。

そんなもんカッコいい感じだよーとかかわいい感じだよーとかてきとうにフィーリングで答えればいいじゃんと思われるかもしれません。

が。

わたくしはそういうのを無駄に深掘りして懇切丁寧に説明するのが大好きなので。

今回は2人の中国語の違いについて、
・普通话とはなんぞや
というところから始め、
・地域別の方言
・リッキーの話し方
・ハオちゃんの話し方
・语气の話
・二人の中国語の違いを肌で感じるために

まで含めて、出来る限り日本ゼロズにも分かりやすく詳細に解説していこうと思います。
disclamer: 以下言论纯属娱乐,我是汉语言文学专业的不是对外汉语教育的,有些关于语言学的内容有可能包括不精确的东西,请见谅


普通话とはなんぞや

さて、まずは中国語という言語における一人一人のもつ言語特性の違いについて語る上で絶対にかかせない、普通话についてお話ししていこうと思います。
普通话とは端的に言うならば中国語における『標準語』です。
中国は東西5,000km、南北5,500kmにわたる世界第4位の広大な国土を持つ国家であり、その広さゆえに当たり前ですが、地域によって用いる言語が大きく異なります。(北はロシア、南はベトナムに接しているので、この2カ国の言語の差を考えてもらえば納得しやすいかなと思います。)

先日ハリボズが出演した中国のバラエティ、奔跑吧を見て『どうして中国の番組に中国語字幕がついているんだろう?』と不思議に感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
答えはシンプルで、別々の地域の人たち同士では音声のみの会話では何を言っているのか分からない、という状況が発生しかねないためです。
ちなみに中国ドラマにおいて、役を演じる俳優と後付けで音声の吹き替えを行う声優がそれぞれいる場合が多いのも、俳優たちが地方出身である場合標準語が規定の水準に達していないことが理由のこともあります。(単純に声が役と合わないから、ということもありますが…。)

国土が広すぎるがゆえに地方ごとの方言に大きな違いがある中国では、国家全体で使える普遍的な言語の普及が努められました。それが『普通话』1949年以降に中国政府によって定められた共通言語です。
よくある勘違いで普通话=北京語と思っている方がいらっしゃるのですが、これは間違いです。確かに普通话は北京語をベースに作られたものですが、北京には北京の方言があるためこれらは同じ物ではありません。

さて、そんな普通话は生活における必須教養であるため、普及を進めるために初等教育の時点からカリキュラムに組み込まれ日本国内における『国語』のような形でそれを学ぶことになります。
以前ハオちゃんが小学生時代(深圳市在住)に広東語(香港などで主に使われる言語)を使わなかったのか、と聞かれて『当時普通话の普及のために学校で広東語を話すことが禁止されていたから』と話していた通り※、実は普通话の普及率が上がって一定の水準に達したのは最近のことです。
※2000年に53%、2015年には73%ほど
※KCON香港後のBubble Live参照

ですので綺麗でクセのない普通话を話せる人の多くは
・都会出身である
・高等な教育を受けている
ことが多いです。これらを踏まえて、次の章に進みます。

地域別の方言

『綺麗な中国語』の基準である普通话とは何かが分かったところで、地域別の方言に注目してみましょう。
以下は中国の地図にリッキーとハオちゃんの出身地をピンしたものです。

中国政府のサイトから引っ張ってきたわよ

それぞれの距離感をまとめると以下のような感じです。

上海ー福建の距離:約765km
北京ー上海の距離:約1000km
北京ー福建の距離:約1900km
福建ー台北の距離:約130km

東京ー大阪が約400kmと考えると、規模感の大きさが分かりやすいかなと思います。

次に中国の方言における『八大方言』について見ていきましょう。正直そんなに大事じゃないのでサラサラといきます。

・北方方言:長江より北の川沿い、四川、云南省、贵州、湖北湖南両省の西北部、广西西部、北部一带において使われる方言。汉族の総人口の70%以上がこの方言を使う。
・吴方言:苏州话、上海话などを代表とした方言。リッキーの出身地、上海の方言は順当にいくならばここ(ヒント:順当にいっていない)
・湘方言:长沙话を代表とした、主に湖南省などで使われる方言。
・赣方言
:南昌话を代表とした、主に江西省などで使われる方言。
・客家方言
:梅州话を代表とした、广东省東部、南部及び北部、福建省西部などで使われる方言。
・闽东方言
:福州话を代表とした福建省北部、台湾の一部分で使われる方言。ハオちゃんの生まれ故郷、南平市松溪県の方言はこの中の南平话に分類される。(また福建师范大学があるのは福州市)
・闽南方言
:厦门话を代表とした、台湾の大部分で使われる方言。
・粤方言
:广州话を代表とした、广东省の大部分で使われる方言。

多いな…と思いましたか?

まだあります。

もっと細かく見ればまだ全然あります。

ですがそこまで行くとハリボズにあんま関係なくなってくるので今日はここまでにしておきます。(フゥ。)

この章で覚えておいて欲しいことは以下の三つです。
・中国ってえらい沢山方言ある
・上海市と福建省の本来の方言そのものは全くの別物
・福建、台湾とエグ近い

リッキーの言語人生を追ってみる


本題だ!!!!!!!!!!!!!!
中国語という言語体系そのもののなんとなくの地域分布などを知っていただいたところで、いよいよ本題(その1)リッキーの話し方について考察していこうと思います。

以下に簡単に、今のところ明らかになっているリッキーの過去の居住地や家庭環境についてまとめました。

2004年5月20日 上海市生まれ

2014〜2015年頃 10、11歳でアメリカ カリフォルニア州Irvineに移住

2019年頃 中学生の時(15歳前後?)渡韓、2024年現在韓国在住
・御実家はかなりの富裕層
・実家で話す言語は普通话

ここで一つ重要なポイントがあります。
リッキーは上海话が殆ど喋れません。(※本人談)
以前GUCCIのイベントの際に非常に短い上海话を披露していたことはありますが、おそらくそれらは上海市で育った際に生活の中で覚えたものであると推察できます。彼の生まれた2004年は既に普通话の普及活動がかなり活発に行われていた時であること、実家では普通话を話すこと、アメリカに移住したことで更に方言を話す中国人に囲まれる環境ではなかったことも理由で、そもそも上海话を学ぶ・話す機会というのが殆ど無いのではないでしょうか。(ちなみにIrvineには上海人・中国人がかなり多く住んでいます。が、在米中国人の殆どがそうであるようにバキバキの方言の人には会ったことがないです。)

リッキーの話す中国語は発音の非常に標準的な、綺麗で聞き取りやすい普通话です。元々声が低め+中国語を話す時でも考えてから話すのかちょっと不思議なところで間が空くので凄くハキハキしているとは言いづらいですが、声調も発音もハッキリしていてクセのない、サバサバした印象であると言えると思います。
(語気に関しては後でハオちゃんとまとめて紹介します)

ハオちゃんの言語人生を追ってみる

本題その2。
ハオちゃんの話し方について考察していきましょう。

2000年7月25日 福建省南平市松溪県生まれ

2006年〜2012年の間のどこか(おそらく前半) 深圳市の祖母の家で育つ

2012年〜2016年頃 福建省南平市松溪県の中学校

2018年 福建师范大学(福州市)入学

2021年9月 渡韓

2024年 福建师范大学卒業(おめでとう)現在韓国在住
・かなりの地方都市出身
・御実家は一般家庭
・211大学(中国地质大学)合格済
・福建省高考第一名

こうして見ると分かるように、ハオちゃんは人生の殆どを福建省で過ごしています。ただ彼もリッキーと同じように、2000年生まれという既に普通话の普及活動がかなり活発に行われていた時期に生まれた子であること、幼少期を深圳市で過ごしていることから南平话の音が極端に強いわけではないです。小さい頃に両親と話すときには使っていたと言っていたり、ロエベのイベントで一言ではありますが披露してくれたりしていたのである程度は話せる、程度であると推察できます。ではただの地元の方言ではないならなんなのか。

ハオちゃんが話す言葉に出るクセ、それは台湾腔・福建口音です。
台湾腔とはその名の通り『台湾での話し方の特徴』を意味する言葉で、言語体系的に言うと普通话と闽南话が結合して出来たものとされています。(by.百度)福建口音も文字通り『福建地方の発音』のことで、両者共に
・语气词の種類が非常に豊富
・天然な、可愛らしい印象
・発音の位置が前に出やすい=そり舌音や喉の奥で出す音の発音が甘くなりやすい
ことが特徴です。
一個前の章で話した通り台湾と福建は非常に距離が近く、ハオちゃんと同年代の福建省の若者たちはきちんとした普通话を初等教育から学んでいるため、結果南方の方言である闽南话・闽东话と普通话が混ざった発音の人が多いのだと窺えます。
ボイプラ中、台湾人である陳冠叡(クァンルイ)とハオちゃんの話し方が似ていると感じられた人もいるのではないでしょうか?

ハオちゃんの話す中国語は、台湾腔・福建口音のある、可愛らしくキュートな印象の強い発音です。そり舌音や喉の奥の発音、zi、xiなどの発音に甘さがあるので普通话がとても標準的な発音であるとは言えませんが、声調がハッキリしていること、丸みのあるとろんとした発音ながら喋り方はハキハキしているので聞きやすいです。時々なんて?となることはなりますが、言葉選びの愛らしさ(痛い、を很疼だけでなく痛痛と言うなど、単語を繰り返す少し甘えた表現をする)も総合して可愛くて愉快な喋り方だなという結論です。

语气の話


さて、上でハオちゃんの喋り方は语气词の種類が豊富であるという話をしたのですが、中国語に馴染みのない方にとっては语气词ってそもそもなんやねん状態だと思います。
语气词とは、その文章の『語気』つまりは全体の雰囲気や伝えたい意思、感情を表現するための言葉で、文系的には虚词=それ自体には意味のない言葉のことを指します。
中国語の中で非常によく見る基本の语气词は以下の6つです。
的(de)、了(le)、呢(ne)、吧(ba)、吗(ma)、啊(a)
他にも呀、嘛、啦、呗、喽、么、哈辺りはわたし本人もよく使うなぁと感じます。
が。
台湾腔、福建口音の強いハオちゃんはとにかくその種類と登場回数が多いです。例として、以下にハオちゃんの微博ライブを聴いていて出てきた语气词を挙げてみます。
的(de)、了(le)、呢(ne)、吧(ba)、吗(ma)、啊(a)、嘛(ma)、
呀(ya)、呗(bei)、么(me)、啦(la)、耶(ye)、喽(lou)、咧(lie)、
嘞(lei)、喽(lou)、哩(li)、咯(luo)、啰(luo)、喽(lou)、咩(mie)、
呐(na)、诶(ei)、哦(o)、哇(wa)
多い。多いよ。
先ほどいった通り、语气词とは『その文章に感情や雰囲気を付け足す言葉』ですので、日本語で例えるならば『〜だ』→『〜だよ』、『〜かも』→『〜かもね』、『〜を』→『〜をね』のようなイメージです。
この特性上、语气词の種類や回数が多い→可愛らしい印象になることが多く、台湾腔はその標準的な普通话と比べると舌ったらずな印象のある発音もあって、ぷりぷりしたキュートなイメージになります。
(ちなみにハオちゃんはわたしが聞いたことのある中国人男性の話し方の中でもピカイチぷりぷりしてるなぁと感じます。)

対してリッキーはどうかと言うと、基本の10〜12種類くらいの语气词は使いますがオーバーな使い方をすることはなく、どちらかというとさっぱりした、サバサバした印象の話し方です。ただ語気自体は非常に柔らかく物腰が丁寧で、啊、呢、呀、嘛、哦、呗などの全体の印象がふんわりする柔らかい語気を使っていること、また言葉選びが彼の年代の男の子にしては優しい上品な話し方なので、凄く短くまとめるなら『お育ちの良い話し方』です。
(中国人ダチは喧嘩弱そうな喋り方と表現していました。)

二人の中国語の違いを肌で感じるために

さて、ここまで語学体系的な違い及び中国語話者であるわたしの視点からの二人の話し方の違いについて書かせていただきましたが、これを読んでくださった日本人ゼロズさんの中には『んなこと言われても実際聞いててわからんよ』という方もいらっしゃるかと思います。

そこで二人の話し方の違いを肌で感じるために、以下にここを注意して聞くと違いが分かりやすいよというポイントをいくつか挙げておきます。

1. 语气词の使い方。上に挙げた音が文章の最後に付いているのが聞き取れるでしょうか?耳を澄ませると二人の语气词の使い方の違いがかなり顕著に分かると思います。
2.chi, shi, zhiなどのそり舌音の発音。ハオちゃんはそり舌音の発音が甘いため、chiがqiに、また逆にziがzhiになってしまっている時があります。
3.音が鼻にかかっているかどうか。リッキーが殆ど鼻にかからない喋り方なのに対し、ハオちゃんは丸みのある発音のことが多々あります。

どうでしょうか。ぜひ過去のコンテンツをご覧になる際、またいつか新しい微博ライブが行われた際は注意して聞いてみてください。

長々と書いてしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。それでは皆さま、最後にご一緒に祈りの輪に加わっていただけますと幸いです。

お声を合わせて、せーの。

!!!求 サロンドハリボーズ エピソード2!!!

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