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芸能人妻、デビューします! 4 再び
「紘子(ひろこ)さん、すみません」
イタリア土産を持って義実家に行くと、義母の紘子さんがお茶を淹れてくれた。
「すみませんじゃなくて、ありがとうがいいなぁ」
「はいはい、母さんありがとう。もういいから、座って」
口数の少ない義父も相変わらず喋らないが、元気そうで何より。娘の紀和(きわ)は義父に一番懐いており、義父の膝の上でニコニコしている。
「これ、お土産です」
「あら、マロングラッセ。す
芸能人妻、デビューします!3 はじめて
夫が個人事務所を設立した当初、私もマネージャーのような形で現場に何度か足を運ばせてもらっていた。
アイドル英稔紀(はなふさなるき)のファンはやはり女性が多く、女性誌での撮影や取材が多かった。
その中に、私が中高生の頃に読んでいたティーン誌もあり、隣のスタジオではまだ中高生だと思われるモデル達がワイワイ楽しそうに撮影していた。当時紙面で見ていた世界が実際に広がっていて、感慨深かった。そして少し懐か
芸能人妻、デビューします! 1
アイドルを仕事としている夫の英稔紀(はなふさなるき)と結婚し、5年が経った。
─
当時デビューして5年目を迎えていた、夫が所属するグループstilla(スティッラ)は、メンバーそれぞれドラマや映画、バラエティなど、メディアで引っ張りだこの大人気アイドルだった。
突然の結婚に反対しない人はいないわけで、メンバーや事務所の偉い人たちにも止められた。しかし私達はそれを押しきって入籍した。
当
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芸能人妻、デビューします!出会い篇
~出会い篇~
結婚して5年、夫とは離婚を考えている。
出会いは7年前。学生時代のアルバイト先であるカフェにそのまま就職した私は、当時23歳だった。
裏口の鍵を開け、サクッと着替えてブラウンのエプロンを身につける。腰紐をキュッと締めると、7時。
私の朝は始まる。
「聖和(せな)さん、おはよーございます」
エスプレッソマシンの電源を点け、朝一のドリップコーヒーを淹れてテイスティングをし
生理にまつわるアレコレ【女性キャストによる座談会】
美浜「こんにちは、美浜えり(みはまえり)です。今回は物語の中から女性の登場人物の皆さまにお越しいただきました。題材は〝生理〟です。それぞれ違った悩み等があると思うので、話を聞いていきたいと思います。よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
美浜
「それでは皆さん、軽く自己紹介をお願いします」
紗楽
「長与紗楽(ながよさら)です。『色なき風と月の雲』に登場しています。職業は
#上司ガチャに失敗したので辞めたい
理想の会社、理想の同期、理想の先輩、理想の上司─
そんなもの、存在しないのがこの世の中である。
製菓学校を卒業し、皆が働きたいお店を掲げて就活しているなか、そんなものが一切無かった私は結局、地元のケーキ屋さんに就職した。
今どきはやりのキラキラしたお店ではなく、素朴で老若男女に長く愛されるお店。しかも、この地域で何店舗か展開している地元密着のお店だ。
それぞれの店舗は昔ながらのケーキをベー
ありがとうの強要ってキモイ │端役の徒然 7
ありがとう
その言葉って、強要されて言うものではないですよね?
言われると嬉しいのは確かだけれど。
そしてその〈ありがとう〉を言われたからってへりくだって
「いえいえ」
とかって言う必要も無いと思う。
「ちょっと、これってまだ在庫ある?」
開店直後のこの時間、開店待ちをしていた客の対応と入荷してきた商品を陳列するのに大忙し。
話しかけてこないでほしい。店内はそう広くないので、自分で
オリジナル小説│端役の徒然 6 無
ハロウィンが終わると世の中は一気にクリスマス一色に染まる。うちの店も例外ではない。
10月31日の営業終了時刻が近づくと毎年いるのが、
「まだハロウィンの仮装グッズありますか」
と訪ねてくる客だ。
結構多いのだが、例に漏れず仮装グッズは早々に売り切れる。31日当日に残っているのは、インテリアなど置物ばかりだ。
営業終了後すぐにハロウィンのオバケやカボチャなどの飾りはバックヤードにしまい込ま
オリジナル小説│端役の徒然 5 推しと街
久しぶりに旅をした。
日々に疲れ、仕事のことを忘れたかった。
仕事終わりそのまま電車に飛び乗り、予め買っておいた自由席の切符を改札に通す。
数年ぶりに乗る新幹線は、ガラガラだったあの頃と比べると、だいぶ乗客が戻ってきているような気がする。
都会の駅に停まる度、徐々に座席が埋まってくる。目的地に到着する前には、殆ど空席がなかった。
唯一と言っていいほど、遠い田舎から乗る利点は自由席に座れるこ
東京カフェ紀行 4軒目
朝、余裕があればモーニングに行きたい。
いつもと違う場所で目覚めた朝、ベッドの上でゴロゴロしながらスマホで[モーニング]と検索する。
大手チェーンやどこでも食べられるお店を除外しながら、目ぼしいお店をピックアップした。
今いる場所から歩いてすぐだ。
ぱぱっと身支度をし外に出ると、想像以上に明るくて目を細める。
「まぶしい…」
店に着き、自動ドアをくぐると驚いた。まるで高級ホテルのような
オリジナル小説│端役の徒然 4 夏の音
皆さんは何を見て、何を聞いて、夏を感じますか?
私は、子どもの植木鉢を持ち帰るお母さんと、子どもの声。
私の頃は自分で持ち帰っていた気がするのだが、今時の小学生はそうなのだろうか。
よく分からない。
「ひーろ、ひろくん」
バタバタと子どもが店内を走り回る音、おもちゃを買ってもらえなくて泣き叫ぶ音、我が子の名前を呼びまくる音…
この時期は、いつにもまして色んな音で溢れかえる。
セミの鳴き声も
東京カフェ紀行 3軒目
暑い、暑すぎる。
せっかくの休日も、暑さで起きてしまう。
もう少し寝ていたいのに。
ミーンミーンなんていう爽やかなセミの鳴き声なんてもう何年も聞いていない。ジリジリシャンシャンと鳴き、暑さを何倍増しにもするセミの鳴き声ばかりだ。
子供の頃の記憶では、クーラーなんて滅多に点けず、扇風機だけで夏を過ごせていた。そんな何十年も昔ではなく、ほんの十数年前の話だ。
びっくりするほど毎年暑くなり、それ
東京カフェ紀行 2軒目
月曜日、午前中は空きコマなので
いつもこのカフェに足を運ぶ。
駅から大学の間にある丁度良い場所で
かつ、隠れ家のようなお店である。
1階でオーダーし、2階へ。
客席はとても少ないが、
定位置は窓際の3人がけ。
毎週ほとんど開店と同時に行くのだが、
そこにはいつも先客がいた。
3人がけの端と端、
真ん中の1席を空けて座る。
先客はいつも、何かを読んでいる。
資料だったり、冊子だったり、
き
東京カフェ紀行 1軒目
日曜の夜。東京の、キラキラを纏う街から
少しだけ離れた場所に、それはあった。
高架になった線路の下をくぐり抜けると
急に雰囲気が変わる。さっきまでの
キラキラは夢だったのだろうか。
そう思ってしまうほどに。
そんな中、場違いなほど
キラキラと輝く建物があった。
今回の目的地のカフェである。
扉を開くと、驚いた。狭いのだ。
訪れる前に少しだけ、お店のことは
リサーチしていたのだが、
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