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ていの創作小説

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自分の創作小説をまとめています。
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2021年6月の記事一覧

コモンセージ(誕生花ss)

 庭のアイツをどこかへやってくれ、と、寝台に横たわった祖父に言われたので、私は驚いて首を…

てい
2年前
2

アメリカフヨウ(誕生花ss)

 街コンなんて俺好みの淑やかな女性が来るような場所じゃないだろうと思っていたけれど、どう…

てい
2年前
1

ベルフラワー(誕生花ss)

 言葉の代わりに手にした楽器で、あるいは自身の声で、旋律を奏でる人々がいた。長い旅の途中…

てい
2年前
2

ホタルブクロ(誕生花ss)

 今日も施設は明るくて、底抜けに頭の悪いガキどもの声が耳に障る。自分もそれらと殆ど変わら…

てい
2年前
3

ガザニア(誕生花ss)

 少年の足は重かった。家のドアを開ける前に、重いランドセルを置き、ほどけてもいない靴紐を…

てい
2年前
2

クラスペディア(誕生花ss)

 その扉は、固く閉ざされていた。一見、軽く開きそうな薄い色の扉は、いくら押しても引いても…

てい
2年前
2

オトギリソウ(誕生花ss)

「あの子は新月に産まれたから鬼の子なんだよ」  転校初日、学校を案内してくれた親切な女子は、そんな言葉を口にした。あの子、というのは、教室の隅に黙って座る、長い髪の女子だった。 「キリさんは鬼の子。仲良くなったら食べられちゃうんだよ」  いじめ、ではない。どうやら本気で言っているようだった。暫く様子を見ていると、本当に誰も、教師でさえも、キリさんを無視している。時代錯誤の迷信を、彼らは信じているのか。  気になりつつも、その他のことで手一杯で、キリさんに話しかけるタイミングは

ローマンカモミール(誕生花ss)

 生まれたときから難病を患い、家は貧しく周りに蔑まれ、衣食住に満たされることがなく、そん…

てい
2年前
1

マンドレイク(誕生花ss)

 マンドレイクは寝ていたかった。  それなのに、元気の良い人間の下品な言葉が、土の壁越し…

てい
2年前
3

マツヨイグサ(誕生花ss)

 美しい人だった。細すぎる輪郭に、淡い色の着物がよく似合う。薄化粧を施した顔は、彼女を照…

てい
2年前
1

カリブラコア(誕生花ss)

 喫煙所、というものが縮小されて久しい。煙草を吸う本人だけではなく、その周りにいる者にま…

てい
2年前
1

ノアザミ(誕生花ss)

 授業中、足元に転がってきた消しゴムを拾い上げる。誰のだろう、と見回すと、よりによって彼…

てい
2年前
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ゴデチア(誕生花ss)

 これで春は終わり。  カレンダーも窓の外も制服も、私を置き去りに変わっていくばかりだと…

てい
2年前
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スイカズラ(誕生花ss)

 世界がまだ暗闇に閉ざされていたころ、美しい双子の姉妹がおりました。ひとりは銀の髪で、青い瞳の中に無数の光の粒を湛えておりました。ひとりは金の髪で、橙の瞳の中にすべてを照らす強い光を仕舞っておりました。  ふたりは暗闇の世界でただ二つの、光を放つ存在でした。小さなときから仲が良く、どこへ行くにも一緒でした。お互いの指を絡ませあい、決して闇の中で離れないように。  しかし、成長するにつれ、お互いの放つ光を、眩しすぎると感じるようになりました。二人とも自分の光は感じられなかったの