ネモフィラ(誕生花ss)
姉上は美しく聡明で、将来、この国を負って立つにふさわしい姫君だと、王族の中でも噂されるほどだった。如才なく立ち回り、王族としての気品ある振る舞いを完璧に身につけた姉上は、妹の私にもいつも優しく、どんないたずらで困らせたとしても、許してくれた。それは、長じた今でも、なお。
「姉上! ここはもう危険です、城壁は既に民衆の手で打ち破られました……!」
私が息荒く報告すると、姉上は優美に立ち上がった。明るい額には曇りひとつ浮かばず、私の気ばかり先走るようだ。
「そうですか……お父