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ていの創作小説

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自分の創作小説をまとめています。
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2021年2月の記事一覧

ヘリクリサム(誕生花ss)

 永遠なんて、この世にはない。だから、ぼくは毎秒、君への想いを抱き続けることにするよ。 …

てい
3年前
2

マドンナリリー(誕生花ss)

 人里離れた広大な土地に、薄く雪が積もっている。ちょっと歩くと、革靴の下で土が乾いた音を…

てい
3年前
2

リムナンテス(誕生花ss)

 その日は、朝から何かおかしかった。前日の夜遅くまで喧嘩していた筈の両親がニコニコと食卓…

てい
3年前

ハナカイドウ(誕生花ss)

 女が眠っている。  美しい女だ。  長く豊かな黒髪が、寝台の端から床近くまで垂れていて、…

てい
3年前
1

アイスランドポピー(誕生花ss)

 最近、とても調子が良いのよ。きっと、この間お医者様にいただいたお薬のお陰ね。眠れなかっ…

てい
3年前
1

スノーフレーク(誕生花ss)

 この町には、雪解けのころに行われる祭りがある。他の町ではこんな時期に祭りをしているなん…

てい
3年前
1

ネモフィラ(誕生花ss)

 姉上は美しく聡明で、将来、この国を負って立つにふさわしい姫君だと、王族の中でも噂されるほどだった。如才なく立ち回り、王族としての気品ある振る舞いを完璧に身につけた姉上は、妹の私にもいつも優しく、どんないたずらで困らせたとしても、許してくれた。それは、長じた今でも、なお。 「姉上! ここはもう危険です、城壁は既に民衆の手で打ち破られました……!」  私が息荒く報告すると、姉上は優美に立ち上がった。明るい額には曇りひとつ浮かばず、私の気ばかり先走るようだ。 「そうですか……お父

ストック(紫)(誕生花ss)

 彼女の愛は雄大だった。生けるものと死せるものとを同時に胸に抱き、等しく、あやすように揺…

てい
3年前
1

ミモザ(誕生花ss)

 部族長の娘に求婚するために、数多の男が命を失った。古来より伝わる伝統的な求婚の儀に、あ…

てい
3年前
4

ゲッケイジュ(誕生花ss)

 月の都には、大理石のように白く、美しい木が何本も立っている。丈の高い、曲がることなく天…

てい
3年前
2

チューリップ(パーロット咲き)

 相手に捧げる愛、献身的に支える愛、盲目的に尽くす愛、エトセトラ。愛には色んなバリエーシ…

てい
3年前

カモミール(誕生花ss)

 いつものように業務を終えてロッカールームに入ると、同じ高校のバイト仲間が休憩用の椅子に…

てい
3年前
2

アルメリア(誕生花ss)

 カウンセリングの基本は傾聴だ。相談に来た相手の悩みをまずはしっかり聴いて、その感情を肯…

てい
3年前

ネコヤナギ(誕生花ss)

 ルームメイトが猫に似ている。  大きくぱっちりした目は少し釣り気味だけど、表情豊かで可愛らしくて、くるくるとよく動く。休日は陽の当たるところで丸くなって寝ているし、興味のないものには見向きもしないところが、ますます猫っぽい。そういえば彼女、お風呂が嫌いだとも言っていた。猫が大好きで、実家の猫に会えなかった時期には軽いロスすら経験した私にとって、彼女のようなルームメイトは理想的としか言えない。だから、私はつい、彼女を構いすぎてしまう。 「あんた、しつこい。あたしはあんたの猫じ