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ていの創作小説

433
自分の創作小説をまとめています。
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2020年12月の記事一覧

八重咲きストック(誕生花ss)

『その美しさを永遠に保ちたくはありませんか』  という謳い文句に誘われて、自らの美しさを…

てい
3年前
1

ハボタン(誕生花ss)

 新しく配属された先は、キャベツ農家だった。年の初めに簡単な研修を受けて、既に何列にも綺…

てい
3年前

ホオズキ(誕生花ss)

 クリスマスも終わり、年始に向けて忙しそうに行き交う人混みの中、黒っぽい人影を見るたびに…

てい
3年前
1

ミカン(誕生花ss)

 コタツの中はいつでも変わらない。私の冷え切った足先を優しく暖めてくれる温度は一定不変で…

てい
3年前
4

レオノチス(誕生花ss)

 炎のライオンがやって来るという報せに、世界中が恐慌に陥った。 「まさか、まだ早すぎる。…

てい
3年前
1

ブバルディア(誕生花ss)

 ーーでは、教授の新たな研究は、当初、夢物語だと思われていたんですね? 「ええ、そりゃあ…

てい
3年前
2

ブルーデージー(誕生花ss)

 純粋な君を汚してはならない。  ぼくの中の、このおどろおどろしいもの、君に纏わりつく、どす黒い粘着質の汚物の塊で、君の水晶のような透き通った魂を汚してはならない。ぼくは、ぼくのコートが君のスカートに触れるだけでも罪悪感に苛まれる。通学バスで隣に立って、君のお気に入りのコロンの香りを吸い込んだだけで、その場に平伏して謝りたくなる。  それなのに君は、コート越しにぼくの腕に抱きついて、楽しげに話す。今日の担任の服装、お弁当のおかず、窓から見た雲の話。純粋な君の口から出てくる言葉

ヤドリギ(誕生花ss)

 ヤドリギの下で、彼を待つ。雪がちらほら降り始めて演出は最高だ。聖なる夜だけあって、私と…

てい
3年前
2

サイネリア(誕生花ss)

 快活という言葉が嫌いだ。もっと言うなら、快活な人間が嫌いだ。 「ねえねえ髪型変えた? …

てい
3年前
2

ポインセチア(誕生花ss)

 心は熱いものだと、少女は言った。その時、青年は具体的な温度を尋ねたのだが、それが愚問だ…

てい
3年前
2

プラタナス(誕生花ss)

 その木は、長いことその場所に立ってきた。まだ若かった時に人の手によって植えられ、多くの…

てい
3年前
4

ラークスパー(誕生花ss)

 その旅人は、いかにも身軽そうだった。大きなバックパックを背負い、たくさんのステッカーに…

てい
3年前
1

クリスマスローズ(誕生花ss)

 耽美主義で知られる皇帝の命によって、彼女たちは作られた。特殊な技術で、ものを記憶する能…

てい
3年前

グロリオーサ(誕生花ss)

 炎の女王は誰も寄せつけない。生まれた時から全身を炎に包まれている彼女は、王国に伝わる炎の剣を軽々と扱い、多くの戦果を上げてきた。国民は彼女の燃え盛る赤髪を勝利の象徴とし、崇敬した。誰もが彼女の孤高に敬意を払った。その中に、女王が遥か昔、愛した者もいる。  まだ若く、自らの力を正しく振るう方法を知らなかった頃、彼女は一人の召使を愛した。召使は、彼女が感情の昂りとともに炎を制御できなくなった時、身を挺して彼女を止めた。全身に火傷を負って尚、涙に咽ぶ彼女に微笑んで見せた。  それ