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ていの創作小説

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自分の創作小説をまとめています。
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2020年7月の記事一覧

カサブランカ(誕生花ss)

 知能・身体・遺伝子検査、星間渡航歴、等々のあらゆる検査や調査を2年がかりでどうにかパス…

てい
4年前
6

スカビオサ(誕生花ss)

 ある所に、それはそれは美しい少女がいました。美しい少女の父は悪政を為す地方領主で、毎晩…

てい
4年前
2

アンスリウム(誕生花ss)

 不動明王が枕辺に現れた時、私の髪はちりちりと焦げ、嫌な匂いが鼻を刺した。暗がりの中あか…

てい
4年前
3

サンスベリア(誕生花ss)

「不滅の命を持っていると言う虎の尾を取って参れ」  帝の言は絶対です。そんな虎いませんよ…

てい
4年前
6

カンパニュラ(誕生花ss)

 大学を出てすぐ一人暮らしを始めた姉は、何で稼いでいるのか知らないが、小さな庭付きの一軒…

てい
4年前
2

カラー(誕生花ss)

 死んだ従姉妹と結婚してくれと言われた時は、流石のおれも断ろうかと思った。  なんでも実…

てい
4年前
3

アガパンサス(誕生花ss)

 2週間の実習も今日で最後となったが、未だに実習先へ向かう緊張感は拭えない。私は忘れ物がないかという強迫観念に駆られながら、山沿いの道を急いでいた。  そこへ、不意に一人の子どもが現れた。立ち塞がった、と言っても良い。小学生低学年くらい、少しぽっちゃりとした体型の、可愛らしい男の子だ。早足でその横をすり抜けようとしたが、男の子は黙ったまま、私の行手を阻んだ。道幅は狭い。なんだろう、大人をからかっているんだろうか。  私は困り顔を作って、男の子を見た。お姉さんはここを通りたいん

アサガオ(誕生花ss)

 就活から帰ってきた彼が、エプロンを付けようとしている私を見て、「料理ならおれがするよ」…

てい
4年前
8

ブーゲンビリア(誕生花ss)

「あなたしか見えない」  初対面の時、彼女は震える声でそう言った。それは決して比喩ではな…

てい
4年前
6

ケイトウ(誕生花ss)

 ヒユさんは変わっている。  まず、髪の毛が真っ赤だ。私たち、まだ小学生なのに、あんな色…

てい
4年前
5

トケイソウ(誕生花ss)

 幻覚を見た。  おれは、どぎつい紫色の壁に囲まれた円形の部屋にいた。床には壁に沿って1か…

てい
4年前
5

ヒマワリ(誕生花ss)

 黄色、黄色、中央に茶色、下葉は緑、そして黄色、黄色。  背丈より高い、大きな黄色い花々…

てい
4年前
8

ラベンダー(誕生花ss)

 一面に広がる、落ち着いた紫色の花畑。その色と同じく、気分を落ち着かせてくれる甘く独特の…

てい
4年前
8

新世界(短編小説)

 白い部屋にさ、僕はいるんだ。  そこでは僕のほかに誰も生きていなくて、そこには僕のほかに誰も入れはしないんだ。そこで、僕は寂しくて寂しくて、誰かに来て欲しくて誰かに見て欲しくて、僕がここにいるってことを知ってほしいと思ってる。願ってるんだよ、一心に。  僕は白い白いそれは真っ白で、純潔みたいな純白の服を着てるんだ。壁や床と同じ白さで、眼も眩んじゃうほどに真っ白なんだ。僕は部屋の中で、ただじっと膝を抱いて座って、白い壁を見つめて、寂しさに耐える。耐えて耐えて耐えて耐え抜けば、