穏やかな最期の日々

令和2年、2月の3連休。

あたしは、元カレの家にずっといる。

あたしが拾ってきた、にゃおん(女の子)が発情期だから、なかなか慣れないあたしにもスリスリしてくれる。

あたしはやらなきゃいけない身辺整理を放ったらかしにして、元カレの家で借りてきた漫画を読み、猫と遊び、美味しいごはんを頂き、元カレの家の掃除なんかをやって、穏やかに過ごさせて貰ってる。

まるで、この先まだずっと続く日常のような、何もない穏やかで幸せな日々。

あたしは4年前にこの日常を、自ら壊したんだ。

そして、もう2度とその日々には戻れない。

罪という現実は、自分が作り出し、決して逃れられない、今という現実。

逃避してるわたしは、昨日、亡くなった彼の夢を見た。

彼が、本当は生きてて、急にわたしの布団に入ってきて、謝る夢。

本当は死んでなんていなくて、実は、別の女の処に居て、帰ってきた。

あたしは、彼に呆れて、怒って、夢の中でも、もう知らないよって、突き放した。

みんな、凄く凄く悲しんだんだよ?

あたしは、貴方の後を追って、今月末に死のうとしてたんだよって、怒りながら。

アレ?本当に生きてるよね?これは、夢じゃないよね?って、夢の中で夢だと気がついた。

火葬したのは誰?あの時泣きながら拾ったお骨は?って、気がついて、目が覚めた。

凄くリアリティのある夢で、久しぶりに生きている、動いている彼に会えた。彼と話した。声をしっかり、覚えている。

彼は、だって怒るでしょ?とあたしに甘えて、

拗ねた。

そして、あたしが1番なんだと、愛してると言った。

夢の中で夢だと気づいてなお、醒めたくない。

迷惑ばかりかけられてるけど、一緒に死ねると思ったら、嬉しかった。

あたしは、優しい、慈愛に満ちた元カレの隣で、

あたしが面倒を見なきゃいけない彼を見捨てられないと思った。

生きていた頃と全く同じ。

寂しくてSEXばかり求める彼。

他の女の子がいっぱい居て、なのに私に戻ってくる彼。

いつも何か言いたいことを我慢して、ごめんって謝る彼。

とても久しぶりに、彼に会えた。

夢の中でも、亡くなる前と同じ。

良い思い出ばかりになってしまいつつある彼に、現実に引き戻された。

あと、4日。

あたしは昔から、終わりの日がわからないと進めないみたい。夏休みの最後の2日で宿題をやるみたいに。そして、年齢を重ねるごとに、終わりまでに間に合わなくなってしまった。

自分の能力を過信して、自分のCPUのキャパを理解していない。RAMが4GBしかないのに、8GBの仕事を同じ時間でやろうとしてる。

core2duoのままなのに。

追加のメモリを搭載しても、本来のCPU速度は変わらない。周りが、追加のメモリになってくれて、今まで表面上は動いてきただけ。

早くおいでって、迎えに来てくれたんだよね。

あたしの覚悟を後押しするために、まだ居てくれるんだよね。

あたしを待つこと、あたしに待たされることには、慣れてるって言ってくれたね。

待たせてばっかりでごめんね。

先に逝ってしまった貴方の残した分も、処分してるんだよ。でも、もうすぐ終わるから。

もうちょっと待ってて…(汗)

あんな風に言ったけど、やっぱりあたしは貴方のことを捨てられないよ。あたしのことを許してくれた貴方を、あたしを選んでくれた貴方を、最期までそばに居てくれた貴方を、1人で先に逝くことを選んだ貴方を、愛してる。

たった1年も一緒に居られなかったのに、あたしの心には、貴方の跡と痕が刻まれて、消すことができない。

消せないように、逝ってしまった。

あたしは、できれば、誰にも同じ想いはさせたくない。

にゃおんの体重が、今のあたしにはすごく重くて、温かい。ありがとう。






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