駅のホームを歩く話
私の最寄り駅は、ホームの一番端に階段がある。改札階に上がる階段だ。
私は帰り道、わざとホームの一番端っこに降りる。そして階段まで歩く。ホームの端から端まで歩く。
特に夜はほとんど人がいない。黙々と黙って歩く。
なんでそんなことをしているのかと、みな不思議に思うだろう。なんでだと思いますか?
きっと多くの人は、階段の真下に一番近いドアから降りられるように調整していることと思う。
それは効率よくするため。一秒でも無駄を省くため。そしてドアが開いた途端に、いかにも急いでいませんといった涼しげな顔をして早足で我先にと歩き出す。
私はぼーっと歩く時間が欲しい。
確かに効率とか無駄とかいう言葉は嫌いだ。ここ近年更に嫌いに磨きがかかってきている。
でもあまのじゃくな気持ちからこんなことをしている訳ではなくて、ただただ何も気にせずぼーっと歩きたいだけなのだ。分かるかなこの気持ち。
例えば駅から家までの道をぼーっと歩けば良いだろうと、そういう考え方もある。でもそれは意外と難しくて、車を気にしたり、曲がり角を気にしたり、犬の糞が落ちていないか気にしたり。色々気にしてしまう。
誰もいないホームをひとりぽつんと、トボトボと歩く気持ち。一度体験してみて欲しい。決して気持ち良くはないし、清々しくもないが、きっと間違いなく癖になる。
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