ラムネ引換券を持ってきてくれたおじさんの話
5年くらい前、働いてるお店で眼鏡の販売イベントを企画した。夏祭りをテーマにしようって考えて、イベントのダイレクトメール葉書の端っこに「ラムネ引換券」を付けた。この葉書をご持参いただいた方にラムネを差し上げます。
ラムネを目当てに葉書を持って来る人はあまりいなくて、来店した人に配ることにした。せっかくお店に来るなら楽しいことがあった方が良いし、ラムネのことを知らないで来て、思いもよらずラムネがもらえると皆喜んでくれた。暑い夏のラムネは美味しいから。
イベントは大成功で、浴衣を着て来てくれる方もいたりして、とても楽しかったんだけど。私が休みの次の日に「昨日これ持ってきてくれたおじさんいました」とスタッフに渡されたのは、切り取られたラムネ引換券だった。
みんな笑ってたけど、私は会ったこともないそのおじさんが愛しくて愛しくて胸がいっぱいになってしまった。
ラムネ欲しかったんだ。はさみじゃなくて手で折り目を作ってちぎったような切り方だった。その小さなラムネ引換券をスタッフに差し出すおじさんの姿を想像するだけで、もうなんとも切なくてあったかい気持ちになる。
ああ私はこのおじさんのためにダイレクトメールを作ったのもしれないな。
今その切り取られたラムネ引換券は、丁寧にラミネート加工して自宅の宝箱に入っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?