並走する電車に乗って考える話

電車に乗っていると、たまに同じ方向に向かう電車と並走していることがある。
あの感じが好きだ。

2つの電車は追い抜いたり追い越されたりを繰り返し、時には同じスピードで並走する。そしてたいていどちらかが先に行ってしまう。

向こうの電車をじっと見てしまう。
同じ四角い空間が、同時に同方向へ進む。
そこにはたくさんの人達がいる。
あんなに近くにいるけど、どんなに手を伸ばしても触れない。決してあっちには行けない。
乗りかかった船ならぬ、乗りかかった電車だ。

あっちに乗っている人はこっちのことをどう思っているのかな。みんなスマホに夢中で気づいてないけど、ときどき向こうに乗っている人と目が合うことがある。そんな時はちょっと嬉しくなる。

こんにちは、そっちの乗り心地はどうですか?
私達見つめ合いながら同じ方向に運ばれていますね。あなたは何を考えていますか?
二度と会うことのないあなたと、しばしの沈黙を楽しんでいる私がいるのです。

あの何とも言えない不思議な世界が私は何とも言えず好きなのである。

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