短歌の話

ある日突然、ツイッターのタイムラインにとある人の短歌が流れてきた。これはおすすめの記事というやつで、AIが勝手に私に教えてくれたとある人のとあるつぶやきだ。

なぜ?とは思った。というのも、私はこれまでの人生で短歌に興味を持ったことは一度もない。短歌に意識を向けたことだって数秒しかない。それくらい私の琴線にかすりもしなかった。

毎日AIおすすめのフォローもしていない誰かのツイートがたくさん流れてくる中で、その日私はその短歌を読んだ。そして雷に打たれた。

一体なんなんだこれは。これは一体何だというんだ!
びっくりしすぎて世界に聞きたかった。これが短歌だというのですか?私の認識していた短歌はもっとよく分からないもので、多くの人にとってのすばらしい短歌も、私にはそれをすばらしいと思う能力がなかった。

だけれどもこの人の短歌はものすごい。
力を感じる、生きている力を感じる。
言葉、リズム、流れ、思い、すべてが完璧だと思った。
そんな私と短歌との出会い。

翌月、浅草で行われたBOOK MARKETというイベントに行った。これは小さな出版社が集まり自社の本を売るイベントで、会場はもう本と人で埋め尽くされ、なかなか熱気あるものだった。個性あふれる本がめちゃくちゃたくさんある。じっくり見たいけど、人の多さと夏の暑さ(会場のエアコンははっきりいって機能していなかった)にやられて、なかなか買いたい本が見つけられない。落ち着いて見れない。

そんな時、とあるブースが気になった。それがナナロク社さんのブースだった。まず近藤聡乃さんの作品集がすごくお手頃な値段で売られていて最初そちらに注目したんだけど、そのブースには色々な歌集が置いてあった。あ、短歌だ。。

いくつか手にとってぱらぱらめくってみる。何個か読んでみる。そして気になる歌集を見つけた。
ブースの方が「その本いいですよ」といって、お気に入りなのであろう歌をいくつか私に読み上げて聞かせてくれた。うん、この人の短歌、なんかいい。そしてこのブースの人もなんかいい。そんな、本当に感覚というか、言葉にできない「なんかいい」で、私は人生で初めて歌集を買ったのだった。ちなみに近藤聡乃さんの作品集もちゃんと買った。

私にツイッターで雷を落としたその人の歌(それはもうその時点で恋だったのかもしれない)と、買った歌集の著者の方の歌はあまり似てなくて、でもそれぞれとても良くて、私を癒やす効果があった。

短歌に出会えて良かった。あの日、私のタイムラインに短歌が流れてきたこと、それを見落とさなかった私の目。全てが偶然だけどそれは現実で、私の人生にまた新たな色が塗られた。あれからずっと私は短歌が気になっている。

実際に自分でも短歌を作ろうとしてみたが、なかなかうまくいかない。難しいものだ。でもある日、ぽんとできたりする。不思議なものだ。

この歳になっても新たな発見や出会いってあるものなんだな。これからも短歌を、言葉を紡ぎましょう。いつまでも紡ぎましょう。

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