ミッドーノ・・・って?「こう聞こえる」らしいカタカナ発音に物申す!
英語とカタカナというのはいろいろな意味で切っても切れない関係にあります。
外来語はカタカナで書かれますし、外国人のセリフを「ソウデスネ」というようにカタカナで書くことで、まるで片言であるかのような雰囲気を出すこともできます。また英語の発音をとりあえずカタカナで表すこともあるでしょう。
今回はカタカナで書かれた英語の発音について書いてみようと思います。
英語をカタカナで表すには二通りあります。
1)一つは和製英語のようにローマ字読みのようなルールに従ってカタカナで書かれたもの。
例えば、peopleを「ピープル」など。
2)もう一つは英語の発音に忠実に(この「忠実」というところが問題なのですが)聞こえた音をカタカナに置き換えたもの。
同じpeopleだと「ピーポー」などと書かれます。
私はカタカナで書く英語(上記の1)に抵抗はありません。peopleをピープル、cruisingをクルージング、strategyをストラテジー、languageをランゲージ。それはそれでいいと思います。すでにカタカナの言葉として日本語になっているものがほとんどです。
でも発音のために書かれたカタカナ表記(上記の2)となると話は別。
私個人の意見ですが、総合的に見れば、発音のカタカナ表記は正しい発音への道に自ら壁を立てるようなものだと思っています。
「ミッドーノ」「マッダーナール」「メッダーノウズ」
これ、なんだと思いますか?
これはすべてマクドナルドの英語「McDonald's」の発音をカタカナに置き換えて「こう聞こえる!だからこう言えばいい!」とインターネット上で紹介されているものです。
「カタカナ英語でこんなに通じる!」と謳った本がたくさん出版されるほど、このカタカナ発音表記はもてはやされる傾向にあります。
一見「なるほど!聞こえた通りにカタカナにしてあるなら、これでネイティブのように喋れる!」と、魔法のように便利な発音表記に見えますが、よく考えていただきたいのは、まず、上記のマクドナルドの例のように、「忠実に音を再現した」はずの発音表記になぜこんなにバリエーションがあるのかということです。
これは、話し手の発音にこんなにバリエーションがあるのではなく、私たち聞き手の聞き方に個人差があるためです。聞こえた音をカタカナへ変換する過程にそれぞれ差が出るのです。そのため単語によっては上記のマクドナルドの例のように人によってカタカナへの置き換え方が全く違うという現象が起きます。
誰かが「私にはこう聞こえる」という主張する音をそのままカタカナで表し、さらにそれを他人が読む・・・これでちゃんと正しい英語の発音になっていると思いますか?
通じればいいんじゃないの?と思うかもしれません。
会話の前後や話しているときの状況で通じるときもあるでしょう。また、英語特有の発音そのものが身に付いている人が上記のようなカタカナ発音をしたら、無意識に英語らしく発音しているということもあります。おそらくこの場合も通じるでしょう。でも単純にカタカナで聞こえるとおりに書かれたという発音をそのまま読んで通じるか通じないかと言われたら、通じないことのほうが多いと思います。
ちなみに、私は個人的にはあまりお勧めしないカタカナの発音表記ですが、このカタカナ発音がとても役に立ち大変有効であったのだろうなと思う事例があります。
みなさんはジョン万次郎をご存知でしょうか。彼がアメリカから帰国した後に英米対話捷径という英会話の入門書を書いています。そこには英語の発音がまさに「聞こえたままに」カタカナで表記されています。
ただし、私たちが想像するのとはかなり違う発音の捉え方をしています。
例えば、
といった具合です。
彼は予備知識など全く無い状態で英語を習得し、聞こえるままにカタカナで表しました。もちろん、そんなふうには聞こえないよ!というような発音表記もありますが、一方でヱネセンキ(anything)モーネン(morning)などは私たちにとっては斬新でありながら、むしろエニシング、モーニングよりも通じやすいんじゃないかとさえ思わせられます。
英語の発音の音声メディアはもちろん、辞書さえなく、またネイティブの英語話者がほとんどいなかった時代の日本では、このカタカナ表記は大変重宝されたに違いなく、有効な英語学習法であったと思います。
カタカナ発音表記についてもう一つ、考えていただきたいのは、これはとても重要なのに忘れられがちだなと感じる点なんですが、マクドナルドが「ミッドーノ」と聞こえるからといって、McDonald'sは「ミッドーノ」と発音されているわけではないということです。
どういうことかというと、「ミッドーノ」において、McDonald'sの「c」と「ld's」はどこに行ったんだ、ということです。
「メッダーノウズ」では、McDonald'sの「c」「ld」はどこに行ったんだ、ということです。
そこをよく考えていただきたいのです。
その聞こえない部分に「c, ld」がどう収まっているのか。どうして聞こえないのか。どういう風に発音しているから聞こえないのか。
カタカナ発音表記を全否定しているわけではありません。発音が分からないし発音記号も分からない、ということもあると思いますし、どう発音したらいいのかなと思って見てみるのもいいでしょう。
でも、それは最初のステップであって、その後どうするかが大切なんだよ、ということをお伝えしたいのです。
聞こえたとおりにコピーして言ってみる、というのは間違いなく発音上達に有効な方法なのですが、その聞いた英語の発音と自分の発音の間にカタカナでワンクッション挟まないほうがいいと思います。英語の音をそのままコピーする、と強く意識してください。
そしてその時に、スペルにはあるのに聞こえない部分に注目してください。そこにあなたのもっと良い発音が隠れています。(無音・発音しない音もあるので注意してください。KnightのKなど)
いつまでもMcDonald'sは「ミッダーノ」、Do you want to・・・は「ジュワナ」、What do you mean?は「ワダヤミー」と発音していては、あなたの発音は良くなりません。本当はそう発音されていないからです。
それに、単語やフレーズごとにカタカナ発音を当てはめていては、英語の発音の仕組みの全体像が見えてきません。従って、ネイティブであれば感覚的に分かるような言葉の直観のようなものが身に付いていきません(この直観とは、膨大な言語のデータに基づいて無意識のうちに作られたルールのようなものです)。結果的にカタカナ発音で覚えた単語やフレーズは言えても、新しいものが出てくると発音できないのです。
英語には日本語に無い音がたくさんあります。声の出し方という点では、日本語とは全く違う方法で発声されていると言ってもいいでしょう。その日本語には無い音をどう作り出すか、どうやったらそんな音になるのか、ということをよく考えながら聞いて、発音の練習をしてください。
あえてカタカナで「こんなふうに聞こえる」というカタカナ発音の捉え方をするならば、どうしてDo you want to (アメリカ英語)は「ジュワナ」と聞こえるのか、Do you want toをどう発音すれば「ジュワナ」と聞こえるのか、Do you want toのどの部分の音が隠れてしまっていて、そしてなぜそれは隠れてしまっているのか、ということをよく考えてください。
そして、Do you want toを子音も含めてちゃんと発音しているのにネイティブのように「ジュワナ」と聞こえるようになることを目標としてください。
※余談ですが、イギリスやオーストラリアの英語では「ジュワナ」とは聞こえません。あえてカタカナで書けば「ドゥーユーウォントゥー」と聞こえます。
日本語訛りでもいいんです。日本人特有のクセがあってもいいんです。でも「こう聞こえるから」と聞き手の日本語のルールによって勝手に音が省略されたカタカナ発音を目標とするのではなく、実際の発音とスペルを照らし合わせて発音を上達させていきましょう。
自分ではちゃんと子音も母音も正しくDo you want to、McDonald's、と発音しているのに他の日本人には「ジュワナ」「ミッダーノ」と聞こえるようになったとき、あなたの発音はアメリカ英語のネイティブ並になっているかもしれません。
今回の記事はここまでです。読んでくださってありがとうございました。
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