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コロナ禍GWに考える "生物とは何か”② -めぐもり的生物学三種の神器-

今回は3部構成でお送りします。続いて第二部。
1: コロナ禍GWに考える "生物とは何か”① -私たちの生物との出会い-
2: コロナ禍GWに考える "生物とは何か”② -めぐもり的生物学三種の神器-
3: コロナ禍GWに考える "生物とは何か”③ -生物学、学術界のこれから-

①を受けて、概念的な「生物」の分野がどのように発展してきたのか、今回は以下の3つの大きな貢献をしたツールを起点として、考えていきます。

1) 統計モデリング
2) 顕微鏡
3) 次世代シーケンサー

※調査不足で想像で書いている箇所多いですが、ご容赦ください。。
※CTとか、そのほかの検査機器とか、解剖刀とか、他にも迷ったのですが、勉強会での要望が多かったものを選びました。。!決して、骨格標本大好きな気持ちは捨てておりません!!

1-1. 近世ビックデータ

身近な "彼ら" (=生物)への純粋な興味から、観察を重ねた時代。

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Wikiより種の起源[1]

会社に入ってから、ビジネスモデルや財務諸表の勉強を始めて、貿易に興味を持ち始めております。そんなことをしている中で "再会" したのがロスチャイルド家。世界最強の銀行系財閥としてご存知の方は多いのではないでしょうか。

一方、私がその名を初めて聞いたのは高校生の時でした。博物学に興味を持ち始めた頃、お世話になった川田伸一郎先生に教えてもらいました。

ウォルター・ロスチャイルド、彼がどういう人かというと、とにかく標本が大好きな方だったようです。今でも、彼が寄贈した標本が数多く残されていることから、その名は博物学界隈ではとても有名です。

彼の生きた時代周辺を少しネットで調べてみました。

15世紀中ごろから17世紀中ごろ 大航海時代
1859年11月24日 種の起源 発行
1868年2月8日 2代ロスチャイルド男爵 ライオネル・ウォルター・ロスチャイルド 誕生
1875年? 7歳にして博物館を作る宣言
1889年? ウォルター・ロスチャイルド動物学博物館を21歳?の誕生日プレゼントとしてもらう
1892年の8月に一般に公開

安易に想像すると?、大航海時代に新しいものに触れて、違う文化が混じり合ったことによって、博物学、比較形態学、分類学、が発展して言ったのでしょうか。。?そのヒントを探すべく、彼の博物館を見てみましょう。

【引用文献】
[1] 種の起源-Wikipedia

1-2. ウォルターロスチャイルド博物館

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こちらは、先ほどの年表で記載したロスチャイルドの博物館です[2]。私も実際に18の時訪れたのですが、現地は圧巻です。紙と鉛筆、ボードだけが置いてあり、幼稚園から小学校低学年くらいの子供達が自由に出入りしています。

ここの博物館の何がすごいかというと、画像の通り、説明文がほとんどない、収蔵庫のような博物館なのです!ただ動物たちが並んでいるだけ、そんな空間に一般の方がいつでも無料で行き来できる、児童館・公民館のような広場です。

現地で耳をすませてみると、こんな会話が聞こえてきました。

「あっちの猿ははなが小さいのに、どうして、こっちの猿ははなが長いの?」

そう呟いていたのは、小学校2年生くらい?の女の子二人組です。何やら、入り口にある紙に鉛筆でひたすら絵とメモを描いています。

きっと、ロスチャイルドが感じた世界も、そういう世界だったんだろうなあと想像します。色々なものが集まり、違いが見えてきて、その世界にのめり込んだロスチャイルド少年の世界観が、生物の、特に博物学・分類学を加速させたのでしょう。

【引用文献】
[2]Walter Rothschild Zoological Museum

1-3. 統計モデリング時代

貿易が栄え、情報が増えたことにより、急速にわかってきた世の中の生物の実態。ここに、近年、新たなアプローチの一つとして、統計モデリングの世界が入ってきています。

皆さんはベイズの定理をご存知でしょうか。高校の数学Aで履修するようなので、知っている人も多いのではないでしょうか。ベイズの定理自体は1763年に発表された定理です。そこまで新しくないですね。

ベイズはすぐにブレイクした訳ではないのです。諸説ありますが、その舞台裏にはマルコフ連鎖モンテカルロ法(Markov chain Monte Carlo methods: MCMC)という存在がいたという説を唱える人が多いようです[4]。

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[5]より引用しましたが、電子計算機の誕生により、様々な分野に応用することができるようになりました。その一つに、生物と環境、または生物同士の相互作用を理解しようとする生態学という分野があります。

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この新しい技術により、わかっていなかった野生生物の個体数を推定し、マネジメントしていくことが可能となってきました[6]。なんとなく、私たちの周りにいた生物が実際にはどんな集団なのか、どんな生活をしているのか、ということが少しずつ明らかになってきました。

どんどんわからないことがわかるようになり、世界がマクロに広がっていくのを感じていただけたのではないでしょうか。続いては、小さな世界の大きな広がりについて見ていきます。

【引用文献】
[3]ベイズの定例-Wikipedia
[4]統計学の歴史と哲学
[5]MCMC チュートリアル
[6]全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について(令和元年度)

2-1. 顕微鏡

今回、勉強会を開くにあたり、意外と多かったのが「電子顕微鏡について知りたい」という要望。なんと!?生物は学んできたけれども、顕微鏡は学んできていないぞ?機械だから物理工学の方が詳しいのでは??と思いながらも、調べていくと、楽しい世界が広がっていました。

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ロバート・フックの顕微鏡[7]

最初の顕微鏡が作られたのは1590年のようです。光学顕微鏡の発展は17世紀後半にアントニー・レーウェンフック, ロバート・フックがそれぞれ功績をあげたことから始まったようですね[8]。

細菌が引き起こす発酵については以前から研究されていたようですが、その正体が明らかになったのは1676年のこと。アントニ・ファン・レーウェンフックによって発見され原生動物と合わせて“animalcules”(微小動物)と呼ばれたそうです。

電子顕微鏡は19世紀末ごろから、始まり、より小さなウイルスについて詳細な構造がわかってきました。

歴史の話はこれくらいにしておいて、顕微鏡で見える世界をみてみましょう!ウニの幼体はその中でもとてもキレイで、私も大好きな絵が見られます。これらの映像から、顕微鏡が明らかにしてきた世界を感じていただければ幸いです。

初めて見た方いらっしゃいますか!?とっても可愛いですね!!!

これが電子顕微鏡になると、ここまで鮮明に見られるようになります。

はい。正直、これ以上のことはよくわかっていませんが、色々な世界が見えるようになったことが見て取れます。特に、細胞学の進歩は、顕微鏡なしには成し遂げられなかったと思っております。。

続いて、このような細菌やウイルスの微細な対象についての研究が進んだことにより発展したと思われるトピックスを一つ紹介します。

【引用文献】
[7]ロバート・フック-Wikipedia
[8]顕微鏡入門ガイド(キーエンス) 顕微鏡の歴史

2-2. 人獣共通感染症 zoonosis

続いて、そのような微細なものたちが引き起こす、病理の世界をみて行きたいと思います。

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A型インフルエンザウイルスの宿主域[9]

鳥インフルエンザ、豚コレラなど、動物の名前と病原体が並んでいる名称を、誰もが一度は耳にしたことがあるのでは無いでしょうか。人と獣に共通する感染症は数多く報告されていますが、同じ病原体でも、媒介しない動物同士とそうで無いものがあります。

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哺乳類の進化系統図[10]

この感染のしやすさについて、系統樹で比較してみたいといつも思っているのですが、その関係については検索で簡単に出てくるほどには明らかになっていません。

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遺伝子の再集合[11]

このような複雑さが起きる原因については、私が軽く調べた程度だと言及できない状況です。個人的な見解として、可能性の一つに遺伝子の再集合により、新しいウイルスが誕生する、という仕組みが関係しているのでは無いかと考えています。

この領域は、生物と人間とが共存していく上で、もっとも重要な領域だと考えています。ミクロな研究領域の発展により、より良いエコシステムが形成される日を願っております。

それでは、続いて、さらに細かい「情報」を読み取りにいった遺伝子の秘密について考えていきましょう。

【引用文献】
[9] インフルエンザウイルスのレセプターと宿主域変異機構の研究フロンティア
[10]生物史から、自然の摂理を読み解く 哺乳類の起源と歩み~哺乳類の多様化と進化系統~
[11]「怪物」かも…新型コロナと新型インフル「不気味な共通点」があった

3-1. 生物の情報 -遺伝-

遺伝と言われると、今ではDNAのらせん構造を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。そこまでの情報として始まった遺伝の世界をのぞいてみましょう。

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メンデルの法則が記載された論文[12]

これは1866年に発表されたメンデルの論文です。メンデルの発見によって、どんなことがわかったのでしょうか。

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二つの形質をもつ親がいたとして、上記のようにそれぞれの世代で異なる形質が発生する可能性があります[13]。このような親子間の形質の違いから、メンデルは3つの法則、(1)優劣の法則(2)分離の法則(3)独立の法則をまとめました。詳細は引用文献をご覧ください[14]。

ここから、「生物」はなんらかの情報を持ち、それを継承していくことがわかってきました。そんな情報について、さらに詳しい世界をみてみましょう。

【引用文献】
[12] Mendel, Gregor: Versuche über Pflanzen-Hybriden. In: Verhandlungen des Naturforschenden Vereines in Brünn 4 (1866), S. 3-47.
[13]ねおぶろぐ 「野菜」色・形・大きさ・味…なぜ同じなのでしょう「F1品種の謎」
[14] 遺伝子電子博物館

3-2. 次世代シーケンサー

私たちは何者なのか、その情報を読み解く、新しい技術について少し触れてみます。

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次世代シーケンサーを用いた生物・医学研究が爆発的に活発化しました[9]。

DNA上の塩基配列を読む方法が開発されたのは1975年とだいぶ昔のことのようです[10]

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サンガー法によるDNA配列決定法を述べた最初のJ.Molecular Biologyの論文。右上の写真はサンガー博士[10]。

途中の詳細はまだ調べきれていないのですが、、そこから、2007年に次世代シーケンサーが開発され、 翌年の2008年には、ワシントン大学の研究グループが白血病患者の全ゲノム配列を解読し、Natureに発表したそうです[9]。

1962年、ワトソンやクリック、ウィルキンスと共に、DNA二重螺旋構造発見の功績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞した時から、実に半世紀ほど経過していますね。ちょっと驚きました。

実際に、どんなことをやっているかというと、以下のように、コロナで話題のPCRを使って増やして、整理整頓してます、という雰囲気です[11]。

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ちなみに、PCR自体はとてもシンプルな手法で、1983年にキャリー・マリス(Kary Mullis)によって発明された手法です。

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遺伝子技術の動画は最近とても綺麗になっていて見入ってしまうものばかりです。ぜひ英語で検索して、ご飯を食べながら談笑の肴にお使いください。似たような動画であれば、DNA転写/翻訳、タンパク質生成もおすすめです。


【引用文献】
[9]次世代シーケンサーで、研究も医療も変わる!
[10]BRH 進化研究を覗く 次世代シークエンサー
[11]コスモ・バイオ株式会社 次世代シーケンシング(NGS)とは
[12]PCRの基礎知識

まとめ

今回は、3つの生物学を発展させたツールを中心に話してみました。

「生物」は概念的である、と話しましたが、その時代に身近だったものを探求してきた、先人たちが作り上げた何者かを感じていただければ幸いです。

きっと他の学問領域も近しいものがあるのだと思っていますので、みなさまそれぞれの領域について、今度話を聞いてみたいと思いました。

続いては、そんな時代が作り上げてきた「生物」の形、「生物」への探究が、今後どうなっていくのか、一緒に考えていきたいと思います。私も答えはわからないですし、色々なご意見が聞けたら嬉しいと思っています。

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