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アイドル

ここで酷く残念な知らせをしたいと思う。君のガタガタの歯が並んでしまった。悲しげだった睫毛はいつ見ても天を向くようになって、指先はカラフルな色で染められている。とても無防備で少しでも触れたら魂まで揺らせられるような、そんな君が好きだった。今、君の瞳に僕の影が映るかな。ふと僕の名前を声に出してくれるかな。コンビニで僕の好きだったアイスを選んでくれるかな。誕生日がくる度に僕が歌った下手くそなバースデーソングを思い出してくれるかな。あの橋を通る時は僕が死のうとした夜のことを考えてくれるかな。僅かな希望に上辺だけの喜びをのせて、今日も画面の中の君を見つめる。どうしたら君の1番になれただろうか。

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