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すいか

 たべものについて書きたいと思う。食べるということは他者を取り込むという、ちょっといじましいことだと思う。楽しみでもあり、かなしみでもある。最近、すいかは食べなくなった。あれは、たくさんで食べるとおいしい。夏休みの田舎で海水浴のあと、お昼寝をして、いとこたちと食べるのがいちばんおいしかった。今日はあまくないねっといいながら、塩をかけて食べる水っぽいすいかでも楽しかった。よしながふみの漫画「昨日何食べた?」で主人公の筧がスーパーで出会った友人の加代子さんと友情をむすぶのも、すいかを分け合ったことからだ。最新号では、加代子さんが念願の娘夫婦と孫とご飯がたべれるようになって、そうめんをおすそ分けにきた筧さんとすいかを分け合って、食べるのである。この漫画のなかの加代子は人に愛をおくる、平凡だけどつよい人でたのもしい。すいかは、わかちあうということの象徴的なくだものだ。だから、「夏の思い出」というと、絵日記帳にはすいかがつきものなのだ。定番だけれども、そして、失われていくけれども、失くしたくないくだものだ。

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