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ティラノゲームフェス2022 フィナーレによせて

先日、ティラノゲームフェス2022がフィナーレを迎え、入賞作品の発表がありました。

『パラドクス研究部の解けない謎のナゾとき』で参加しましたが、プレイしていただいた皆様、コメントやファンアートを送っていただいた方々、応援していただいた方々に改めてお礼を申し上げます。

また、プレイヤーの立場として他の方々の作品をプレイしましたが(プレイできた作品数は少ないですが)、新たな気づきや発見、新たな世界との出会いなどがあり、大変有意義で刺激的なものでした。

こうした素晴らしいフェスを開催された運営のシケモクMK様に感謝申し上げます。

以下「だ・である」調で書かせていただきます。

自作『パラドクス研究部の解けない謎のナゾとき』について

●コメントについて

フェスを通じて、こうしたパラドクスが好きだ、自分もこういうことを考えたことがある、などのコメントをいただいた。

多くの人に分かりやすい作品になるようにと心掛けたものの、分かりにくい部分も多い作品であると思っていたので、こうした共感のコメントをいただけて、ほっとした。

こういうのが好きな人は意外といるんだ、じゃあもっと尖らせても大丈夫かな、などと思ったりしている。

●ファンアートについて

ファンアートをいただけたが、イラストを描いた方それぞれの絵柄の個性が強く出るので、自分の作品が少し姿を変えて再表現される楽しさを感じる。

つまり、絵柄を超えたところに、何らかの抽象的な概念としてのキャラが存在しているわけだが、そうした共通性と、イラストを描いた人それぞれの個性の差異の共鳴は、実に興味深いものである。
(この認識の話は、本作のパラドクスにもつながる話である)

一方通行ではない創作は大切なものだし、作者・プレイヤー同士の距離が近いフェスならではの良さだと思う。

●実況について

本作はフリーゲームを実況するVTuberの野中ソルトさん(ツイッター:@Salt_nonaka)に実況していただけた。

野中ソルトさんのことはそれまでは存じ上げなかったのだが、実況をきっかけに、その活動方針(埋もれた良い作品を発掘して関係者win-winの関係を作りだす)に共感し、好きになってファン活動を始めるという、自分でもまったく予想していなかったことが起こっている。

人間一人の想像力には限界がある。
それを突破するのは、偶然性であったり、他者性であると思う。
人生思い通りにならないことは多いが、そうした偶然性や他者性の要素を積極的に自分の内部に取り込んでいくのが重要である。
それが本作のテーマでもあり、それを実践するまでである。

●フェスの部門賞(審査員特別賞)について

審査員特別賞となった21作品のうちの1つに選んでいただけた。

フェスの結果発表のサイトによると、この審査員特別賞というのは「ゲームのおもしろさと前衛的な表現を両立」がポイントとのこと。

文字には文字にしか表現できないこと、イラストにはイラストにしか表現できないこと、そしてゲームにはゲームでしか表現できないことがそれぞれあると思っている。

それらと自分の描きたいテーマ・モチーフをどう融合させていくかが重要と思っているので、こうした観点で選んでいただけたのは嬉しい。

●黒うさBOX賞について

ユウさんからスポンサー賞として、黒うさBOX賞をいただいた。
(なお、以下で触れる通り、僕はスポンサー賞をユウさんの「Idiot Savant」に贈っており、結果的にユウさんとお互いに贈り合う形になったが、これは何ら意図したものではなく、お互いの心に突き刺さった結果である。)

黒うさBOX賞の理由を以下に引用する。

黒うさBOX賞
謎解きミニゲームもあり、世の中の様々な事柄を考察しつつ、一つの作品にまとめた一作。 謎解きも、パラドクスというテーマも大好きなので、非常に楽しめました。 勿論、テーマもとても好みなのですが、そのテーマを形作る個性的なキャラクター、UI、そして部活動という舞台。 悩み悩める少年少女たちがパラドクスに向かい合う様は非常に心が熱くなります。 また、ゲームだけではなく、noteで綴られる作者様の作品への想いも、この世界に浸り続けられる作品の一部ではないかと思います。 それら含めて、素晴らしい作品だと思います!

TYRANO GAME FES 2022 結果発表サイトより

パラドクスのテーマのほか、部活動を舞台にしたという点も共感ポイントだったようで、大変ありがたい。

僕は学生時代に文芸系の部活に在籍しており、部室の雰囲気、部員同士のとりとめのない雑談、窓からの景色、季節の変化、部室に置かれたノートに各自が好き勝手に記していくことなど当時の部活を思い出しながら、ゲームで表現した。
(こうしたことも、今後自己解説でnoteに書いていきたいと思っている)

また、noteに書いている自己解説での想いにも触れたコメントをいただき、嬉しい限りである。

本作の分かりにくい面を補うべく、自己解説をnoteに書いているものの、まだ本編の解説が始まっていない。
先が長いものになるが、時間がかかっても、自分が込めた想いは明確に記しておきたいと思う。

小ネタや、ちょっとした謎、何かへのオマージュの言い回しなども膨大な量を仕込んであり、それらの解説もしたい。
(解ける人がいるなら解いて欲しい)

僕が贈ったスポンサー賞「Therapy for "i" 賞」について

「自分のツボに最も刺さった作品はどれか」という観点のみで選んだ。

僕は「狭く・深く」というタイプの人間であり、気に入った作品は最低2回はプレイしたいので(全エンド回収して物語全体を理解したうえで、作者がそれをどのように描いたかという目線で最初からもう一度見たい)、プレイできた作品数は非常に少ない。
時間が足らずにプレイ途中という作品もある。

そうした限られたプレイの範囲内であるが、僕のツボに最も刺さった作品として「Idiot Savant」に「Therapy for "i" 賞」を贈らせていただいた。

その理由は、ティラノ公式サイトにもある通り、以下のものだ。

Therapy for "i" 賞
精神疾患という難しい題材をうまくゲームとして表現した作品です。個性的なキャラたちは、それぞれ様々な症状を抱えていますが、それは大なり小なり、我々の誰しもが抱える問題でもあります。プレイヤーは、キャラに自分自身を重ね合わせ、「I(私)」の物語として、「imagination(想像力)」溢れる世界に介入して、適切な「ai(愛)」の形を探っていくことになります。これは、"i"の治癒(Therapy)に向けて、HappyEndを目指していく物語です。

この文章はフェスのサイトに掲載され、「Idiot Savant」をまったくプレイしたことがない人も読むことを意識して書いた。

「HappyEndを目指していく物語です」という一文に偽りはない。
しかし、作品の魅力が凝縮されているのは、HappyEndの世界線に上書きされ、「虚」空の彼方へと消えていったBad EndやMerry Bad Endの方にこそあることは、これをプレイした人であれば、誰しも感じることであろう。

優れた作品が、強大な悪役あってこそ物語が引き立っているのと同様に、「Idiot Savant」は、Bad EndやMerry Bad Endの魅力が、その物語を虚の世界から支えている作品である。

こうした観点から、僕が贈るスポンサー賞の名称として「Merry Bad End 賞」や「虚の物語 賞」、「ゴシック賞」などの候補名を考えたが、未プレイの人が見ると誤解を招く恐れがあることから採用しなかった。
(なぜ「ゴシック」なのかについては、説明が長くなるのでここでは割愛する)

未プレイの人に予断を与えないように気を付け、また、僕の偏った嗜好が出ないように意識して、テーマの精神疾患にちなんで「I(私)」「imagination(想像力)」「ai(愛)」という3つの"i"に絡めたTherapy(セラピー)の賞とした。

"i" 賞としておきながら、当然言及すべき「虚数の"i"」に触れなかったのは意図的である。
マニアックな内容にならないように意識したことと、言及しないことで逆に意識されることもあろうという想い、そして表に出てこないことは虚数の性質にも通じるものがあるなどと考えたからである。
きっと虚数のニュアンスが隠されているのだろうと察した人がいたら嬉しい。

個人的な想いを全開にして述べると、「Idiot Savant」はティラノフェス2022で最も幻魔怪奇な作品で、これをプレイするものは一度は精神に異常をきたすものである。

こうした「令和の『ドグラ・マグラ』」とも言うべき作品が生まれたこと、そしてそれをリアルタイムでプレイできたことの幸福を噛みしめたい。

プレイの感想については、フェス中のコメントとして投稿したが、そのときはまだ読み込みが浅かった。
その後、何度もプレイし、この「Idiot Savant」なる物語が一体何なのかが
ようやく掴めてきた。
(フェスなのだから、もっと他の方の色々な作品もプレイして、たくさんの方と触れ合うことが大事とは思うものの、気に入った作品を徹底的に読み込んで、己の血と肉になったと思うところまでいかない限り、次には進めない性格である)

ということで、この作品が僕のどのツボにどのように突き刺さったのかを長々と語りたいが、非常に偏った嗜好の話になるので、稿を改めて記したい。

ただ、それは「感想」でも「紹介」でも「評論」でもない、奇妙なものになりそうである。
「ファンアート」と言うべきか、「僕の解釈」とでも言うべきような内容になる。
恐らくそうした特殊なアプローチを通じてしか、この作品の魂に迫ることはできないと考える。

次回作の構想について

僕は作品をつくるときは、常にこれが最後の一作になるという想いでつくっている。
(そうした背水の想いがあってこそ、作品に込める想いが強くなると思うので)

幸いなことに、そんな想いを続けながらも何作もつくることができており、
2023のティラノフェスにも応募予定である。

まだ構想中だが、現時点で考えている次回作の方向性を以下に記す(変わる可能性あり)。

・今作(パラドクス)は理系ネタ中心だったので、次回作は文系ネタ中心でいく。したがって、作品の雰囲気としては『こっくりさんのお告げ』と似た方向性になる。
 
・ただし、『こっくりさんのお告げ』よりも、ダーク要素を多めとする。

・複数エンドで、1ルート15分~30分程度の短いものとする。
 1時間~1時間半程度で全エンド回収できるぐらいの分量とする。

・今作(パラドクス)は、予備知識がないと分かりにくい部分も多かったので、次回作は予備知識なしでも、多くの人に楽しんでいただけるようにしたい。

・会話ウインドウ方式ではなく、全画面でテキスト表示する方式として、テキストに比重を置く。

・と同時に、イラストもこだわったものとしたい。
 特に、今作(パラドクス)でご好評をいただいた構図の面白さや見せ方の工夫については、次回作でも追求したい。

・ホラー要素はあるが、雰囲気・ストーリー重視。脅かし演出は基本的に無し。

・ゲームの難易度としては、非常に易しいものとする(選択肢をクリックさえすれば、全エンド回収可能)。

・実況は大歓迎。

・完成はティラノフェス2023応募締切ギリギリ(2023年の夏~秋頃?)になると思われるが、製作の進捗状況、イラストなどをツイッターで事前に出していくようにしたい。

以上、長々とした文章になりましたが、ティラノフェス2022、本当に
ありがとうございました!

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