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レジャー・テーマパーク業界

レジャーには大きく、遊園地・テーマパーク、映画館、遊技場・カラオケボックス、水族館・動物園、フィットネスクラブ、ゴルフ場などがあります。
筆者は主に遊園地・テーマパークを受けていたので、以下の内容は遊園地・テーマパークを対象としています。

◯業界規模

近年は「コト消費」の広がりにより規模を拡大させていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により売上高は低迷しています。

2020年度の市場規模は1.8兆円と言われていますが、これは主要対象企業45社の売上高の合計であり、売上を公表していない企業もあるのでもう少し大きいものと考えられます。

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◯ビジネスモデル

BtoC

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施設や設備を充実させ、娯楽や人的サービスを提供する対価として消費者からお金を貰います。特に、遊園地・テーマパークでは非日常体験を提供するための施設やイベント運営をすることで、集客を行っています。
そのため、「定期的にゲストに来園してもらう理由」を作り続ける必要が出てきます。具体的には、土地開発や大型アトラクションの設置などを行うのですが、これには設備投資に多くの費用がかかります
そのため、上記のサイクルを回して常に新しいものを導入できるようにしています。

また、入園料の他に、飲食や物販でも収入を得られるので、お客様の滞在時間が長ければ長いほど客単価は上がります。そのため、ホテルを併設している施設も多くあります。これにより、日を跨いで楽しめるサービスの提供や遠方からのお客様の滞在に寄与しています。


大型投資のみならず、設備維持のための費用も多くかかり、かつ、テーマパークという限られた場所にきてもらって初めて収益につながるため、少々非効率的なビジネスモデルだと私は考えています。


BtoB

BtoBの場合は、主にスポンサーとして知られていると思います。
詳しくは以下のリンクをご参照ください。
https://maihama.hateblo.jp/entry/2013/05/12/212935

そのうえで、上記以外のことについてお話します。私は企業がテーマパークのスポンサーになるメリットとして2つあると考えています。

 1.その企業が消費者に選ばれる確率を上げることができる
 2.その企業で働く人たちの福利厚生

1つ目に関しては、リンク先で述べられているように、コラボ商品やPRにそのテーマパークを使うことで、その企業のブランド価値を高め、消費者から選ばれる必然を作ることに寄与するひとつの要因になりえると考えます。
また、コカ・コーラさんなどであれば、パーク内の飲料を積極的にテーマパーク運営会社から買ってもらえるため、テーマパークにお金を払って大口顧客になってもらっていたり、他の飲料メーカーの納入を阻止したい考えから提携企業になることもあります。

2つ目はパークチケットを安く買えたり、無料券がもらえたりなど、福利厚生の一環としてその企業で働く人に還元できることです。私自身が大阪のテーマパークで働いていた際も、頻繁にこのチケットを目にしました。家賃補助などに比べるとささやかな福利厚生ですが、企業にとって多少のメリットになると思います(これ目的のみでスポンサーやパートナーになる企業は少ないと思いますが)。

大きくは上記の2つですが、メリットは他にも多くあります。


また、スポンサーがつくことにより、テーマパーク側にもメリットがあります。
・高い設備費の金銭援助をしてもらう(スポンサーフィーを払ってもらうことで一定の安定した収入を得られる)。
・パーク内で安定してその企業の商品・技術を扱うことができる。
・広告費を払わずに、提携企業がキャンペーンなどで広告してくれるため、効率よく認知を得られる。


このように、テーマパーク側にブランド力がないと成り立ちませんが、双方win-winな関係になれるビジネスです。(この辺りはIPビジネスと似ていますね)



◯将来性

余暇を楽しむというのは今後決してなくならず、その候補としてテーマパークはそれなりに選ばれる可能性の高いものであることに変わりはないと考えています。しかし、今回のように不況に陥ったりした際に最初に家庭の消費から削られるのはレジャー費用であり、日本という縮小産業で戦っている以上、短いスパンで新たな価値や体験を創造し、高いレベルで提供していかなければいけないという点においては安定感には欠けると思います。

そのため、どの企業もテーマパーク以外の事業展開をどう行なっていくか、一極集中的なビジネスモデルをどう解消し安定化させるかが今後の課題となっています。


◯業界地図(各企業の立ち位置)

〔テーマパーク〕
オリエンタルランド、USJ、サンリオエンターテイメント、ハウステンボス、レゴランドジャパンなど
〔遊園地〕
東京ドーム、よみうりランド、富士急行、京阪レジャーサービスなど

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出典:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ1732B0X10C21A3000000/ 


◯他のエンタメとの違い

〔業務内容〕
主に総合職・現場職・専門職の3つに分かれています。
総合職は営業、広報、マーケティング、経理などがあります。
現場職は施設内のアトラクションや飲食店などで接客を行ったり、アルバイトの管理などを行います。
専門職は施設内のインフラ整備などを行う機械・電子系の技術職、商品やダンサー等の衣装等のデザインを担当するデザイナー職、施設内の飲食店で調理を行う調理職等があります。

「人を楽しませる」ことに特化した空間作りを行う唯一の業界で、箱庭のようになっています。つまり、パーク内にはインフラ、飲食、物販など一つの国のような機能を果たしているのです。
そのため、総合職の場合、通常の企業では揃えていないようなさまざまな仕事に関わることができ「真のゼネラリスト」になれます。

〔待遇〕
現場職は接客を行うこともあり休憩が取りずらいなどブラックな一面があります。また、施設の開園時間などにも合わせて早朝や深夜での勤務もあるそうです。給料面はエンタメ業界の中でも低いです。
しかし、大手総合職の場合は法遵守の意識が浸透しており、月の残業平均20時間であったり給与も平均ほどで有休消化率も高い水準となっているため、比較的ホワイトです。しかし、福利厚生はそこまで充実していない印象があります。

〔やりがい〕
対面特化したエンタメなので、自社サービスを体験して楽しんでいる消費者を目の前で見ることが出来ます。そのため、やりがいの面では他業界よりも強く実感することができると思います。

コンテンツの面白さが即売上に直結するため、ゲストを飽きさせず常に面白いパークを作っていくことが必要になってきます。そのため、自分の関わった施策で売上が向上した、などにように、自分の成果物に対するゲストからの評価が一発でわかる点もやりがいが感じられると思います。


◯就活生が感じたリアルなメリット・デメリット

・メリット
選考から楽しい
基本的に人柄選考(?)←異論認める
ワクワクを自分の手で生み出せる
楽しんでいるお客様を目の前で見ることができる
転勤がない
     裁量権が大きく、やりたいことをやらせてもらえる環境が整っている企業が多い

・デメリット
コロナ禍で採用人数減
男性の場合、同性が少なくて情報共有しにくい
「大学まで出てサービス業?」と言われる
やりがい搾取のため薄給、ストレスもかかるため死亡率との相関関係も高い
大手は入社難易度が高い
受けれる企業が少ない
大手以外は僻地勤務


◯職種と働き方

主に総合職として採用され、営業や事務に就きます。
しかし、企業によって異なるのでいくつかピックアップして以下に記載しました。

〔オリエンタルランド〕
・総合職
 →プランニング、クリエイティブ、マーケティング、新規事業、バックオフィス
・テーマパークマネジメント職
・専門職
 →技術、商品デザイナー、調理

職種別採用です。
ジョブローテーションを採用しています。
根詰めて働こうとすると怒られる位ホワイト。

〔USJ〕
マーケティング職
パークマネジメント職
オペレーション職
エンターテイメント職
技術職・メンテナンス職
(21卒・22卒はマーケティング職のみ採用実施)

職種別採用です。
残業は悪という文化があるらしい。

〔サンリオエンターテイメント〕
総合職
 →総務部、営業部、企画制作部、環境統括部、販売部、運営部

〔ハウステンボス〕
総合職
パーク職
ホテル職
技術職(イベント系・調理系)

〔よみうりランド〕
総合職

原則、 ジョブローテーションで公営競技部門、ゴルフ部門、遊園地部門、管財部門、本社部門を異動します。

〔富士急行〕
総合職

こちらもジョブローテーションを採用しており、富士急行が所有する富士急ハイランドやプレジャーフォレスト以外にも子会社のPICAへの出向や運輸事業、不動産事業への配属もあります。


◯キャリアステップ

殆どの企業では現場を一度経験してから本部勤務になります。

〔オリエンタルランド〕
総合職の場合、4,5年現場でキャストやスーパーバイザーとして働いた後に営業や広報などの総合職の部門へ異動となります。
テーマパークマネジメント職は現場のスペシャリストとしてスーパーバイザー、エリアマネージャーへとキャリアアップしていきます。

〔USJ〕
職種別採用で最初に採用された職種の中で異動が決まっていきます。
現場職以外は基本現場研修はなく、入社後すぐに採用された職種の業務を行なっていくため、早い段階からその道のスペシャリストになれます。
社内公募制度で他職種への異動をすることも可能です。

〔ハウステンボス〕
総合職の場合でも最初の数年は現場で働きその後、経営や現場などのキャリアを選択してキャリアアップしていきます。(本人の志望だけでなく適性や会社の人事都合によって決まる)


◯この業界を見ている後輩へのメッセージ

〔カモノハシ〕
レジャー業界は激務で薄給とよく言われますが、この業界でしか叶えられない夢があると思います。自分の叶えたい夢と許容できるブラックさ(?)の折り合いを見つけながら企業選択をしていくのがいいと思います。がんばってください!

〔トラカン〕

男性だと周りから奇異な目で見られたり、情報共有に困ったりすることもあるかと思いますが、あなたのそのテーマパークへの想いがあれば夢は叶うと思います!これまでテーマパークにたくさん夢を叶えてもらったように、ぜひ多くのゲストの夢を叶える側になってほしいと思います!テーマパークしか勝たん!

〔お祈りホイホイ〕
テーマパーク業界は、コロナで大打撃を受けるくらい課題や弱みもたくさんある業界です。しかし、全力で非日常を作り出して目の前にいる人を楽しませる、泥臭くもやりがい溢れる仕事です。
大袈裟かもしれませんが、私が思うに、テーマパークはエンタメ業界の中で唯一、ワクワクするような非日常空間で(一部の捻くれ者を除けば)多くの人の時間も感情も支配できる業界です。パーク内の非日常で感覚がバグって知らない人に手を振っちゃうし、パークへ行く前はワクワクして、行った後は余韻に浸れる。ただ行った時の楽しさだけでなく、その前後の日常を非日常にして楽しんでもらえる。これがテーマパークの良さだと私は思います。
テーマパークオタクで言いたいことありすぎるんですけど、字数やばいのでここまでにします。

どうですか?そんな非日常空間を作り出そうと全力を尽くしている人たちにロマンを感じませんか?

どのエンタメもそうですが、テーマパークも内定を得るのは簡単じゃないです。でも、他者に喜んでもらうことが好きな人は、きっと向いていると思います。自分たちで作るパークで多くの人が喜ぶ姿を間近で見れることは何にも変え難い快感です。
そんな未来を思い描きながら頑張ってください!!!


◯おすすめ図書

『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(森岡毅著・角川書店) 
『テーマパーク・アミューズメント事業 知っておきたい最新トレンドと成功の秘訣』(清水群著・セルバ出版)
『ディズニー 〇〇の神様が教えてくれたこと』シリーズ(鎌田洋著・SBクリエイティブ)


執筆者  :カモノハシ( O_anatinus01 )、トラカン( __on__the__road )
協力者  :お祈りホイホイ( @disney_geek1118 )

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