見出し画像

IPビジネス(キャラクタービジネス)業界


IPビジネスは大きく
①音楽 ②アニメ(キャラクター制作) 
③マンガ ④ゲーム 
の4領域に分類できます。
今回はキャラクタービジネスに焦点を当てているため、アニメ、マンガ、ゲームについて書きました。


また、IPビジネスには「ライセンサー(IPを提供する側)」と「ライセンシー(IPを使う側)」が存在します。

例えば、USJのスーパーニンテンドーワールドでいうと、任天堂がライセンサーでUSJがライセンシーです。使う側は無限にいるので、今回はライセンサーに注目して書きました。

◯IP (知的財産) ビジネスってなに?


まず、エンタメにおける IP (知的財産) とは、『キャラクターや楽曲など「知的財産権」が認められているコンテンツ』のことを指します。

IPを所有する企業がこれらの作品自体を販売して利益を得るだけでなく、自社IPを他社に貸与してさらに利益を得ようとするビジネスのことを「IPビジネス」と言います。
後者はいわゆるキャラクタービジネスのことですね。

例を挙げると、観光地にあるハローキティのグッズや、ディズニーデザインボトルの飲料などです。
「あ〜、なるほど」となってもらえたら幸いです。



今回は、自社IP作品を販売し利益を出す方ではなく (他の方が各業界の分析をしてくれているため)、キャラクタービジネスの方に焦点を当てて書いていきます。

◯業界規模

2020年度のもので2兆5,305億円 (世界規模だとおよそ14兆円)でした。

画像1

図1. キャラクタービジネス業界規模推移


コロナ禍においても堅実に収益を出しており、非常に安定した業界だといえます。

画像2

図2. 商品化権市場 分野別構成比


商品化権(商品に付随するキャラクターにかかる権利)で得られる収益のみだと1兆2,335億円です。


出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2742


◯ビジネスモデル


ライセンサーは、IPの権利を販売することで収益を得ています。

スクリーンショット 2021-07-27 20.41.25


1つのIPを使った施策を打つ場合、基本的にはこのような流れになります。
また、ロイヤリティの支払いは一回にとどまらない可能性があり、テーマパークなどの場合は定期的にロイヤリティを払って権利を維持しています。

ライセンサーは基本的な品質管理などを行うだけでIPを使う権利の販売による収益が出ますし、ライセンシーはロイヤリティ(IPを使用する権利料)やミニマムギャランティ(保証金のようなもの)を払うだけで人気IPを使用する権利を得て、在庫を抱えずに(危険を冒さずに)収入が増やすことができます。

まさにWIN-WINなビジネスモデルと言えます。


◯将来性


[ライセンサーの幅の広がり]
大きな収益を得られるライセンサーとなるには、強力なIP(ブランド力など)が必要不可欠となってくるため、参入には高い壁が存在する業界だと私は考えています。
しかし、日本のゆるキャラの定着やVtuberなどの台頭により、ライセンサーの幅は広がってきています。

[SNSの普及]
SNSや動画配信サービスの浸透により、広告やイメージキャラクターとしてIPを起用する機会が増加しました。また、今後もこのような機会は増えていくと考えられています。


上記2点にくわえてコロナ禍でも収益が微増していたことから、安定しながら今後も成長を続けていく業界だと考えています。


しかし、エンタメの中でもキャラクタービジネスは対ファンの商売であるため、ファンへの対応が長い目で見た時の損益に影響を及ぼすことはサンリオの売上減少からも明らかです。
そのため、長く愛されるための消費者理解は必要不可欠な業界だといえます。

◯業界地図

 参考になるものがなかったので、事業ごとに企業を分類しました。
 漏れがあったらすいません。


[アニメ / キャラクター]
ウォルト・ディズニー・カンパニー、サンリオ、京都アニメーション など

[玩具]
タカラトミー、エポック社、パイロット など

[出版]
集英社、講談社、小学館、KADOKAWA、竹書房、ポニーキャニオン、アルファポリス、SGクリエイティブ、宝島社、新書館、星海社、一二三書房、双葉社、主婦の友インフォス など

[ゲーム]
ゲームパブリッシャー企業・アプリゲームを制作する企業は基本IPビジネスにも参入しています。
中小パブリッシャーについては「ゲーム業界note」を参照ください。

任天堂、ポケモン、スクウェア・エニックス、バンダイナムコ、カプコン、セガ、コナミ、コーエーテクモ、サイゲームス、ディー・エヌ・エー など

◯他のエンタメとの違い

・業務の幅の広さ
 →キャラクターの制作と物販だけでなく、映画やアニメ制作、ゲーム、テーマパーク、ライブエンターテイメントなど幅広いエンタメに関われる可能性がある。

・0→1ではなく、1→10に変えていくビジネス形態
 →クリエイティブ特化型人間でなくても活躍できるだけでなく、一つのIPをさまざまな形で商品化していく楽しさがある。

・待遇の良さ
 →ホワイトで比較的残業時間が少ないため、ワークライフバランスが整っている。

◯就活生が感じたリアルなメリット・デメリット


就活面とビジネス面どちらも書きました。

[メリット]

・ばりホワイト(福利厚生が手厚い / 残業がほぼゼロ)
 →残業の多いエンタメ業界では珍しい方です。
・いろんなエンタメに関われる
 →総合エンタメとの差別化が大切かも
・大手であれば世界的に有名な企業が多い
・基本フランクで明るい面接
・自社IPの商品を日常の至る所で見ることができ、大きなやりがいを感じられる。
・好きなキャラクターの商品開発に携わることができる。
・ヒットしたIPはドル箱のように他展開なら何でも当たる(例:鬼滅のダイドーコラボ)
・ブランドイメージを損なわなければ商品が何にでも変化できる
・コロナのような外的要因に左右されにくい(展開している事業によっては打撃を受けるが、IPビジネス事業自体は他のエンタメと比べてあまり影響が出ない)


[デメリット]

・選考が始まるのが遅い&長い
・リクスーが必要になる(エンタメは私服の企業も多いため)
・給与は平均水準ほど
・有名企業ばかりかつ採用人数が他のエンタメと比べて少ないため、選考倍率がえぐい
・適性検査が対策しづらい場合がある(SCOAのwebテとビジネス適性を測るものなど珍しい形式やオリジナルテストも多い)
・年功序列で実力が認められにくい企業もある(日系企業に多いが、サンリオのように古い体質を改善しようとしているところもある)
・大手でも赤字経営のところもあり、将来性に不安(もちろん企業による)
・IP人気に胡座をかいて何でも他展開をし続けると、ファンがソッポを向いてしまう可能性がある(例:サンリオの売り上げが大幅に落ちた原因の一つ)


ブランドイメージの構築が完了すれば「金のなる木」になる、一見完璧なビジネスモデルに見えますが、IPありきの商売であり、人気の絶えないブランドであり続けなければ無敵ではないというところがわかると思います。


◯職種と働き方

企業により大きく変わるため、いくつかピックアップしてみました。
ここに挙げた企業は全て福利厚生の整った、ホワイト企業です。
IPビジネスに直接関わる職種を太文字にしました。

[ウォルト・ディズニー・ジャパン]
総合職という括りはない。
・店舗運営職(新卒はココのみ)
・事業サポート・事務職
・消費者向け商品職
・クリエイティブ職
・ファイナンス、データ&アナリティクス職
・カスタマーサービス職
・イノベーション、テクノロジー&サイエンス職
・マーケティング、セールス&コミュニケーション職
・運営サポート職
・プロダクション&エンターテインメント職

[サンリオ]
・総合職一般(営業系 / 事務系)
・総合職クリエイター
・販売職

[任天堂]
・事務系(人事、法務など / サービス運営、販売戦略など)
・制作企画系
・サウンド系
・デザイン系
・理工系

[集英社]
・雑誌編集
・書籍編集
・デジタル・通販
・版権
・宣伝イベント事業
・広告
・資材・制作
・営業
・管理(バックオフィス)

◯キャリアステップ

企業により大きく変わるため、いくつかピックアップしてみました。

[ウォルト・ディズニー・ジャパン]
・一括(?)採用。
・新卒では、全員ディズニーストアの店舗管理職に配属され、その後適正により他職種へ移動となる。
・アメリカにあるグループ本社への異動は基本的に厳しいため、この場合は職能を磨いた後中途で直接本社を狙う方が確率が高い。

[サンリオ]
・職種別採用。
・初めに採用された職種の中で異動が決まっていく。
・ジョブローテーションがなく、年一回キャリアプランを提出して配属や異動が決まるため、スペシャリストにもゼネラリストにもなれる環境。
・年功序列。

[任天堂]
・職種別採用。
・初めに採用された職種の中で異動が決まっていく。
・IPビジネスの部署は総合職という括りなので、ジョブローテーションあり。
・他部署への移動は社内公募制度を使えば可能。
・ゲームのタイトル毎に担当チームが組まれるため、そのゲームをいかにヒットさせるか、そのキャラでいかに売れる商品をつくるかがキャリアアップの鍵になる。
・年功序列。

[集英社]
・一括採用。
・ジョブローテーションはないが、他部署への異動は適宜行われている。
・「自己申告カード」という社内異動制度もある。
・一つの部署に留まるスペシャリストもいれば、短期スパンで色々な部署の業務を経験するゼネラリストもいる。
・年功序列。

◯この業界を見ている後輩へのメッセージ


[お祈りホイホイ]
キャラクタービジネスがしたい!!という思いでこれらの企業を受ける人よりも、ミッキーが好きとか、タキシードサムが好きとか、ポケモンが好きとか、自分の好きなキャラクターを作ってる企業だからって人が多いと思います。実際私もエントリーのきっかけはそんな感じでした。
しかし、受けていく上では「生産者としてどうありたいか、どうしていきたいか」の方が大切になってきます。
そのため、そういった軸を考える上でもこの記事が少しでも参考になっていたら嬉しいです。


[カモノハシ]
〇〇大好き!!な人が沢山受けにきてます。
そんな中で勝ち抜くためには、一消費者を抜け出してビジネス視点を持つことが重要だと思います。
頑張ってください!


[縁下]
キャラクターのブランドイメージを損ないこと、原作者命で考えることが大前提です(ライセンシー寄りの意見)。
ただ、ここをクリアできれば何にでも商材を変化できる魅力的なビジネスです。
アイデアを0ベースで生み出すより作品×〇〇のように「掛け合わせアイデア」を考える人は楽しいと思います。



執筆者     :お祈りホイホイ( @disney_geek1118 )
協力者  :カモノハシ( @O_anatinus01 ) 、縁下( @vm8GWOzFINyol6f )

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?