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小さな本屋という小資本でしかできないこと

#本と珈琲とときどきバイク #バイクと出逢うための本屋 #バイク乗りと繋がりたい #バイクと一般人とを繋げたい #小さな本屋

小さな本屋という小資本でしかできないこと
今回も例によって長い文章になりそう。僕が本屋という職業を選択した想いを記録しておこうと思います。

僕は今までバイクメーカーという大企業の中で、大きな資本でしかできない製品開発を少なくとも1プロジェクトにつき10人以上のチームの中の1人として、プロダクトデザインというとても責任重大な立場で関わってきました。
チームメンバーの中には企画、設計&開発、マネージャー、デザイナー、海外拠点など、それぞれの畑の人たちがある一つのゴールを決めて、そこに向かって商品を作り上げるわけですが、当然一筋縄でいくわけがなく、それぞれの畑の人の最適解が異なるのと、コストだったり、設計上NGだったり、立場の上の人の鶴の一声だったり、、、さまざまな理由で右へ左へと既に決めたはずの軸なのに常にブレ続け、最適な方向に軸を適時動かしながら進捗していくわけですが、ことデザインという立場にいると、そのほぼ全てに関わってくるので、根回しや各所へ都度説明、上司との合意など、本来のデザイン意外の仕事が圧倒的に多く求められます。説明という仕事がメインなんじゃないかと思うほど。
感性を使った仕事をしているぶん、数字では説明できないのがミソでして、各所からカッコいい&カッコ悪いやらなんの根拠もないコメントや「なんか違う」という謎な横ヤリでストップすることはとても多いです。そこへの対処も当然デザイナーがやるわけで、どうやって説明すれば納得してもらえるかの策を練るという、、、説明のための説明をしているような、、、まぁ効率悪いです。
大きなお金が動くので失敗は極力避けたい。判断する側は納得してGOサインを出したいのはわかりますが、誰も未来のことなんてわからないわけで、わからないならわからないなりに、わけわからんコメント出すよりも、しっかりと考えて提案している我々デザイナーに「任せる」ほうがスムーズ。それくらいの大きな器が欲しいものです。なぜか成功すれば偉い人たちの手柄、失敗すれば偉い人のせいではないのが大きな疑問ポイント。我々デザイナーはそのリスクも背負っているというのは覚悟の上。にも関わらずあまりにも周囲の不要な声が多すぎる。開発スピードに時間がかかってしまうのは、この決定プロセスのステップが複雑かつ関門が多すぎるからだと正直思っています。

実際のお客さんの目に触れるプロダクトデザイン部分を行なっている時間はプロジェクト全体から見ればほんのわずか。苦労を説明するようではデザイナー失格なので、あたかも自信満々に「ドヤっ」と説明するわけですが、内心では全く満足していない。本来やりたかったことができた試しはなく、よくできたほうで5割くらい意思を込められれば万歳といったところ。その製品の良いところ&悪いところが身に染みてわかっていることを表向きには隠しているわけです。実際今まで関わってきた商材で自信をもって世に出せる製品は一つもありませんでした。お恥ずかしい限りです。それでもお客さんにはバレていないどころか、意外とポジティブに受け取っていただけてるようで、それを見ると少し救われます。それくらい社内ではあらゆる関門を乗り越え、スタイリングのコンマ何ミリまで洗練させ、それでも満足できてないにしても相当なつくり込みをするので、一般のお客さんには粗が見えづらいのかもしれません。各メーカーの美学って意外とお客さんには伝わってなかったりするのかも、、、というのが最近の見解です。
今までそういうモノづくりを経験してきて、ここでふと疑問が生まれました。果たして「お客さんに伝わってないのにそこまでやる意味はあるのか?」「無駄が多すぎないか?」「もっと若いプレイヤーを信じて進めたほうが新しいものができるのでは?」「結局立場の上の人が決めてるのでは?」「やりたいことに対してやらなくていい仕事が多すぎて報われない」「やりがい感じないんじゃない?」「苦労の方が多すぎてバランスが悪い」などなど、、、僕は無数に疑問が湧いてきました。皆さんはどう思うでしょうか。「ここまでやるから高品質なモノになる」「職人的な素晴らしい仕事」「会社員ならそこは我慢すべき」「思ったより相当大変な仕事かも」など、、、と共感したりポジティブに受け取ってくれるのでしょうか。少なくとも私はここ数年そう思わなくなってきた。新卒で入社した頃はまだまだ新人で学ぶことも多かったので考える余裕がなかっただけなのかもしれません。
一度に何個もプロジェクトを抱えて忙殺されていれば、苦労しつつも着実に世に製品が出るので、そんな考えに至らなかったかもしれませんが、昨今のバイク業界はプロジェクト数が少ないのが現状。僕がいた会社の場合ですが、人も少なけりゃプロジェクトも少ない。自らのクリエイション作業が全て無駄になることもとても多い。そのせいか製品化が決まった一つのプロジェクトに皆が寄ってくる。余計フットワークが重くなる、、、悪循環です。しかも偉い人とプレイヤーとの風通しが悪すぎるのも意思決定プロセスにおいていろんな齟齬が起きやすい原因。大企業はイノベーションイノベーションと外面上魅力的なことを言いつつも、依然として体育会系の旧体制が色濃く残っているのも事実なので、そもそもがおじさんたちがはびこる組織改革から必要なんだと思います。世に製品を出すのと同時並行で社内のゴタゴタをキレイにしなければいけない。ただ、それを若手のプレイヤーに任せるのはいただけないですね。トップダウンの政策は的を得ていないし、現場を知る若手が頑張ってボトムアップで提案しても相手にされない。。。しかもこの作業のために使った膨大な時間は返ってきません。デザイナーだけにとどまらず若手が報われない仕事が多いのが現状。

ここまで気づいた僕は、このまま会社にいることで、ふと自分の本懐が達成できるのか不安になってきました。「何のために入社したのか?」→「バイクのモノづくりを通してバイクの魅力をバイクに乗らない人にも伝えたい」「モノづくりは自分が生きた証を残すことだから自分にとっても魅力的な仕事」「モノづくりで人の心が動く瞬間を演出したい」「自分にとってはバイクが心が動く最大のトリガーなので、その恩返しとして自らバイク文化に貢献したい」、、、そんな強い想いを持って入社したのに、果たして新卒から今までの11年間思うように生み出すことができ、働けていただろうか?このままでは自分が安定収入に飼い慣らされた老害の1人になりかねないと思い、ついに会社から飛び立つ決意をしたのです。
組織の都合やチームでモノをつくっていくことへの不満が相当溜まっていたのでしょう。会社員としてのモノづくりの魅力や、やりがいが最早ない。会社員としてのメリットがもはや安定収入だけになっていることに気づいたのです。このままでは人生を無駄にしてしまう、、、そのかわりに大きな資本が必要なバイクというモノづくりはできなくなります。それを天秤にかけてでも会社に残るほうがデメリットが多いと考えたのでした。
会社を辞めると決意した頃から実際に会社を辞めるまでに2年ほどかかりました。大きなプロジェクトが進捗中だったので、昼間は会社の仕事。定時後は自らができることは何かというアイデア出しの日々。そのために本をたくさん読みました。フリーランスや作家のコンペにもいくつか応募しましたが、なかなか短期間では芽が出ないし、単価が低すぎる。昼間の仕事で心身ともに疲れるなかで、副業の成立は難しいと考え、会社員として上司とのやりとりや、チームプレーの苦労にかなり疲れていたのもあり、別の会社に転職というよりかは、自らが小資本でできる経営+クリエイティブなことを求めてアイデアを練る日々。そもそもチームプレーが苦手な性格というのもありました。
バイクというモノづくりができなくなるけど、もっと根本にある自分の本懐と向き合い続けた結果、、、「バイクの魅力に繋がるコトづくり」をすることで「バイクの魅力を乗らない人に知ってもらう」、、、そんな場所がつくれたら、、、つくりたい!、、、と思うようになりました。これなら本懐からズレてもいないし「自分らしくバイク文化に貢献できる」と考えたのです。
老若男女誰でもはじめやすくハードルが高くなく、感性に訴えかける場所でバイクを推せるような、、、僕がバイクと出逢ったきっかけは何だったか、、、

「本」でした。

本には好奇心を広げ、感受性を豊かにし、美意識を磨ける最高のツールだと気づいたのです。そしてそれを提供する場としての「本屋」なら経営+クリエイティブが活かせるのではないかと。本との出合いをきっかけにバイクとの出逢いに結びつけられたら、素敵なライダーが増えるのではないかと考えるようになりました。
昔からあるバイクのイメージでいえば、ヤンキーや喧嘩、若気の至り、レース、油臭い、ヤンチャな感じ、バカしか乗れないといった漫画や欧米からくるイメージが根付いている中で、僕はそれ以外の人だってバイクに乗ってもいいと思うし、そういった「バイクはこうあるべきだ」が決めつけられた旧バイクイメージが嫌いでした。
子育て中の女性が乗ったっていい、東大や京大を目指す高校生が乗ったっていい、運動が苦手で内向的だって乗ってもいいんです。周囲のヤンチャな人たちに惑わされず、バイクの本来もつその魅力を知って存分に浸っていただきたい。
そのために僕が本屋としてできることは、従来のバイク好きの趣向から外れて、なるべくバイクを前面に推すということはせずに、日常の好奇心をくすぐり、感受性を培い、美意識と繋げることで丁寧にバイクと出逢えるようにお手伝いすることなのではないかと考え、直接的ではなく、遠回りかもしれないけれど「バイクと出逢うための本屋」というコンセプトを掲げた次第です。
そもそもバイクも本も日本社会においてはマイノリティー側。完全に嗜好品という立場では共通しています。なので決して相性が悪いはずがなく、バイク×本から生まれる科学反応を見てみたいという好奇心もあります。
バイク乗りは日本の国民の10%ほどしかいません。既に底辺を迎えています。バイク文化に貢献といっても、僕の小さな本屋ではできてもせいぜい11%に引き上げるとか10%の中のバイク乗りの価値観が少し変わるといった地味なものです。それでも長い目で見て、いずれ連鎖していき、20%、30%に引き上げられる一端を担えたらいいなと思っています。それこそライフワークです。
僕が80歳になる頃に社会がどうなっているかなんて誰にもわからないけれど、バイクが盛り上がっている社会であることを願ってやみません。そのために会社を辞めた僕ができることが、自分の足で立って、誰も求めてないバイク文化のテコ入れを、本屋というかたちで細々と紡いでいくということだと思ったのでした。
会社員として培ったものは決して無駄ではなく、その養分を踏み台として、自分の足で立てる意思と想像力&創造力を、本屋という小さな資本に還元することで、やりがいと生きがいを一生クリエイティブしていく。ここまで考えたからこその小さな本屋開業、これほど魅力的な独立はありません。

安定収入がなくなったので、あとは生計を立てられるようしぶとく経営し続け、頑張るしかありません。目標は本屋として50年!日本のバイク乗り30%へ引き上げ!、、、です。

今回はこの辺で。

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