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製薬企業開発部門(臨床開発モニター)の仕事の説明(前編)

前回までは、製薬企業の開発部門の抽象的な方向性を書いたので、今回は実際の仕事内容について紹介したい。新卒で入社してから、担当している臨床開発モニターという職種について紹介したい。

臨床開発モニターとは?

臨床開発モニター/Clinical Research Associate(以下、CRA)とは、治験を行う上で製薬会社の開発部門と医療機関を繋ぐ役割で、製薬企業の窓口として治験の立ち上げ(説明や契約対応等)から、日々の医療機関からの問い合わせ対応、治験参加中の患者さんのデータモニタリングなどを行う。

一つの治験を実施する上では、再現性を担保するための多くの記録・書類の作成が必要であり、また、それらを適切な担当機関への提出や保管も担当している。

治験の工程①(治験の立ち上げ)

治験を始めるにあたり、まず、製薬企業では治験デザインや計画を詳細に組み立てて、文書として作成する必要がある(いわゆるプロトコール)。また、治験では通常の医療機関が行う処置とは異なる医療手順を実施する場合にはマニュアルも作成する必要がある(実際には複数種類あり、定期的に改訂される)。

CRAは、これらの計画や書類をもとに医療機関に治験の参加を打診する。その際には、治験責任医師という各医療機関において治験への責任を持つ医師を中心に説明し、同意を得る必要がある。参加可能だった場合には、更なる医療機関の人への説明や治験審査委員会*への申請、契約手続きなどに進む。

*治験審査委員会は、治験を第三者の立場から審査するために設置される委員会で、治験の開始時、定期的に継続の可否を判断する。

これらの手続きは、時間の制約も大きく、治験審査委員会は多くの場合で月一回の開催のため、手続きが滞った際には、簡単に治験の開始が一ヶ月、二ヶ月遅れてしまうため、CRAのタイムマネジメントが非常に重要になる。

これらの手続きを全て終えたのちには、医療機関に治験を始めるための資材や治験薬(治験に使用される医薬品)などの搬入を完了させて、治験が開始となる。

CRA目線からの治験立ち上げのポイント

実際に治験に携わる立場として、以下のポイントが大切になると感じた。

治験の内容の把握と迅速なQAの対応

1つの治験をとってみても内容が複雑でかなり専門的な内容が多い。治験に参加する医療機関にとっては、多岐にわたる治験業務に対応するために必然的に質問事項が多くなる。専門的な医学的な知識を含めて、これらを全てCRA一人で対応するのは大変困難であるが、プロトコルの最低限の内容把握は大切であると同時に、不明点は車内で素早く解決し、医療機関に回答することが求められる。

タイムラインの厳守と不測な事態の想定

上記で述べたように、治験を開始するまでの手続きが煩雑かつ多いため、効率的に進めないと治験の開始が遅れ、治験参加者の募集期間が短くなってしまう。また、タイムラインを守るように進めていても、治験の開始時は全てが初めてのため、想定外の事態が起きることが多々ある。例えば、治験用資材・治験薬搬入の遅延や書類の不備、治験に対する審査結果で修正が要求されるなど、不測な事態が起きても対応する柔軟性が必要だ。

以上が治験立ち上げまでのCRAの役割である。次回は、治験期間中ではどのようなことをするのか、書いていきたい。


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