簡単にしあわせになれる季節がきたよ


 最近夜はめっきり寒い。少なくとも私にとっては。冬は好きだ。お手軽にしあわせを感じられるから。

 お風呂上がりに、想像以上に部屋が冷えているとき。
 これはかなわんと急いで服を着る。用意していた寝巻きが半袖だから、慌ててタンスをかき混ぜてスウェットをひっぱりだす。すっぽり頭から被り、そのままのいきおいで布団に飛びこんだら、もう完璧だ。ひんやりしている布団が自分の風呂上がりの体温であたたまっていくのを感じる、あの数十秒まさに幸福だなぁと思う。もしそれが金曜の夜10時とかなら、もっと完璧。

 善のイデアはわからないし、幸福のイデアもわからない。
 でも、風呂上がりに寒い部屋の布団に潜り込むあの瞬間は、かぎりなく欠けていないまんまるな幸福の感触がする。

 面白い漫画を読んだ時とか、推しのライブに行った時とか、「幸せ」って口にすることはおとなに近づくほど増えた。高くておいしいごはんとか、自分の力で手に入れられる幸せもいまは多い。

 それでも、「あったかい」とか「おなかいっぱい」とか、人間の生物としての要求を満たした時の多幸感は、何にも変え難いというような気がする。文化も言葉も理性も削ぎ落として残る、生物としての本能的な生存の喜びなのだろうか。

 まあ要は、寒い日にお布団に潜り込む瞬間大好きだな〜って話。