見出し画像

映画『his』

完成披露試写会からもう何回白川町の迅や渚達に会いに映画館へ行ったことだろう…

LGBTQを題材に男性同士の恋愛が物語の中心ではあるけれど、そこに重きをおいているわけでもなく様々な愛の形、離婚・親権問題、家族の在り方、二人を温かく見守る人々や純粋な子供との関わりによって変化していく心情等が丁寧に描かれていて、色々な事を感じ、考えさせられるけれど鑑賞後には自分の偏った心が洗われ、優しさと温かさに包み込まれて、この世界にずっと浸っていたいと思う程、心に響く作品だった。
登場人物のそれぞれの思いや心情が繊細に描かれているので、それぞれの気持ちも理解でき、だからこそ観ている側が感情移入する対象が観る度に変わったり、または自分の境遇に似た人物により感情移入できるように感じた。
今、生きづらいと感じている人もそうではない人も…きっと何か心に響くことがあると思う…

本当は優しい人達なのに、皆、不器用で言葉足らず…。
それぞれの弱さ、苦悩や葛藤と闘ううちにいつしか周りがみえなくなってしまった彼ら彼女らが、周りの人々の思いやりや優しさに触れる中で気づきを得、自分自身と向き合い、相手のことを思い行動する優しさや強さを取り戻していく。
迅から渚へ、渚から玲奈へと思いやりと優しさ(時に強さ)が浸透していったように思う。
誰かの素直な思いの行動を受けた時、人は変わることができる機会を与えてもらえるのかもしれないと感じた。

そして愛おしくてたまらない空ちゃん…
彼ら彼女らにとって空ちゃんは癒しでもあり救いだったように思う。
偏った物差しも色眼鏡も持ち合わせていない彼女の純粋ゆえの言葉は、時に胸に刺さるが、大人になるにつれて忘れていた、たくさんの大切なことを大人達に気づかせ教えてくれる。

自分から心を開いて「ごめんなさい」「ありがとう」と素直に相手に伝えること

苦悩や葛藤、孤独感の中でもがくうちに後回しにしていた自分と向き合い自分の気持ちに正直になること

誰かを好きになるのはごく自然なことで、好きという気持ちを向ける相手の性別は関係ない。
同性を「好き」になり「愛する」気持ちは特別なことではない。
お互いに相手を想い必要としているのだから何もおかしなことはないし恥じることもない、だから一緒にいればいい

どれも言われてみれば当たり前のことと思えるのに、世間体や常識等、誰が決めたのか分からない枠組みで雁字搦めになっている大人達には、できていないことや忘れていたことが多いように感じた。

ラストに起きた奇跡…
愛する者を守りたい…その気持ちは性別も複雑な関係性の垣根も越えて共通して繋がれるものだと思う。
それぞれが思いやりと優しさを持って行動した先に誰もが生きるのに優しい世界への希望が広がっているように思えた。

この先もずっと白川町で、迅、渚、空、そして玲奈も、笑顔で幸せな日々が送れていたらいいな…心からそう願った。

現実は当たり前のことが全てできるほどまだ優しい世界ではないかもしれない。
でも個々が偏った物差しや色眼鏡を捨てて向き合い、互いに尊重し歩みは小さくとも寄り添うことができたら、その先の未来は何か変わるかもしれない。
そう願わずにはいられない。
人は一人では生きていけないのだから…

一人でも多くの人の心にこの映画が届いたら思いやりと優しさ溢れる素敵な世界が広がるかな…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?