見出し画像

科学映画(20世紀日本音楽の宝庫でもある)をまた見てみませんか?

今は小学校や中学校の視聴覚教室でみんなで科学映画を見る、なんという授業はまだあるんでしょうか?
私もすでに記憶はおぼろげになっちゃってますが、科学技術だったり自然だったりの科学映画を見せられたように思います。

そんな日本の科学映画、教育用映画はフィルムで撮影されたものがいっぱいあるわけですが、そのフィルムも劣化が進んでいる中、デジタル保存するプロジェクトを行っているのがNPO法人科学映像館です。

科学映画制作会社と協力し、それらの会社や様々な資本助成や善意によって無償でフィルムの提供などを受け、それをデジタル化してネット上で無償で公開してくれるというすばらしいプロジェクトです。
年代も1920年代から戦前のものも十数本ありますが、主に1950年代から1980年代の科学映画を中心に約800本が公開されています。分野も、教育、自然、科学、医学、工業、芸術、民俗などと広い範囲に渡ります。

そして、科学映画はまさに日本が高度成長期時代から経済発達する中での技術発展の歴史や当時の日本社会をまさに写したものとも言えます。教育目的として当時の最新の技術を教えると同時に、当時の最新の映像、撮影技術で映されたものを見る、という体験も含めて、すべてその時代を示しているわけです。このサイトで公開されている映画にも様々な大企業の科学技術や製品に関わる映画があります。たとえば、中外製薬、大日本製薬、ジョンソンアンドジョンソン、日本楽器などなど。

そんな科学映像館がちょうど800本目の配信に到達したようで、その作品は「ウェルドレッサーを作る」。洋服技術者協会によるもので、燕尾服を作る洋裁の高度な技術を紹介する長編映画です。なんと、燕尾服のモデルは世紀のテナーと呼ばれたオペラ歌手の藤原義江氏!!

こんな風に、いろんな科学映画作られ続けてきたんですよね。

きっと見る人の世代によって、懐かしさを感じる映画があるのではないでしょうか?その意味でもこれらの映画がこのような形で保存、公開されるのは、日本の歴史記録を科学や自然の面から残し、気軽に見ることができるという点でもすばらしいことです。

●音楽の宝庫としての科学映画

ここからは少し違った視点で科学映画を紹介したいと思います。
それは映画音楽から見た映画音楽です。
今でも、劇場映画、アニメ、テレビドラマなど様々な映像作品、他には演劇などの舞台作品には音楽がつけられています。一般的にこれらは劇伴音楽と呼ばれますが、科学映画も例外ではありません。そして、特に80年代以前の映像作品では、日本のクラシック音楽系の若手から中堅にかけての作曲家の重要な仕事の1つであり、そこは音楽的にいろいろな経験を積み、実験をする場でもありました。

科学映画も例外ではなく、1950年代から80年にかけての相当数の映画には、日本の作曲家として名を残す人々が音楽を担当しています。
たとえば、黛敏郎、三善晃、矢代秋雄、間宮芳生、松村禎三、一柳慧、伊福部昭など錚々たる人々が音楽を担当しています。さらに日本音楽集団の創設者でもある長沢勝俊といった人の名前も見られます。
ぜひ、サイトの左側の検索窓にこれらの作曲家の名前を入れてみてください。いろんなバラエティに富んだ内容の映画を作曲家たちが担当していることがわかります。

個人的には、まだ二十代半ばの黛敏郎氏「広重」の映画の音楽を担当していたり(まだ代表作となる涅槃交響曲を作る数年前です)、オリンピック東京大会組織委員会が制作した映画「闘魂の記録」
の音楽担当者だったり(くれぐれもいいますが1964年ですw)。
伊福部昭氏らしい重厚な音楽が特急つばめを紹介する「つばめを動かす人々」につけられていたり。
冒頭と末尾には近衛秀麿指揮ABC交響楽団の演奏でグリーグのピアノ協奏曲奏されている「ピアノへの招待」に、ピアノの名手でもあった矢代秋雄氏が音楽をつけていたり。
さらに、一柳慧氏はたくさんの科学短編映画に音楽をつけていますが、1962年の「パルスの世界」(余談ですが、ナレーションは城達也氏!)と、1986年の「THE BONE2」の音楽を聴き比べると、音楽的変遷さえ科学映画から伺えてしまいます!

そして、これらの劇伴音楽を聴いていると、今の映画音楽などに比べてもとても前衛的というか、実験的な響きが試されていることに驚くと思います。その意味では、今の劇伴音楽がそのような作曲家たちが担当する機会が減っていたり、耳当たりのよいポップス調のものになったりと、つまらないものになってしまったようになったと私には感じられてとても残念ですが。

このように、昔を懐かしんだり、日本の科学技術の歴史を振り返ったり、自然を見たり、音楽を楽しめる科学映画、みなさんも楽しんでみませんか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?