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清潔で住みやすい世界と耐えられない私たち

最近、世間の話題になったことに騒音が課題だとして保育園の開園ができない、というのがありました。この問題自体は、騒音よりも安全性がより大きな課題なのではないか、といった話もありますが、ここでは「騒音」をキーワードに話を広げてみたいと思います。以前書いた「プライバシーの変化」に関する話とも些か重複しますがご了承ください。

▶︎昔は良かったって、ほんと?

歳をとるといいたくなる言葉が、
「昔は良かった」
「今の若いもんは、、、」
といわれますが、これは単に自分が今まで生きてきた環境、経験に馴染みがあって、変化してきたのについていくのが大変になる、という老化現象が大半を占めてるのは明らかです。
おそらく現代人は江戸時代なんかでは暮らせないでしょうし、いや、5、60年前にタイムトリップさせられただけでも相当危ういのではないでしょうか?
病気にはすぐかかってしまうだろうし、衛生感覚も何もかもなかなか順応しづらいんじゃないかなぁ、、、(まぁ、しばらく住めば順応するでしょうが、それまでに問題が起きないかどうかという競争でしょうね)

▶︎一部の人を助けて、みんなが脆弱になる

といっても、別にだからって一部の人を見捨てろというわけではなく、これは一種のトレードオフをしているのだ、という認識をみんなが持つことなんじゃないでしょうかね。

代表的な例を挙げれば、アレルギー体質の人が増加していることがあげられそう。
アレルギーを起こさせないように問題物質を避けるだけではなく、より清潔にしていくことで、他のものに対する抵抗力も落ちていて、結果としては他のものにもアレルギーを起こす人が増えていくという構図。

こんな言い方をすると乱暴すぎるかもしれないけれど、ある程度、汚い環境で生きていた方が、食中毒もアレルギーも起きにくいかもしれないけれど、とにかく除菌みたいな世界になっていくと、みんなちょっとしたことで問題を発生する、、、みたいな。

とにかく、今の世間の除菌系の製品の多さは驚くべきですよね。20年ほど前には除菌なんてこと、CMで連呼してなかったように思うのですが。
あらゆるところに菌がいっぱい、というイメージで製品を売っていくわけだけど、それに気づく前だって、人は特に問題なく生活してたし、ご飯食べてたし、と思うのですけどね。。。こういう感覚はバッチい人間の感覚なのかな??

▶︎肉体が弱くなるだけでなく精神的にも弱くなる

もちろん、アレルギーの人や、なんらかの体の不調を持つ人、弱い人にとっては重大な問題なので、そういう人たちのケアのためにそういう商品を使ったりなんらかの対処をすることは間違いではないですよね。ただ、そうでない人まで過敏になることで、実は全体の抵抗力を下げていっている問題にけっこう鈍感なんでないかなと思うのです。
そしてさらに、それが単に肉体的影響だけでなく、精神的にもあるのではってのが気になるところ。

で、ここで冒頭であげた「騒音」の話や以前書いたプライバシーの話とつながるわけです。

日本人がここまで防音にも気を使い、防音の効いた家やマンションに住むようになったのなんて、この2、30年くらいではないでしょうか?
世間にショックを与えたピアノ騒音殺人事件は1974年だそうです。つまり、このくらいのあたりから、人は騒音との折り合いがつけにくくなりだしたわけです。

こないだ書いたように、日本人はずっと長屋暮らしとかしていて、その頃は騒音とか問題にしようにもだだ漏れだったわけでしょ。生活騒音なんて概念がそもそもほとんどなかったのではないでしょうか。
赤ん坊の泣き声だろうがセックスの物音だろうが、全部近所に筒抜けでありながら、それを知らないふりする生活があったわけです。聞こえているけど聞こえてないかのような。

プライバシーを守る、ということを強く求めだしたあたりから、変な歪みも起きているように思えます。少しの不快にも耐えられないというか。まるで、ちょっとした物質にすぐにアレルギーを起こしたり、体調不良を起こすのと同じように、個人が特定の嫌なものにすごく過敏で耐えられないようになってきてるというか。その癖して、街中のどこからも流れてくるようなBGMには耐えられるとか不思議にも思えますが。

つまり、ここで苛立ちをもたせているのは、音の不快さ(それは音量なのか音質なのかはわかりませんが)とプライバシー空間に踏み込まれるという2つの条件が成り立ったときに、激烈に反応するのでしょう。(街中はプライバシー空間ぢゃないから、そこの騒音への反応は少しの鈍く、減らそうという熱意は弱い)

このように考えると、プライバシー空間を確保したことが、一番大きな問題なのかも。いや、もちろんあった方がいいし、ないと困るとは思うけれど、そこに強い特権的意識を持ちすぎてるような気はするんですよね。。。これってうまく解決(精神的にも、純粋に物理的にも)することってできるんでしょうかね?

そのためのうまい考え方ってあるんでしょうかね??

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