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初めて会った日から何周か回って恋をした 14

林間学校が、ほんの数日に迫ったある日


○○:え、先生
  それ、どういうことですか?



○○は担任の先生に呼ばれて、放課後教室に残っていた


そこで告げられたのは

係の仕事負担の増加の話だった



○○は、クラスの食事係の担当で

その仕事は、朝昼晩の食事の準備や、片付け

あとは、食事の始めと終わりの挨拶の号令くらいだった



しかし、他の係の仕事が少しだけ

食事係の方にも被るようになったのだ



先生:美化係の仕事が、少し増えた関係で
  食事係の方にも手伝いをしてほしくてね


○○は、半ば強引に食事係のリーダーになっていて

最初に、そのことを伝えられた


○○:それを、係の全員に連絡してくれってことですか?


先生:まあ、それもそうだな


○○:だったら、帰りの会のときに言えばよかったんじゃ…


先生:いや、忘れててね


○○:じゃあ明日の朝の会とかに…


先生:また忘れると困るし…



じゃ、頼んだよ

と言い残されて、○○は一人教室に残された


○○:なんか、先生強引だな…
  …なんかあったのかな


いつもと様子の違う担任に、疑問を持ちながら○○は昇降口へ向かう階段を降りる



その途中で


智也:お、遅かったな


昌輝:待ちくたびれたぞ!


昌輝と、智也が階段の踊り場にいた


○○:なんでこんなところに?


○○が聞くと


智也:いや、それがさ…
  と、図書室に本返せって先生に言われてさ
  帰りにばったり昌輝に会ったんだよ


昌輝:そ、智也とさっきばったりな


と二人は答えた


○○:ほ〜ん
  じゃ、急いで帰るか


昌輝:大会まで、あとちょっとだもんな!


と元気よく二人が先に階段を降りていく


智也:ったく…
  あんまりはしゃいで怪我されたら困るんだぞ〜!


智也も遅れてそれについていく



○○達は、そのまま下校し公園に集まる約束をした





蓮加:ママ〜
  そろそろリュックに準備しないといけないから手伝って〜


蓮母:はいはい、わかったわよ



蓮加の方は、さっさと下校して少しだけゲームした後

数日後に控えた林間学校への荷物の準備をし始めていた


蓮加:着替えと、パジャマと…


蓮母:変なもの持ってかないのよ?
  見つかったら、怒られるんだから


蓮加:大丈夫、大丈夫
  それくらいわかってるって


未だ、昔の茶目っ気が抜けていないと思っている蓮加の母は

釘を差すつもりでそう言った



蓮加は、それを笑いながら否定した


蓮加:私も、そんな子供じゃないから
  それに、約束は守るものでしょ?


と、少しだけ大人ぶって言う蓮加


蓮母:調子に乗らないの


それに対して、頭を軽くポンポンと叩く蓮加の母



荷物が大方揃ってきたとき


蓮加:あいたた…


蓮加は、足が痺れたのか足を崩した


蓮母:蓮加、最近運動不足じゃない?


それを見た蓮加の母は、指摘する


蓮加:そんなことないよ
  ちゃんと動いてるよ、バトミントンしたり、ダンスしたり


蓮母:昔みたいに、公園で遊ぶなんてことしなくなったじゃないの


蓮加:…いや、まあそれは…



蓮加は、○○と会うことが気恥ずかしくなってきた小学四年生になったかならないか位から

公園で遊ぶことを段々やめていった


会うこと自体が恥ずかしいこともあったし、自分が昔のようにはしゃぐ姿を

○○に見られてどう思われるか心配だったというのもある


蓮母:足のしびれが取れたら
  少しランニングでもしてきたら?


蓮加:え、まじで?


蓮母:はい、決まりね
  さ、さっさと残りも終わらすわよ


母親の押し切りで、ランニングに行くことが決まった蓮加


少々嫌がりながら、母親の提案には従った



○母:あ、○○
  林間学校のリュックの準備したの?


公園に速攻で行こうとしている○○に、母は聞いた


○○:ん?
  もう終わってるよ
  あとは、当日に貰う水筒だけかな
  

○母:ん、ならいいわ
  暗くならないうちに帰ってこなさいよ


○○:はいよ〜


○○はすぐに玄関から出ていった


○○:ま、準備は帰ったらすればいいでしょ


嘘というのを、上手く使って




昌輝:お、きたきた


○○:昌輝早いじゃん


先に来ていた昌輝にそう言いながら、○○はボールを昌輝の方に蹴り出す


昌輝:すぐ帰って、すぐ来たからな


○○:途中で疲れたりすんなよ?


昌輝:大丈夫だよ
  スタミナはあるから


昌輝は、○○か蹴られたボールを止めると


昌輝:お前のの方が空気あるからこっち使うか


と自分のボールをネットに入れた


○○:よしっ、智也くるまでやるぞ


昌輝:奪ってみやがれ


ボールのキープ合戦が始まった





蓮加:じゃあ、ちょっと行ってくるよ


蓮加は、準備が終わって

母親の提案通りにランニングに行くことに


蓮母:ちゃんと外の空気浴びてきなさいよ


蓮母:別に引きこもりじゃないから…


蓮母:そういう問題じゃないの
  はい、いってらっしゃーい


強引に話を切られて、蓮加は不服ながら玄関から出ていった



蓮加:ママめ、何か隠し事があるな…


強引な態度と、自分の話をすぐに切ることから

蓮加はそう推理した


蓮加:まあ、久しぶりに走るのもいいかな…


しかし、知らなくてもいいことがあることを蓮加はすごく最近知ったばかりのため


それを指摘することはなく、走り出していった




住宅街をある程度走ると、メインストリートに出る


そこは人が多くいるので、そこは歩いて一本中に入ってまた走り出す



蓮加:…あれ、ここって


以前はよく見ていた景色が目の前に広がり、少し足が止まる



そこに、


○○:こんのっ、


昌輝:ほらどうしたどうした
  奪ってみろよ


○○が昌輝に煽られながらボールを奪い合っている声が聞こえてきた


○○:…んもう、しょうがないな


○○は少しだけ離れると

息を一つ吐いて


また昌輝に向かっていく


すると、先程とは足の出し方が変わる


昌輝:おっ…とっ…


○○:智也くるまでは、そこまで本気でやる気なかったけど
  昌輝疲れると嫌だから


とさっきとは違い、目を鋭くした○○が言う


すると、すぐに昌輝からボールを奪った



○○:…ったく、最初から本気でやってたらバテるだろうが


昌輝:はぁはぁ…
  ば、ばか
  俺は、スタミナが、あるんだよ…


と言いながら、思いっきり昌輝は息が上がっている


○○:はぁ、少し休むか?


昌輝:はぁはぁ、○○がそうしたいなら…


○○:へいへい、強がりだね


○○は公園の出口付近の自販機まで歩いていく



蓮加:あっ…


蓮加は、そのやり取りを一通り見ており

こちらに来ることがわかったので、○○から見えないように木陰に隠れた


○○:昌輝、飲み物何がいい?


昌輝:ソーダー


○○:アルプスの天然水な


昌輝:おい、てめぇ…


○○:すぐに炭酸を求めるなよ


アルプスの天然水2本を手に持ち、昌輝の方に戻る



蓮加:ふぅ…
  バレなくてよかった、


蓮加は、○○が戻ったのを見て安堵しながら木陰から出た


しかし、そこに


智也:あ、岩本さんじゃん


智也が来たこと


蓮加:え、は、橋爪くん!?


智也:どうしたの、こんなところで
  あ、もしかして○○を見に?


蓮加:ち、違くて
  ランニングしてたら偶々…


智也:ほ〜ん、そうなんだ


蓮加の焦りようと、出で立ちからみて

なんとなく○○を見に来ただけではないことを覚った智也


智也:あ、そうそう岩本さん


蓮加:な、なに?


智也:今度の大会も、見に来てやってね?


智也は、話題を大会の方に変えた


蓮加:え、ま、まあ多分行くと思うよ
  毎回見てるし


智也:ありがと
  ○○もそうしてほしいだろうし、あのことで○○と仲が悪くなってほしくないしさ


とすんなり探りを入れる智也


蓮加:え、あ、あのことって?


明らかに蓮加は動揺した


智也:あのことは、あのことだよ
  じゃ


そこで話を切って智也は○○の方に合流していった


蓮加:え、なんで橋爪くんがあの子と知ってるの?
  …も、もしかして○○が私だって気づいた?


蓮加の帰りの足は、重く、遅く

悩みが全面に出ていた






そして、林間学校出発の日


担任:それじゃあ、みんな楽しみましょう〜!


“はい!”


○○と、蓮加の関係が

またここで少し変わっていく


その鍵は、意外と…


昌輝:へっ…へっ……
  ヘックション!


この人だったり???


智也:おいおい、風邪か?
  治せよ、お前


いやいや、こっちの人でした



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