初めて会った日から何周か回って恋をした 26
修学旅行が終わって、また◯◯と蓮加
その他の生徒たちの日常生活が帰ってきた
サッカーの大会があったり、総合体育祭があったり、調理実習があったり
色々な行事やら授業が過ぎていって
もう12月がそこまで迫ってきた、寒い日のこと
◯◯:お〜い、蓮加…ってあれ?
◯◯は委員会が終わり、待たせていた蓮加を教室に呼びに来たのだが
そこに蓮加の姿はなかった
◯◯:ランドセルも無いし…
先帰ったのかな?
いくら蓮加が◯◯と基本的に一緒にいたいと言っているとはいえ
気分屋なところがあるので、先に帰ったとしてもあまり不思議じゃない
◯◯:んま、とりあえずこのまま帰るか
踵を返して◯◯は昇降口へと向かって歩いていった
一方、本当に◯◯を置いて先に帰った蓮加はというと
家に着くなり、母親に向けてこう言った
蓮加:ママ、そろそろマフラーしていきたいんだけど
出してくれる?
蓮母:あ〜、マフラーね
確かに外も結構寒いし、出してあげるわ
蓮加:へへへ、やったー
蓮加はリビングで大喜びして、テレビをつけようとする
が、そこに母親の
蓮母:蓮加、先に宿題やってからにしなさい?
という鋭い言葉で、ぴしっとなって部屋に一目散と走っていった
蓮母:あの子ったら、まだ少し子供っぽいところが抜けないのよね…
でも、いきなりマフラー出してほしいなんて…何かあったのかしら
いつもなら自分からそういうことは言い出さないのに…と疑問がりながら
蓮加の母は、マフラーをクローゼットの奥から取り出してテーブルの上に置いた
◯◯:…はぁ、終わったぁ
よし、玄関先でリフティングしよっと
家に帰ってすぐ宿題を始めた◯◯は、ささっと終わらせてしまい
ボールを蹴るため、意気揚々と玄関まで向かう
◯母:どこ行くの?
そこへ、母親がやって来て聞いてきた
◯◯:別に、家の前でリフティングやろうと思っただけだよ
◯母:ほんとでしょうね?
◯◯:こういうときに俺、母さんに嘘言ったことある?
◯母:さぁ…わからないけど
変なところに蹴り飛ばさないでよ?
母親がキッチンの方に戻るのを確認した◯◯は
シューズボックスの隣にあるネットからボールを取り出して外に出た
◯◯:うわぁ…寒いな
でも、継続は力なりってね
中学に入ってもサッカーをやり続けると決めている◯◯は、部活という新たなものにワクワクしていた
そのためには、もっとうまくならないと…
と思って、ここ最近は練習をより長くやるようになっていた
◯◯:体力もつくし、集中力も上がるし
長くして正解だったなぁ
夕日が沈みかけ、暗くなる頃まで◯◯の自主練は続いていた
翌日、約束を継続している二人は蓮加の家から一緒に登校していた
他愛もない話をしながら進んでいる時、蓮加がいきなり
蓮加:◯◯に問題〜
と◯◯にクイズを出してきた
◯◯:え、なになに
◯◯もクイズが好きなので食いついてくる
蓮加:れんかが昨日より前と比べて、変わったことは何でしょう!
◯◯:え…っと…
この手の質問は、結構男はされやすい
そして、案外気づかないこととかも多い
まあ、この場合
誑しであり、蓮加のことが大好きな◯◯が気づかないはずがない
◯◯:ん〜、マフラーつけ始めたでしょ
蓮加:せいかーい!
◯◯よくわかったね
◯◯の肩をポンポンと叩く蓮加
その顔には嬉しさがありありと出ていた
◯◯:そりゃわかるよ
このマフラー前までつけてなかったし
ピンクが、蓮加によく似合ってるしさ
蓮加:あ〜、もうそこまで言ってほしいって言ってないのに…
相変わらずの誑しっぷりの◯◯と
それに悶える蓮加
朝から本当に仲の良いことで…
◯◯:何かさ、蓮加って何でも似合う気がするんだよね
蓮加:え〜、嬉しい
◯◯:修学旅行終わってすぐの、ハロウィンの時とかもさ
蓮加:あ〜…あれ?
結構可愛いし、フリフリがお気に入りなんだよね
◯◯:ああいう、何かお姫様と言うかお嬢様様みたいなのも似合うのいいよね
青いフリルの付いたワンピースを着て、お人形なのかお姫様なのかよくわからないが
ハロウィンで蓮加がした仮装は、◯◯のお気に入りになっていた
◯◯:来年もああいうの着てほしい気持ちもありつつ
他の見せてほしいとかも思う
蓮加:褒め過ぎじゃない?
◯◯のドラキュラも、似合ってたと思うけど
◯◯:いや、蓮加はほんとに何着ても似合う
蓮加のことを褒めまくる◯◯は、その後も熱が止まらず
気付けば学校についていた
◯◯:あれ、そういえばだけど
蓮加手袋とかはないの?
蓮加:手袋?
…あっ!家に忘れてきた
◯◯に聞かれたことで、ポケットを触り、ランドセルの中に入れた記憶をたどるがどこにもなく
忘れたことに気がつく蓮加
◯◯:今日、遅くまで6年生残るから寒くなるよ?
蓮加:んもう…最悪…
さっきまでの上機嫌が一転、蓮加の機嫌が斜めになってしまった
こうなると、◯◯でも簡単には上機嫌には戻せない
◯◯:まあまあ、俺の貸してあげるから
そんな落ち込まないのよ
蓮加:ぶぅ…
まあ、◯◯の借りられるならいいんだけど
蓮加はふくれっ面をしながら◯◯に答えると教室へと向かって歩き出した
が、登校してからの機嫌は直ることなく、放課後を迎えることとなる
放課後、色々と6年生の学年でやることがあり
多くの生徒が残って作業をしていた
その時も、やはり蓮加の機嫌は直っておらず
16:00くらいに、一斉下校することになった
先生:気をつけて帰れよ〜
“はーい!”
◯◯はいち早く蓮加を見つけ、蓮加の左手を持った
◯◯:蓮加、右手にこれはめて?
蓮加:…ん
よほど引きずっているのか、蓮加は言数が多くない
しかし、◯◯はそんなこと気にしない
蓮加には笑顔が似合うことを知っている◯◯だから、なんとかして笑顔に戻そうとずっと考えていたのだ
そして、それを今実行している
蓮加が、右手に手袋をはめたのを確認した◯◯は
自分の左手にもう片方の手袋をすると
◯◯:蓮加、もっとぎゅって握って?
蓮加:んっ…
◯◯:このまま、今日は手繋いで帰ろうよ
二人で寒さ半分にするんだ
◯◯が笑顔で蓮加に言う
その姿を見た蓮加は、◯◯の手をぎゅっと握って
蓮加:れんかのこと、寒くしたら許さないからね
と言った
その頬は、寒さとは他の理由で赤くなっていて
心の中では◯◯の誑しっぷりに悶えている
だが、このまますぐ元気になって悶えたら、この手が離されちゃうかもしれないと思って
何とかそのままを維持しようとしているんだ
◯◯:任せておいて!
じゃ、行こ!
ルンルンとした足取りで、◯◯は蓮加と歩き出した
途中、誰に見られるのかもわからないのに
◯◯は平気な顔をして、手を離したりしようとせず
ほんとに蓮加の手を暖めるためにずっと繋いだままだった
それがまた蓮加の胸にくるのは言うまでも無い
カッコよさと言うよりは、健気さなのだろうが…
やがて、蓮加の家について◯◯はやっと手を離した
◯◯:どう?あったかかった?
蓮加:うん…ありがと
じゃあ、また明日
蓮加は少し素っ気ない対応して、すぐに家に入った
そして、ドアに背中をつけて顔を手で覆う
蓮加:ドキドキするに決まってるじゃんか…
あんなことされたら
手も赤く、玄関先の鏡に写った自分の顔も赤い
蓮加はそれが恥ずかしくて、すぐに部屋に走り込んでいった
◯◯:よし、任務完了!
帰ろっと
◯◯は、ほんとに何も気にしていなくて
恥ずかしい素振り少しもみせずに、家に帰っていった
その日から、蓮加は時々手袋を忘れることがあったそうな…
蓮加:いや〜、◯◯はほんと誑しだから
◯◯:はいはい、すみませんね…誑しで
蓮加:手繋いだまま帰った時、やばかったんだから
心臓はうるさいし、◯◯ズカズカ行っちゃうし
◯◯:悪いって…
蓮加が少し怒っているようなので、◯◯は素で謝る
蓮加:まあ、別に怒ってないけどさ…
◯◯:あの頃の思い出は、それもあるし
あのハロウィンの仮装も思い出だなぁ
蓮加:あ〜…あれね…
高校の時に、もっかい似たようなやつ着て◯◯に写真送ったわ
◯◯:あれ一時期、俺の待ち受けだった
蓮加:え…マジ?
恥ずいんだけど…
◯◯:…明日からそれに変えるか
蓮加:やめろやめろ!
れんか◯◯のこと嫌いになるよ!?
しかし、◯◯は蓮加の言うことを聞かずに待ち受けにして
後々怒られたとか怒られなかったとか…
◯◯:蓮加は可愛いからしょうがない!
蓮加:うるさい、誑し!